船場を読み解く
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建物の形状

 

 形状を分析するにあたっては、 いくつかの要因から形を定義していきました。

 間口が5〜6間という要因は決まっていますから、 それに関わる奥行きや高さ、 上層部がセットバックしているかどうか、 低層部の形状がどうなっているか(前庭などを作っているか)という要因です。

 そうした建物自体の要因に加え、 船場には「船場建築線」といって道路中心線から5〜6m壁面後退して建てなければならないという法律があり、 それで建物前面の位置が決定されています。

 例えば建物の高さについて見てみると、 戦後から1970年以前に建てられた古い建築ほど4階以下の低層で、 高い建物ほど最近になって出来ています。

 このように間口5〜6間の建築に関して、 それぞれの形を分類していくやり方で調べていきました。


形状による分類

 形態は大きく次の3つに分けることができます。

 

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形状による分類
 
 
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形状をその要素で分類
 
 これら3パターンをさらにその要素で分類すると、 9種類になります。

 4階以下の低層型建築には2種類あります。 Aは単純な直方体で、 オフィスビルに多い形です。 Bは低層に傾斜屋根がかかっている形で、 古い長屋や倉庫がこの形です。

 上層部後退型には4種類あります。 まず道路の斜線制限通りに建物を斜めに切った形のもの(C)、 その斜めが階段状にセットバックしている形のもの(D)、 斜線制限がかからない所までセットバックしてからボリュームを立ち上げる形(E)、 最上階の1層のみを後退させている形(F)の4種類です。

 単純ボリューム派生型は3種類で、 単純な直方体(G)、 直方体の前に低層部が付属している形(H)、 低層直方体に大きなボリュームが付属している形(I)です。


形状の変化

 
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形状の変化
 
 こうしたボリュームの変化を年代別に見てみると、 低層型はやはり1970年以前に建てられたものが40%を占めています。 1970年以降は低層型に代わってCからFまでの上部後退型が登場してきています。 1980年代は85%がこの形態の建築です。

 この変化から、 建てる側の「高く建てたい」という意向と法律による規制の影響で、 上部後退型というスタイルが自動的に決められたことがうかがえます。 このスタイルの登場は「斜線制限」という法規があるせいですが、 法規が変わっていけばボリュームや形も変わっていくことと思われます。 今は現在の法律の影響下にある建物が一番大きなウエイトを占めています。

 建物の高さとその形態の関係を調べてみると、 高くなるほど上層部はセットバックしていました。 これは法的な規制から自明のことです。

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