また「特別保存地区」と「保存区域」があるわけですが、このうち「特別保存地区」では、当該古都の府県知事がその現状変更行為に対し、許可あるいは現状回復を命ずることができます。
また「行為不許可の場合の損失補償」という項目があります。これは、例えば畑地や果樹園を造成したいと思って現状変更行為の申請をして「不許可」となった場合に、その当該の土地を公共が買入れ、損失補償ができるというものです。
それから先ほどご説明した「行為の不許可」ということで民有地が買入れられているところが、平成16年には特別保存地区2,861haのうちの191haになっています。
またその規制区域内の行為規制自体については、平成16年度には現状変更の申請が67件あり、うち許可されたのが57件で不許可が10件でした。
土地の買い入れ状況を見てみますと、平成15年度末で約285haと京都の約2倍になります。
また平成15年度で167件、平成16年度で165件ですが、毎年この程度の行為申請があって、そのうち10〜40件程度の不許可が出ています。
また、ここでは土地の買い入れが574haのうちの約76haで行われています。行為規制の件数は49件(平成15年度、許可30件)であります。
京都では平安京のエリアを囲んで、伏見の辺りから銀閣寺、上賀茂神社、金閣寺、竜安寺、嵯峨、嵐山、西芳寺の辺りまでを含むエリアが歴史的風土保存区域に指定されています。市街地周辺の寺社のある背後の山が保存区域となっていますが、嵐山周辺には一部農地が含まれています。
奈良では、平城京が保存区域の西端に位置し、そこから市街地を含んで西の京の辺りまで指定され、東は東大寺、興福寺、春日山の周辺といった所が指定されています。
鎌倉は一番象徴的です。若宮大路が市域の南端からつきあたりの鶴岡八幡宮まで続いていますがその若宮大路の北側、ならびに市域を囲む五山、それから海沿いの稲村ヶ崎までを含む地域が指定されています。つまり、都市を取り囲む周辺の緑地や山林部分が歴史的風土保存区域に指定されています。
古都法による歴史的風土の保存の実際
「歴史的風土保存区域」と「歴史的風土特別保存地区」
では、これらの法的な保存の仕組みを整理しますと、まず「歴史的風土保存区域」は内閣総理大臣が指定します。その後、とりわけその重要な区域を「歴史的風土特別保存地区」として都市計画で位置づけます。保存の内容を見ますと、現状変更行為である建築、宅地造成、樹木の伐採、屋外での土石等の堆積を制限しています。
京都市の場合
それぞれの古都について見てみますと、例えば京都市では、全部で14区域、約8,513haが歴史的風土保存区域に指定されています。またその約25%にあたる2,861ha強が特別保存地区に指定されています。例えば清水寺の背後の東山、修学院周辺、双ヶ岡など24の地区がこれにあたります。
奈良県の場合
奈良県の歴史的風土保存区域は全体で6,000haと、京都の2/3程度です。またその中に特別保存地区が19地区あり、約5,000ha弱です。明日香村は村域全域がこの特別保存地区になっていて、その面積は奈良県内の指定地区の約半分にあたる2,404haです。
神奈川県
最後に神奈川県の歴史的風土保存区域ですが、これは主として鎌倉です。全部で5区域約1,000ha弱と3つの古都の中では一番小さくなっています。また特別保存地区が13地区、574ha程度ですが、鎌倉では市街地を取り囲む周辺の五山が特別保存地区に指定されています。
三古都の市街地と歴史的風土(出典:平成16:社会資本整備審議会都市計画・歴史的風土分科会歴史的風土部会資料)
どのような所が古都における歴史的風土保存区域になっているのかを模式的に示した図です。
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