土橋(大阪産業大学):
事例に挙げられていたトイレについては、私はなかなか良いと思っています。ちょっと大きすぎるのが難点ですが、実はあの建物の右半分がトイレで、左側は東屋なんです。そして、そのさらに左側にある広場では休日に地元の人が農産物を売ったりしていて、よく活用されていると思います。もちろん、村内の公共施設や民家のデザインがちぐはぐになってきて、どうもあの入江さんが撮られた明日香のイメージと違ってきたことが問題だというのはその通りだと思うのですが。
それから最近の明日香村は自動車でのアクセスが大変便利になりました。一方で、先ほどの遊歩道はあまりお金がかけられておらず、途中の信号で随分待たされたり、広い自動車道路を横断しなければいけなかったりと、どんどん歩きにくい状況になりつつあります。
話が変わるのですが、古都法の一番の値打ちは、農地が農地のまま、緑のスペースがそのまま残っている、そして街が色んな経済的な理由でだらしなく広がらずに残っているということだと思っています。
奈良市内の古都法のかかっている所と、一般の市街化調整区域の20年ほどの土地利用の変化を調べた事があるのですが、古都法をかけた所はやはり緑地や農地が宅地的な使われ方をする事が少ない。ですから、古都法の値打ちはこの景色が守られることではないかと思うわけですが、そこから考えても色々なデザイン調整会議を作ったり、デザインコードを作って百年も経てば、今気になる景観的な要素も、おそらく段々と良くなっていくのではないでしょうか。
とにかく、緑地が保全される事が一番の値打ちであると申し上げたかったのです。
明日香村と橿原市の関係は航空写真で見るととてもはっきりしています。橿原市内は屋根で埋まっていて、市と村のギザギザ状の境界の所から明日香村側は緑です。
明日香村は全村が特別保存地区ですが、奈良市の場合このような状況が同じ市の中で起こっています。ですから、保存地区の網を掛けた所の外に、この土地の状況をどう波及させていくのか、そのような手だてがあればと思います。
それから農地についてですが、例えば特別保存区域内で竹林を畑に変えるのは割と手続きが簡単なのです。竹林は自然の地形のままですが、畑になると平らにされてしまいます。そして、しばらく経つとそこに小屋が建ち、もう少しすると次男坊の家が建ったりします。
そんな事や資材置き場などが明日香村でもたくさん目につくわけですが、どうしてあれが簡単に出来てしまうシステムなのかという事が大変気になります。
宮前:
本来なら現状変更に当たるので申請をしなければいけないのですが、気がついたらいつの間にか田んぼが埋められていて、その上に資材が積み重なっている、といった場所は特に道路沿いで多く見られます。
古都法の値打ち
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