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研究の背景と目的
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ニュータウンは「理想の都市」として建設されましたが、40年も経つと、居住者の減少や高齢化、住宅の老朽化・陳腐化、社会変化に伴う新たな施設需要の発生などを受けて、建替えや敷地の分割、高層化など住環境に関わるいろいろな問題が起こってきます。
このような問題は一般市街地でも発生しますが、ニュータウンの場合は広い地域で一時期にまとまって発生するため、とても大きな問題や住民間の対立になるわけです。そういう意味でも、先ほど言いました「一般市街地とは異なる住環境のマネジメント」が必要であり、私の研究はこのことを大前提にしています。
そういった流れの中で、私の研究は何かと言いますと、この40年間千里ニュータウンの中心にいて、まちの成熟過程を見守り続けてきた中で、千里ニュータウンがどう変わってきたのか、あるいはその中で発生した問題や課題を誰がどのように解決してきたのか、これから誰が担っていくべきなのかといったことを少しでも見定めたいと思ったわけです。
なお、ここで私が用いた「住環境マネジメント」という用語に関して、最初は「千里ニュータウンのマネジメントに関する研究」という論文タイトルだったのですが、「千里ニュータウンのマネジメント」というと対象が大きく、概念も漠然としているので、次に「環境マネジメント」を考えました。これも“環境問題”でいう環境と捉えられるため、最終的には「住環境マネジメント」という用語を使うことにしました。
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千里ニュータウンの住環境の構成
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「住環境」は、住宅とそのまわりの環境、さらに少し広い住区レベルの住環境などを主にさすと考えられますが、私はニュータウン全体の調和や一体性などの概念を含む用語として「住環境」を用いました。千里ニュータウンでは、居住者を中心に考えれば、まず住宅があり、そのまわりに住区(小学校区)レベルの空間的な広がりがあって、それから4つくらいの住区で構成される地区レベルの広がりがあります。それが3つ集まって千里ニュータウンが出来ております。ここには住宅があったり商業業務施設があったり公共公益施設があったりしますが、それらを含む全ての環境そのものを住環境と捉えることにしました。
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研究の構成
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論文の全体の構成は、まず序章があって、1章と2章で千里ニュータウンの概況と歴史を整理しています。3章からが本論ですが、3章では住民がどのように住環境保全活動を行ってきたのかを取り上げました。4章で住環境保全ルールとそれがどのように変化していったのか、今後どうあるべきなのか、5章で特に戸建住宅地の中で発生している、高齢化に伴う様々な問題と課題について取り上げています。6章では少し広いレベルの千里ニュータウンに関わるマネジメントとして、特に行政である豊中市と吹田市がどのように千里ニュータウンに関わってきたのか、7章では大阪府千里センターの果たした役割と解散に伴う課題をまとめました。以上を踏まえながら、最後に住環境マネジメントの今後の展望に触れています。
今日は、1章、2章は省略し、3章からお話します。
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