次の第5章は、戸建て住宅地に関係した課題をどうするかということです。
約8割の人が「今の家に住み続けたい」と思っていることがわかりました。ただ、それらの回答の中には、「家の維持管理を続けられるかどうかわからない」、「安心して住み替えられる老人ホームを千里ニュータウンにつくってほしい」、「デイサービスセンターに行く前の人達が集まれる場所が欲しい」などの声も聞かれました。
また「住み替えに関心がある」または「住み替える」などと回答した「住み替え層」は、結論だけ言いますと、「今の家を売るか子供に譲って、駅前などの便利な場所にあるマンションや高齢者住宅に住み替えたいと、漠然と考えている」ことがわかりました。
これらの結果が何を示しているのかと言いますと、これまで40年間、住民は住環境保全の活動を続けてきたわけですが、それでは解決できない「高齢化に伴う新たな問題」が出てきているということです。
これから公的賃貸住宅が徐々に建て替わっていきますが、大阪府営住宅や大阪府住宅供給公社などは、土地を高度利用する建て替えを進めようとしていますので、半分くらいの余剰地が出てきます。この余剰地が民間に売却され、従来型のファミリー向けマンションばかり建てば、同年代の世帯が一時期に入居して高齢化が一斉に進むという、これまでの千里ニュータウンと同じ街にまたなってしまいます。だから、ケアハウスや有料老人ホーム、高齢者優良賃貸住宅、あるいはコーポラティブ住宅などといった、多世代が住み続けられる多様な住宅が必要でしょう。また、そのような住替え住宅についての相談や情報提供の場も必要と思います。
高齢化に伴う定住意向に対応した住環境の保全
住み続け・住み替えの意向
住み続け・住み替えの意向
住み続けや住み替えに伴って、どのような課題があるのかを知るため、千里ニュータウン内の2地区の242世帯にアンケート調査を行いました。
定住意向からみた住環境保全の課題
では何が必要なのかといいますと、定住層に対しては「住宅に対するメンテナンスの支援と相談」、「高齢者の交流拠点づくり」です。住み替え層に対しては、「安心して住み替えができる住宅の提供や相談・情報提供」、「千里ニュータウンとその周辺における多様な住宅の供給」が必要です。
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