ニュータウンの持続可能なマネジメントの展望
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行政による住環境のマネジメント

 

行政による住環境マネジメントの推移

 ここからは行政(吹田市、豊中市)による住環境マネジメントについてです。吹田市は、千里ニュータウンは特別な街ではなく行政区域の一部であり、だから特別なことは致しませんという姿勢をずっととり続け、開発指導要綱も既成市街地と同じものを使ってきました。ところが2004年になって、「千里ニュータウンまちづくり指針」を制定しました。これは、千里ニュータウン独自のガイドラインとして作られたものであり、内容は基本的には先ほどの豊中市の「千里ニュータウンにおける土地利用の考え方」に似ています。

 これは、千里ニュータウンに固有の問題を解決するためには千里ニュータウンの特性に配慮したルールが必要だという考えのもとに、吹田市が住民の意見も聞きながら作ったものであり、ある意味でまちづくりの方針を転換したと言えるでしょう。

 これに対して、豊中市は当初から違った扱いをしてきました。千里ニュータウンも同じ行政区域の一部であり、特別な扱いはしないとしながらも、千里ニュータウンに固有の課題に対しては、これに配慮した対応をしてきたと思います。例えば、先ほどの「8地区の申し合わせ」は豊中市の主導で行われたものです。豊中市は何とか建築協定に持っていきたいと努力したのですが、住民の合意を形成するには至りませんでした。

 ただ、この頃の豊中市も表向きは、「千里ニュータウンは大阪府が開発したのだから、問題の解決も大阪府が行うべきだ」という考え方を表明していました。豊中市では、庄内など既成市街地における問題や課題が集積していましたから、千里ニュータウンに関する問題や課題は、できるだけ引き受けたくないという姿勢があったと思います。

 しかし最近は、千里ニュータウン固有の問題や課題に配慮した対応を一層図っています。例えば、先ほどの「住環境保全基本方針」や、その後の民間分譲集合住宅の建て替え等に対する「大規模団地建替助成制度」の制定などです。

 それから、先ほど言いました「千里ニュータウンにおける土地利用の考え方」をいち早く打ち出して方向転換を図ろうとしたのも、市が固有の課題に取り組もうとしているからだと思います。


まとめと考察

 結論的に言いますと、豊中市も吹田市も、当初は千里ニュータウンを既成市街地と同等に扱おうとしていました。千里ニュータウンは、都市基盤や住環境、生活サービスなどの水準が既成市街地よりも高いことから、たとえ千里ニュータウンに問題や課題があったとしても、問題がより深刻な既成市街地を優先すべきだと考えたのです。これに加えて、開発者責任論を打ち出して、千里ニュータウンの問題は大阪府と大阪府千里センターができるだけ解決してほしいという立場をとってきました。

 しかし、先ほどから申しているように、最近は少し事情が異なってきており、千里ニュータウン固有の問題に対応していこうとしています。また、吹田市と豊中市が「吹田市・豊中市千里ニュータウン連絡会議」を設置し、情報交流や協議・調整しながら、住民の参加も呼びかけ、連携してまちづくりをやっていこうという動きを見せています。

 これは、千里ニュータウンが両市にとって大切な場所であるという判断がなされたからでしょう。これまでは、主に大阪府と大阪府千里センターが管理を担ってきたわけですが、40年が経過して、地元市が主体的に千里ニュータウンの問題に取り組んでいこうというマネジメント体制が整ってきたと思っています。そして、これからの住環境マネジメントを考えていく上での可能性や方向性がこの辺りにあるのではないでしょうか。

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