景観法で都市は美しくなるのか
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景観法では解決しないこと

 

法律が出来ても景観はよくならない!?

 最初は各職能団体の代表者の方々が、金銭の多寡だけで「業者」を決める入札の問題についての意見交換会があったのですが、「商売の話だけでなく、文化の形成に寄与する方向で取り組む必要がある」ということをお互いに確認している丁度その時、政策大綱が発表されました。

 政策大綱の発表にさいして、諸学会をはじめ各専門団体が歓迎アピールを出したのですが、私が「法律ができたからといって一般の街並みはきれいにはならないよ」と言うと「じゃあ、どうしよう」といったやりとりがあって、勉強会が始まりました。この本はそんなやり取りから生まれたのです。

 都市計画法や建築基準法が現状と合わなくなっているという指摘は、かなり前から出ていて、その結果日本のまちがめちゃくちゃになってきていると誰もが思っていました。本来なら、それらの法律の抜本的改正をしなくてはいけないという意見も20年以上前から言われていたのですが、政治家やディベロッパーにかき回されたらイヤだとみんなビクビクして切り出せなかった。

 そんな状況下で景観法ができたのですから、よっぽど誰かさんが成立に向けて動き回ったのか、時代状況が景観に目を向けさせたのか、多分その両方だろうと思います。中心市街地の活性化についても、ショッピングセンターを畑の中に作るのは禁止する内容で、緩和型ではなく規制型の都市計画が実現したのは何十年ぶりじゃないでしょうか。

 今の小泉政権の経済政策がいかにまちをひどくしているかとの実感は多くの人にあって、多分中央官庁も危機感があったから、景観法は割合スムーズに成立したと思います。


JIAメンバーの危機感

 この本の執筆については、日本建築家協会(JIA)のメンバーがかなり積極的に参加してくれました。これについては裏話があります。

 2011年に東京で世界の建築家協会の大会が開かれる予定で、JIAはその誘致に念願かなって成功しました。

 以前、ベルリンでJIAが誘致運動をしていたとき、ベルリンの領事館でレセプションがあって諸外国から来ているまちづくりの専門家も招待したんですね。たまたまJUDIのメンバーとヨーロッパ視察中で、このパーティにも出てくれるようJIAの仲間から声がかかりました。その時出た世界の建築家の意見はかなり辛辣でした。曰く「建築は時々良いものがあるけれど、大抵面白くない。みんなビジネスの建築ばかりだ。見に行く意味がない」「街がひどい。どうして建築家は街について言及しないのか」。そんなこんなで、建築の大会を日本に誘致しようとしても票が集まらないという状況が長く続いていました。つまり、世界の建築家からは日本の建築家は異常であると見られていました。

 そんなこともあって「もう少しまちのことを考えた建築を作りたい」とJIAの方々も意識し始めたのです。そんな背景も、この本に積極的に参加してくれた理由だと思います。

 話を元に戻しますと、JIAを含む6団体有志の間に執筆者を募集したらあっという間に60人近くになってしまいました。それ以上増えるのはマズイので、関西には声をかけないで東京だけでまとめることにしました。

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