「際立たずおさまる」美しさか、「目立つ破調」の美しさか
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おさまるデザインとは

 

都市空間の「地」となるデザイン

 私は、「おさまる」ことをデザインの基本としています。そして「おさまる」には3つの意図があります。

 一つは、単純に背景として、すなわち都市空間の「地」としておさまっているものです。都市空間の大部分はそうあってほしいと思います。稀にですがそこに際立つものが入っていくと、ある種のコントラストがうまれる。「地」が出来ていればそのようなおさまりかたが期待できます。金澤さんの言われる「破調の美しさ」に通じるものだと思います。

 「おさまるものが、町になければならない」と、よく言われています。私もそう思います。私はそれを、都市のあり方としてのスタンダードとも表現します。「この町はこうだ」というスタンダードです。「京都の町には平入りの町家が並んでいる」という事が、京都の町の一つのスタンダードでした。しかし、今ではそのスタンダードが崩れつつあります。新たなスタンダードは何なのかという事が今の京都の課題です。このことは全ての日本の町に共通の課題です。

 人間の背景、「地」となるものが、おさまる形であり、そこに際立つものが入っていくこともあるでしょう。エッフェル塔やポンピドーセンターなどが、際立つ好ましい例としていつも取り上げられます。それは間違いとは言えませんが、それらは時代を画する超ビッグな国家的プロジェクトであって、通常のわれわれの仕事の手本とするには相応しくありません。われわれの通常の仕事は、いかにして美しくおさめるかということです。


場所から発想して、その場所をデザインする

 二つ目のおさまるというのは、その場所から発想して、場所をデザインするということです。我々は、「自分はこういうものを作りたいと」いう作風・意図を持っていて、どの場所でも、強くその考えを通そうとしがちです。しかし、それは間違いだと思います。

 建築なり都市をデザインする時は、その「場所」をデザインするのです。建物が並んでいれば、向こう三軒両隣、その先の家並みや木立、山並みを含めて考え、その場所に自分の建築・ランドスケープを入れたときに、その辺り一帯の風景がどうなるかという事が大事なのです。つまり、「場所から発想して、その場所をデザインする」ということがおさまるデザインなのです。

 これは改めて言うようなことではなく当たり前の考えであると思います。しかし、残念なことに、デザインする側にも発注する側にも、そして住民やユーザーにもこういった姿勢は本当に少ない。広い意味での教育の仕組みが別の方向を向いているのではないでしょうか。


一流のデザインはおさまる

 三つ目です。全ての優れたデザイン、一流のデザインはおさまるということです。私は、こういうデザインを目指したいのです。その場所に行って、「デザインしているね」と言われるのは恥ずかしく、二流のデザインです。

 普通の人には気づかれないが、分かる人が見れば「やっているな」というデザインが、本当の一流のデザインだと言えます。

 村野さんや、槇さん、シーグラムビルのミース、ガウディなどの作品は、そういう点でわたしは好きです。そこに立ったときにほとんどその存在すら感じさせないシーグラムビルとその前の広場。そのたたずまい、気品はただ事ではありません。直接的にデザインが見えてしまう、作家の意図が生々しく感じられてしまうものは、本当に優れたデザインとは言えないと思います。

 イタリアのシエナのカンポ広場の美しさはよく知られています。広場は傾斜していて5メートルほどの高低差が在ります。広場の煉瓦敷きの部分は乳白色の石の帯で縦長の9つの三角形に分けられています。それぞれの3角形はかまぼこ型に湾曲しています。さらに長編方向にわずかに弓形にしなって傾斜しています。これらの曲面はうっかり見過ごしてしまうほどのかすかな曲面ですが、この局面があの柔らかで優雅な空間を作っている秘密です。

 生々しく、目立つデザインは商業主義の社会と深くかかわっています。10年以上前のことですが、商業デザインをプロデュースしている浜野安宏さんと仕事で一緒しました。そのとき「Low key」という言葉を使っていました。派手に目立たせない、静かなデザインのことです。私も共感しました。そして一番ヤバイと思っていた商業デザインの側からこのような主張が出ることに尊敬もし、バブルを過ぎたこれからの時代に少し期待も持ちました。

 都市デザインというのは、本来おさまるものを目指していくべきなのです。そしてシーグラムビルやカンポ広場に見るような一流のデザインが、私たちの町にも本当に欲しい。そう思います。

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