京都市中心部の新しい景観政策
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京都の景観の現状

 

地域の町並と不調和な建築活動

町家が連続する通りに建つ中高層建築
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押小路通柳馬場
 
 このような努力はしておりますが、現状はどうかと言いますと、大通りに面した場所や敷地の大きい所では、町家が並ぶ中にどんどん巨大なマンション等が建って、複雑な景観が生まれています。

 産業・経済の活発化により、あるいはバブルが崩壊した後、一般の企業は建築活動が一時停滞しましたが、マンションなら採算が合うということでどんどん建った時期があり、今に至るわけです。

歴史的な町並と背後に建つ中高層建築
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鴨川西岸
 
 鴨川に面した先斗町というところがあります。新撰組が活躍した場所としてもよく出てくる花街の一つですが、いわゆる一間道路と呼ばれる幅員1.8mの道路に沿って、お茶屋さんや居酒屋などが並んでいるところです。

 ここの鴨川に面した場所に夏の風物詩として「床」がでます。仕事帰りに川辺で夕涼みをしながら、お茶やお酒を少し飲み、遠くに見える東山連峰を眺める。なんとも風情のある場所です。

 ところが、鴨川の東側、川端通側から見ますと、木屋町通や河原町通に面して建っているビルがみんな鴨川側にお尻を向けて並んでいるのです。どの建物も道路側から見ればそれなりにお化粧してるのですが、後ろはあまり気にしていません。ですから川越しに後ろからこれらの建物を見た姿が京都における一つの風景になってしまっているわけです。低層の前景の建物と背景にある後方の建物の対比が良い対比ならいいのです。

 これは「眺望」の部類に入る話かもしれません。

 先ほどの「景観づくり審議会」では、現在この眺望と借景についても審議を重ねてもらっています。本年度中に全部の答申が取りまとめられる予定ですが、そのときには京都の眺望景観・借景も含めてどういった景観施策が必要かということを、答申していただくことになります。

世界遺産の周辺に建つ中高層建築
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上賀茂神社周辺
 
 一方、鴨川の西側から東側を見た景観はどうかといいますと、例えば世界遺産の上賀茂神社を望む場所では、前景となる河川敷の広場の後ろにマンションなどの中高層建築が建っています。こういった景観をどうすべきかどうかという課題が出ています。


借景や眺望景観の喪失

枳殻邸の借景の破壊、大文字の手前のマンション
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枳殻邸の借景、大文字への眺め
 
 また、枳穀邸(渉成園)という東本願寺の別邸があります。その庭から見たときの借景が守れていません。また、大文字山の手前にマンションがありますが、自然と人工物がうまく合わさった良好な景観構成になっているかというと、決して、それが上手く構成されていないという問題を抱えております。

 こういった良好な借景や眺望景観がかなり消失してきているというのが、京都の現状です。


京町家等の歴史的な建造物の消失

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マンションの間に建つ京町家
 
 市街地の方にずっと入ってきますと、町家がだんだん売られていって、マンションになっていく傾向にあります。幹線道路沿いでは31mの高さまで建ってくるわけで不調和な大きな乖離が生じています。そうすると、どちらかが少し遠慮しないといけないのかな、という疑問が出てくるんですね。両者が上手く調和していただきたいというのが、これからの京都の課題であります。

 どうして町家が売られてしまうのかといいますと、いろいろありますが、一番の原因は相続にあると思います。相続が発生したときに、例えば兄弟が沢山おられ財産分与の問題が出てきます。売らなければ分配ができないとか、あるいは良い町家ですと相続税が大変な額になって、それを払うために売らないといけないというような事も出てきます。あるいは修繕・維持費がかかりすぎるなどの経済的な要因もあるでしょう。

 それから先ほど言いましたように、木造建築ですので耐震性や防火性が弱いことは確かです。ですから、このまま何の制度も使わないで安全を確保しようと思えば、やはりこの風情が無くなっていくというわけです。


屋外広告物や放置自転車等による景観の悪化

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雑居ビルなどの屋外広告物/放置自転車
 
 それから、先ほども述べましたが、あらゆる都市活動が景観形成に大きく作用すると言いましたが、例えば建物と看板の関係、それから自転車の違法駐輪、車の違法駐車は、通り景観を阻害するものになります。

 ですから、何も自然物だとか人工の建造物というものだけではなくて、ちょっと浮いている生活の部分が、行動が、行為が、景観を悪化させているという現状があります。これらを全て、都市景観の問題として捉えていく必要があるということです。

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