都市公共交通と環境デザイン
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LRT

 

路面電車

 次にLRTについてです。

 昔、日本にも路面電車というものが沢山ありました。それは最初に見て頂いた堺のような状況、あるいは鉄道が出来たばかりの奈良のような状況で、徒歩の時代の街に圧倒的な支持を受けてできたものでした。

 例えば大阪市の場合、沢山の人が使って、インフラ整備の原資などもずいぶん稼いで大阪市に貢献したということです。中之島周辺の架橋や多くの街路が路面電車の収入で整備されたそうです。

 その後、ご存じのように、自動車がどんどん増えて、邪魔者扱いされて廃止されていったという歴史がございます。


LRTの時代背景

 今、LRTはずいぶん注目を浴びています。これは少し教科書的に申しますと、地球環境あるいは都市環境問題の深刻化、あるいは高齢化社会の到来に対応する交通手段ということからです。

 それからどんどん衰退している中心市街地をもう一度賑やかにしたいとか、あるいは渋滞によって損失が出たり、街を歩いている人が車におい散らされているといった都市交通環境の悪化が背景にあるということです。


LRTの特徴

 LRTと路面電車のどんなところが違うかといいますと、まず一つは「静粛さ」です。静かに高速走行します。

 京都や大阪に市電が走っていた頃をご存じの方はそんなにいらっしゃらないかもしれませんが、ずいぶんガタガタ揺れながら大きな音を立てて走るというのが路面電車のイメージです。しかし、最近のものは静かに高速で走行致します。

 それから二つ目は、バリアフリーの車体や駅です。これは床が低くなっており、後で富山の写真も見て頂けると思うのですが、例えば車いすが電停からフラットな状態で車両に乗れる、そういった車体あるいは駅の構造になっています。

 三つ目、これが路面電車と一番違うところですが、路面電車は徒歩が主体の時代でしたけれども、今は競合する交通手段が沢山あります。ということで、他の交通手段と連携するシステムであるということです。

 ここではあまり詳しく申しませんが、パークアンドライド(Park and Ride)で自動車と上手く連携したり、あるいは環境定期と言いまして、家族の一人が通勤あるいは通学定期を持っていればその家族が休みの日はただで乗れるとかいったシステムですとか、あるいは日本でも揮発油税を一般財源化するといった話がありますが、交通税のようなものによって運営が補助されるとか、そういったシステムになっています。


LRTが目指すところ

 LRTがどういったことを目指しているのかですが、まず一点目はこれも教科書的な話なので簡単に申しますが、「環境対策」です。二酸化炭素の排出量を減らすことができます。

 日本の場合、運輸部門の排出量が全体の25%を占めています。そのうち、およそ半分が自家用車です。運輸部門全体としては増えていないのですが、自家用車分は最近10年で25%ほど増加しています。自家用車以外の自動車も含めますと、運輸部門のうちの85%は自動車が排出しています。これの排出分を減らすことができるということです。

 二つ目は、持続可能な都市構造への転換です。例えば、中心市街地を活性化して効率的に利用していくとか、道路空間の利用効率を上げて空間を再配分するといったことです。

 2車線の道路では、1時間あたり1300人くらいが利用しています。自動車には平均して1.3人くらいしか乗っていません。都市部では、1レーンあたり1時間500台がせいぜいという話ですので、これらをかけ算をすると1300人くらいという計算です。

 これがLRTの場合、複線で通すとだいたいこの車道2車線よりちょっと狭いくらいのスペースで約3倍くらいの人を運ぶことができます。

 そうしますと計算上では、中心市街地にLRTを使って人が来てくれると、自動車に頼るよりも、同じ道路幅でも3倍の人が来れます。だからは賑やかになります。そうやって自動車に頼らないまちづくりをするというわけです。

 三つ目は、優しいまちづくりを目指すということです。

 ビルにエレベーターやエスカレーターが沢山あるのと同じニュアンスです。「ビルにはエレベーター、街にはLRT」という標語になっています。

 それから、例えばヒートアイランド現象を緩和する効果がございます。これは省エネの面で、あるいは芝生軌道のようなものを使って街を涼しくするというような効果も期待されています。

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芝生軌道/撮影=波床正敏(大阪産業大学)
 
 ただ、芝生軌道というのは日本ではあまり見られません。いくつか例があるのですが、例えばこんなイメージです。

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