都市公共交通と環境デザイン
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トータルデザインへの取り組み体制

 

トータルデザインチームの構成

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組織図
 
 そんなわけで路面電車が決まったのは、開業の3年前だったと思います。

 1年間はいろいろ手続きをして、事業そのものは我々が関与してから2年間で出来ました。

 当時の助役さんと以前たまたまおつきあいがあり、お電話を頂き「富山港線をやるんだけれども、トータルデザインをやってもらえるかな」と言われました。これは画期的なことでして、行政の側からのこの様な話はめずらしいことですが、我々もトータルデザインには以前から興味を持っていたので、「是非やらせてください」とお返事したわけです。

 そこで、様々な要素のデザインに対応するために、ここに示したようなチームをつくりました。

 GKのそれぞれのセクションの会社、車両デザインする会社、それからグラフィックの会社も入りまして、我々、GK設計は電停だとかストリートファニチャー系をやることになりました。

 で、全体のとりまとめをやりながら、やはり地元との関連というのが大事だということで、島津環境グラフィックスという地元の事業所に参加してもらっています。

 これについては一番最後にもお話しますが、今回の事業は開業したら終わりなのではなくて、実は開業してからが始まりなものですから、やはり地元でコアになるメンバーが欲しいということで入ってもらいました。


スケジュール

 先ほど言いましたように2006年の春に開業しています。

 2004年は何をやったかというと、5回のトータルデザイン検討会を開いています。

 富山ライトレール株式会社は、富山市もそんなにお金がないということもあるし、第三セクターであるということもあるし、県、市、国、それから地元の有力な企業さんに株主になってもらっていますから、いろんな人がお金を出し合っています。

 そのために市としては、コンセンサスを非常に気にされていました。デザインを決めるのも、これがいいからやろうというのではなくて、必ず何回かチェックが入るんです。

 本来デザインというのはあまりチェックが入ると良くないのですが、一年間に5回のトータルデザイン検討会の中でチェックをしながら、市民に参加してもらいながら、デザインをしていったという経緯がありました。

 これには地元の有識者、それから商店街の方、市の方、交通専門の方などが参加されていました。この中でビジュアル・アイデンティティからマーク、車両、駅舎、サイン、広報、それから後から出てきますがイベントといったものまで、あらゆるデザインについて検討されました。

 また、鉄道事業のために必要な様々な手続きを並行的に進めていって、2005年の春には基本的なデザインができました。

 これを受けて、2005年6月2日に市長がトータルデザインを発表しましたが、これも異例のことした。

 その内容は、車両デザインの発表が主なものですが、車両だけではなくて、実は富山港線というのはこのようなアイテムがこんな具合にデザインされていますといった感じで、いわゆるトータルデザインの発表という格好で行われました。そのプレスリリースも作らせて頂いて、全体のアイデンティティがつながるように致しました。

 後はほとんど制作と建設の期間でした。


広報と市民参加

 実は、富山港線はこのまま造っても黒字になる見込みは少なかったのですが、富山市では「公共交通によるコンパクトなまちづくり」を提唱していて、その第一弾としてライトレールを位置づけたいということだったんです。

 そこで2006年4月のオープンになるまでに、地元の応援が欲しい。つまり企業も市民も富山港線を育てるという気運がないとダメになっちゃうということで、市民にできるだけ参加してもらう仕掛けをいろいろ考えました。

 例えば、新駅の命名権の販売、これは東京などでもやっている所がありますが、地元の企業に自分の会社の名前をつけてもらい、その権利を1500万で買ってもらうということです。

 ささやかなんですがベンチドネーションという仕組みも作りました。

 一人5万円払って、168基のベンチを設置し、この人がこのベンチを寄付しましたというプレートをつけることで参加してもらいました。プレートには名前とメッセージを書いて、ずっと残してもらいます。

 それから車両を決めるときには、トータルデザインとして4つほど出した案から、市民アンケートで車両を決めてもらいました。これは、私たちが決めた車両だというような実感を持ってもらうという趣旨です。

 また富山港線というもともとの名前があるのですが、何か愛称をつけてもらいたいということで、これも全国的に募集し「PORTRAM」と決まりました。

 また各電停のガラス面にグラフィックデザイナーによるグラフィックを掲示する個性化スペースを用意し、それを企業が買って、そこに小さな文字で企業名を入れるというスポンサーアートという仕組みも作りました。

 他にもミニライトレールを地元の高等学校で作ってもらって子供を呼んでイベントをしたりと、「盛り上がりイベント」を我々も提案し、向こうからも提案してもらい、そのような仕掛けをどんどんやって最後の開業に結びつけました。

 もちろん、それらはデザインクオリティがでこぼこにならないようにコントロールしながら行われました。

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