都市公共交通と環境デザイン
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車両デザイン

 

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車両外装デザイン(デザインアイデア)
 
 最初は、かなりバリエーションのあるデザインアイデアを出していました。

 というのも、ご専門の土橋先生がよくご存じだと思いますが、実は超低床式のライトレールで国産のものは今はないんです。それで岡山のMOMOや高岡市の万葉線ではボンバルディア(Bombardier Inc.)というドイツ製の車両を輸入して、それをいわゆるフェイスアップしているのです。

 富山でも超低床式車輌をどうしようかということで、車両選定委員会の中で色々議論して、やはりボンバルディアの車両がいいということになりました。ところが、万葉線は隣の高岡を走っていますので、万葉線とは違う特徴的なデザインにしたいという市の強い要望がありまして、最初我々はかなり「振れた」デザイン案をいくつか出したわけです。

 それらを色々協議した結果、車輌のほとんどの部分が手を加えられないということがわかりました。具体的に言いますと、手が加えられるのはフェイスの部分だけで、他は全部車体ごとそのまま輸入するので出来ないということでした。また、フェイスの部分も曲面ガラスの部分は変更できませんでした。

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車両外装デザイン(市民アンケートの実施)
 
 そのような制約の中で、現実的なオリジナリティの高い案ということで、最終的にこのような4つの案を出しました。この時点で、本当はデザイン委員会で決めても良かったんですが、先ほど申し上げたようないろいろな事情もあって、この時点で市民アンケートをいたしました。

 我々がこれに決まるかなと思っていたデザインはあったのですが、最終的に507票を得て決まったのは、実はデザイン委員会ではちょっと個性が強すぎて、もしかしたら合わないかもしれないねと言われていた案です。ただ、市民がこれを選んだということに意味があると僕は思います。

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車両外装デザイン(決定案)
 
 これが選ばれたデザインです。おそらく、投票した市民は自分が選んだものが走っているというような実感もあるだろうし、デザインのクオリティもあるところまで押さえておいてアンケートをしましたので、良い結果におさまったと思います。

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車両外装デザイン(カラーリング検討)
 
 次は色ですが、実は万葉線は真っ赤でして、当初は1編成で走っていたのが今は2編成で走っているわけですが、皆、赤がいいと評判が良かったのです。

 しかし今回の富山港線は7編成全部超低床式ですから、ああいうベタカラーが7編成でそのまま走るというのは問題だと考えました。

 そこで、我々はアルプスの白ということで基本的に白を主張したのですが、委員会や市内部では「白じゃカラーリングしてないじゃないか」という話になりまして、白にアクセントカラーを持ってくることになりました。また、7編成それぞれの車輌が認識できるような色、つまり一両一両全部色が違うようにするため、7色をどう塗るか、いくつかのシミュレーションをしました。

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車両外装デザイン(カラーリング案)
 
 その結果、乗り降りをする出入口の識別性と、白が目立つこと、それから7編成がわかるということで、このような赤を含めた7色が現在走っています。

 これが将来8編成、9編成となったらどうしようか、という具体的な問題はありますが、なかなかきれいな色で良かったと思っています。

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車両内装デザイン(仕上げ表)
 
 それから、インテリアもほとんど動かせないんですが、先ほども言いましたようにLRTはユニバーサルデザインということもありますし、富山の目的ができるだけ老人や車いすの方にどんどん外に出て頂きたいということでもあったので、やはり出来るだけ優しいインテリアにしたいということで、意図的にグリーンの色を使いました。

 右にある七色のシートという案もあったのですが、基本的には一色で行くことになっています。

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実車両外装写真
 
 実際に出来たライトレールが走っている写真です。

 僕らは、富山のシンボルアルプスとライトレールとがマッチングすることをイメージしていたのですが、実際にはこのようにとてもマッチングしていると思います。

 右の方は既存線を走っている風景です。

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実車両外装写真
 
 それから富岩運河とアルプスのふもとを走るライトレールです。

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実車両外装写真
 
 ラッシュの車の中にこの車輌が一両あるだけで、ずいぶん雰囲気が変わってくるんじゃないでしょうか。今も時々見に行きますが、この車輌が出てくると、やはり街の風景が少し変わった感じがいたします。

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ディテール
 
 右の方にグラフィックが見えますが、車輌ナンバーなどの細かなものでも黙っていると車輌会社で適当にナンバーをつけてしまいますので、全部先手先手を打って、我々の方で車輌グラフィックを提案していきました。

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内観
 
 これはできあがった車内です。右の絵でも言いましたように、割合窓が大きくて、走っていると爽快な感じがします。

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内観〈吊り輪〉
 
 つり革や天井照明など、かなり細かい所まで気を配ってデザインしました。

 この辺の所については特に車輌のデザインに関わられた方はご存じかと思うのですが、ほとんどの車輌メーカーにはデザイナーがいますので、このようなデザインは得意なんですね。

 ですから、黙ってるとだいたい既存のものがくっついてきて、ちょっと気になってしまうようなデザインのものが使われますので、この辺りもできるだけオリジナルか、車輌に合ったものを選択するようにしました。

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乗客
 
 それから、やはりお年寄りの利用者が結構多いですね。

 ICカードを発行していて定期など頻繁に使う方はICカードなんですが、今はお金と両方使えるようになっています。

 その結果、乗車人員からいうとお金で乗る方が4割くらいいます。ということは、かなり遠くからたまには乗ってみようかということで来たお客さんがいるということでしょう。まあまだ開業から6ヶ月くらいですので、そういう時期かとも思います。

 中で談笑している風景もよく見られます。

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カード販売機
 
 これはICカードのチャージャーです。

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乗降の様子
 
 それから土橋さんも仰られましたが、段差がほとんどなく、ホームと車両の間も狭くて、みんなほとんど気にしないで乗り降りしています。

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ユニバーサルデザイン
 
 これはたまたま撮った写真ですが、この前僕が行ったときに障害者の団体が体験乗車をしていました。これは重度障害の方で、ベッドにもなる非常に大きな車椅子を持ち込んで、6人くらいの方が、一度には中に乗れませんので分割して乗車していました。

 体験乗車とはいえ、こういう車輌ができたからこそ利用が可能となったのだと思います。

 市の方も、車椅子やご老人、あるいはベビーカーの方々の乗車が増えているということで、喜んでおられました。

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