見えた。これがデザインの力だ!
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〈辻本智子氏の発表より〉
大人のあそびをつくる、まちをつかう、
風景をそだてる

 

 辻本さんの発表は、私の見るところ、大人の遊びを作る、それでまちを使って、まちを元気にして風景を育てていくというお話だったと思います。

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(C)辻本智子
 
 お話の舞台になったのは、静岡県の松崎町です。「伊豆の長八」で有名ななまこ壁のまちです。

 まちの行政はなまこ壁をまちのシンボルとして大事にしていて、駐車場を作るときもなまこ壁をつくりました。辻本さんはそのまちに、花や緑を持ち込むという仕掛けをされました。まちの人と一緒にワークショップをして、自分たちで寄せ植えを作ってまちのあちこちに置こうという計画です。

 最初はボランティア4人という少人数でしたが、いろんな事例を見せると午後には7人が集まり、次のワークショップでは12人に増え、最終的にはまちの人が27人集まりました。楽しいことをしていると人は集まってくるものです。辻本さんはまちづくりの作業では「楽しさ」「遊び」を大事にしているわけです。

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(C)辻本智子
 
 まちのあちこちに樽や農具を利用したプランターを置きました。まず自分の家の前に置いて、それから知り合いの家…という風に活動の場をどんどん広げていきました。

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(C)辻本智子
 
 これは「行灯(あんどん)」にするつもりで作ったフレームです。そこに花を生けて、その上に和紙で作った行灯や道案内のサインをのせました。

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(C)辻本智子
 
 このように意外性のある花の使い方をまちの人に教えながら、まちの人と一緒にいろんなものを作っていきました。そういうご報告でした。

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(C)辻本智子
 
 この活動の「楽しさ」「遊び」についてまとめると、伊豆の人たちはそこが花の生産地なのに、わりと一般的な種類しか知らず、辻本さんがいろんな種類の花や緑の使い方を教えると、喜んで花との新しい付き合い方を覚えていったそうです。それから、家に死蔵してあった農具を持ち出してきて、意外な使い方を見つける。そこに風土との新たな関わり方が生まれる。つまり、遊びを通じた新しい発見が楽しみにつながってゆく。

 そんな風に楽しんでいると、今度は人の輪が広がっていくんです。不器用なおじいちゃんが頑張って花を生けていると、「あの人が出来るんなら私もやってみよう」とみんながやり始めます。

 この「花を生ける活動」はまちの「長八祭り」のようなイベントにも組み込むことで、遊びの要素を増幅させていきました。

 辻本さんは「まちづくりは誰かが気づくことから始まる」とおっしゃっていました。辻本さんというよそ者が外からちょっとしたアイデアを持ち込むことで、いろいろなことが動いたわけです。

 また今は生活が合理化されて、自然を扱う体験をすることが減って、五感に感じられなくなっていることにも気付いてもらうことが大事だというお話でした。地域には五感に感じる豊かなものが沢山残っているはずで、デザイナーは形だけでなく、五感に感じる空間作りをきっちりしなければならないという指摘でした。

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