3. 論点2 都心地区の将来像
小さな職住共存、大きな職住共存
大阪芸術大学 田端修
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そういう状況は、京都市のマスタープランの中でも描かれていました。これは昭和44年のもので、中心業務商業地域は一つの色で塗られています。
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その次の昭和60年のマスタープランになりますと、ピンク色で幹線道路沿いに田の字が描かれます。 その内部市街地が職住共存地区にあたる場所で、中心商業地区として田の字とは区分されているわけです。その説明を見ていくと居住と仕事を共存させ、商業機能を振興させるという二つの項目を並びで記述しています。60年くらいから都心であるけれども人が住む場所でもあるということを明文化しながらマスタープランが書かれています。
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平成5年になると、田の字の内部市街地は、中心商業地区から商業・居住地区へと名前が変わります。 つまり都心だけれども、居住というものが明らかに意識された、そういう地域イメージがいっそう強調されくるわけです。同時にこの新京都市基本計画のなかでは、職住共存地区という特別枠の地域設定づけが示され、新景観政策での職住共存地区の位置づけに繋がってきているわけです。
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これは先の例とは少し色合いの異なる「都市計画マスタープラン」ですが、職住共存地区(ハッチを入れた部分)として、きちんと位置づけされてきているわけです。
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ではこの職住共存地区は、いったいどういった町なのかということですが、図は少し昔のまちの様子を描いているものです。左側は平安京以来の120mブロックがそのまま保たれている大きな街区です。右側は秀吉の時代に街区の中央部に南北道路を入れた場所です。
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京都都心街区にはこのように四角いタイプのものと矩形のものの二つタイプがあります。一街区そのまま残っている街区では、真ん中あたりに行きますと、60mくらいの奥行きの敷地になります。 もう一方の矩形街区の場合は、短いほうの半分ですので、奥行きが30mくらいになるという形です。 間口のほうは敷地の持ち主の仕事の不具合などが関係し、栄枯盛衰につれて、分割されたり、隣地を吸収するなどで大小さまざまに変わっていきます。
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古い時代の街区や敷地の諸指標をまとめたものですが、矩形街区(B)の場合は間口がだいたい6〜7m、奥行きが30m程度が多く、一戸当りの敷地面積が平均で135平米くらいと、そんなに大きくないのです が、正方形の街区(A)の場合は210平米のように少しサイズが違っています。こういうところで町家が建つとどれくらいの容積率になるかは、「延べ建築比」で示されています。どちらの街区も100%を少し越えたくらいになっています。
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京都都心部の一街区における街区構成の変容(1930年と1980年) |
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2006年夏に、京都市で「新・京デザイン提案募集」のコンペがありました。これは学生諸君と一緒に応募したものー入選案ーです。 ○PDFファイル(京都市HPより)。 間口6〜7m・奥行き30mと、細長い「うなぎの寝床」状の敷地をどう使うかが問題でした。普通の工法で建てると、隣地との境界に30〜40cmの隙間ができ、両側合わせて60〜80cmの無駄な空地になります。 それだけで建蔽率が10%くらい、つまり非建蔽地20%のうちの10%が隣地の境界の所でなくなってしまうわけです。これはまずい。実際の京都の町家は隣りとはピチピチに建っています。
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これは建起し、あるいは側起し工法といって、隣地の柱や壁際いっぱいに立上げるという建て方です。非木造でもこのような建築工法を開発すれば、奥行きの長い敷地を使いこなすことができると思います。
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それを前提に建物をいくつかに区分して、間に小さな庭をつくるという考え方で提案したのが先の案で、これで容積率300〜350%くらいになりました。職住共存地区の高さ15m・容積率400%の制限のなかで、厳しいけれども描けないことはないというわけです。職住共存地区の15m制限下での建物のつくり 方について提言したわけですが、町家単位で仕事をしながら住むというスタイルが、都心のマンションや商業ビルと共存していくなかで、新しい京都らしい都心像が描けるのではないかと考えます。
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これまでお話してきたように隣接敷地、あるいは隣接家屋とのすき間のない建て方により出来上がってきた町並みの一例です。もうひとつ、屋根がお互いに交叉しあいながら雨仕舞いを可能にすることが建物性能を維持するうえで必要であり、このために隣り近所との互譲のしくみがあったわけです。 都市的な町並みには、このように無駄なスペースをつくらないで居住性能を確保するハード・ソフトの方法が求められます。個別敷地の自立性を強調して、個々ばらばらに建物が建てられていくままでは問題が生じることは必定。そのような進行を抑制し、上述のような都市らしい町並みをつくり出していくうえでも、今回の景観政策を充実していくことに力を注ぐべきと考えます。
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