環境共生と農のまちづくりへの挑戦
左三角
前に 上三角目次へ 三角印次へ

 

小舟木エコ村のまちづくり

 

エコ村とは

 今年の夏は多治見と熊谷で日本最高の気温を記録しました。先日新聞を読んでいたところ、地球温暖化の影響で、島を国としている地域は沈んでしまうのではないかと書かれていました。映画のような話ですが、移住計画が現実的問題となってきています。

 エコ村と聞くといろいろなイメージをされると思うのですが、これまでエコ村づくりに携わる関係者とディスカッションしてきた結果、次のようなコンセプトが上がってきました。

 環境問題、社会問題というものは自分たちの生活と繋がっているものであり、持続可能な社会を作っていく上では、インターネットなどで容易にたくさん集めることができる知識や情報ではなく、実際にアクションを起こしていくことが重要だと考えました。そこで、そういうフィールドを実際に作ろうというのがエコ村の思想にあります。

 もちろんエコ村ということで、土地固有の自然を活かし、環境負荷の少ないものを作る必要があります。ヨーロッパにもエコ村は存在するのですが、特別な人がやる特別の村というのが多いようです。それをもっと一般に広げていく必要があるのではないかと思います。一般市民が集まってきて、人と環境が共生する新しいライフスタイルを実践していこうという狙いがあります。

 小舟木エコ村はできあがると日本で最も大きなエコ村プロジェクトといわれていますが、おそらく環境問題に対して意識の高い人が集まってくるだろうと考えられます。そして、環境に配慮した生活を実践していくことで、まだエコ村に興味を示さない、より多くの人たちに広げていこうということを考えています。


ブータンの自給自足の生活

画像fu10
ブータン
 
 この写真は日本によく似ていますが、ブータンです。ブータンでは、自分で家の周りの農地を必要な分だけを耕して、自給自足の生活が行われています。そして、時おり山から下りてきて、まちにある物資を買ってくるという生活です。日本でもこういった生活を送っている人はいらっしゃるけれども、一般市民はこの生活をそのまま受け入れることはなかなかできません。理念はわかるけれども実践はできないのです。やはり実践できるレベルでエコ村を考えていく必要があると感じました。


エコ村の位置

 小舟木エコ村は近江八幡に計画されています。滋賀県は県全体が環境立県に向けて動いており、そうした動きの中で近江八幡にある企業「(株)地球の芽」が主体となって計画を進めています。

 近江八幡は大阪からは1時間ほどの距離にあり、先ほどご紹介した八幡酒蔵工房のある旧市街地の周辺には水郷めぐりや、里山の保全活動が行われている八幡山、沖島といって湖に浮かぶ島に人が生活している珍しい島や、牧町という散村集落があります。

 エコ村の位置はJRの駅から2km、旧市街からも2km、琵琶湖からはちょうど3kmのところに位置しています。ちょうど市街地と農村集落の境界付近にあります。


エコ村の概要

画像fu16 画像fu17
完成予想図 整備前
 
 エコ村の敷地は15haで、1200人の居住人口を計画しています。敷地の大勢を占める環境共生型住宅は368戸で、平均73坪ほどの敷地面積、30坪前後の建築面積を考えています。また各戸に10坪ほどの菜園を設ける計画です。その他にも店舗や研究者向けの住宅、そして村の中央地区に集会所を設けようと考えています。集会所の近くには農産物の販売所も考えており、周辺の農家から農産物を調達する計画です。

 現在は造成工事の段階にあります。


エコ村の関係者

画像fu21
推進体制
 
 どのような人たちがエコ村に関わっているのかを説明します。

 先ほどもご紹介した「(株)地球の芽」という民間企業が中心となり、我々はこの事業法人のフェローとして関わっています。しかし、事業は民間企業単独で進めているわけではなく、エコ村の理念を考えていくNPO法人エコ村ネットワーキングや、県や市・商工会議所・地元自治体・八幡堀再生運動から生まれたハートランド財団・国の機関などがメンバーとなっている小舟木エコ村推進協議会という組織が協働しています。

 地球の芽という会社の特徴は、エコ村プロジェクトに共感して入社した若者が中心の会社だということです。この若者達を、まちづくりの専門家や大学がサポートしています。

 エコ村プロジェクトの創始者である秋村田津夫さん、環境問題を研究対象とされている仁連孝昭先生、上田壮一さん、などが関わっておられます。

 数多くのシャレットやワークショップなども行ってきました。日本にロハスの概念を紹介したピーター D. ピーダーセンさん、ロッキー山脈のふもとにあるロッキーマウンテン研究所でバナナを栽培しているエネルギーの専門家エイモリーロビンスさんなども関わっておられます。

画像fu25
西村和雄先生(ぐうたら農法)
 
 エコ村では各戸に10坪菜園を設ける予定になっていますが、サラリーマンの人は農業に詳しくない方が多いでしょうから、種の植え方・育て方などを教えてもらう必要があります。それに毎日の水遣りは大変になってきます。そのため、そういったことをサポートするNPO法人「百菜劇場」をつくっています。そして、ぐうたら農法で有名な京都大学の西村和雄先生にサポートをお願いしています。

 建築関係だと藤森照信さんや小泉誠さんなどが関わっておられます。ブータンや南アジアの発展のため精力的に活動されている西水美恵子さん、ミラノ工科大学のマンティーニ先生なども関わっておられます。


エコ村の理念

画像fu30
持続可能な社会づくりに向けてエコ村で取り組む23の課題
 
 色々な方の色々なアイデアを集めながら、エコ村でどういう取り組みを具体的にやっていくのかを考えたのがこの図になります。

 横軸には水循環、省エネルギー、物質循環、社会の健全性という項目を挙げています。環境問題として良く取り上げられるのは、最初の三項目なのですが、人間が元気であることがやはり重要であると考え、社会の健全性(Social Health)という項目を加えました。

 そして縦軸として、コミュニティレベルでやること、ビジネスとしてやること、将来に向かってテーマを築いていくことを描いています。

 そしてこのマトリックスに当てはまる各項目には3色で色分けをしていますが、背景が白の項目をエコ村の中でやっていくことになります。そして薄いグレーが地域と連携しながらやっていくこと、さらに濃いグレーは近江八幡市全体やもっと広いエリアと連携しながらやっていくことになります。

左三角前に 上三角目次へ 三角印次へ


このページへのご意見はJUDI

(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai

JUDIホームページへ
学芸出版社ホームページへ