今度は川の環境の話です。川の中というのは、川原があって、本流が流れていて、水溜りがあったりというのが、もともとの格好なんです。
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例えばこれは枚方の淀川の横断面です。昭和12年の時には、まだそういうもともとの姿をしていました。それがずっと時代を下って、現在はドン、ドン、ドン、ドン、ドンという格好になっています。
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そして真ん中にドーンと川が流れていて、左側は運動公園、右側はゴルフ場という格好になっているわけです。
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昔(上図)のように、だらだらと連続性があると、水かさが増えればつかるし、下がれば地面が出てくるという川原があったわけです。ところが下図のようにドンドンドンという格好にしますと、少々水かさが変化しても、下のほうで変化するだけで、上まで来るのは10年に一回、20年に一回という状況になっているわけです。完全にドライな所とウェットな所に分断されたわけです。
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上の図はカワラサイコですし、下の図はカワラナデシコですが、文字通り川原で咲くような草花があったわけです。それがどんどん減ってきています。
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これは樟葉のゴルフ場ですが、その対岸に鵜殿という所があります。鵜殿は紀貫之の土佐日記にも出てくる有名な所です。この鵜殿のヨシでしか、雅楽の篳篥(ひちりき)のリードは作らないというものです。しかしここは河川敷と本川がドーンドーンとなったものですから、水が殆どかぶらなくなって、ヨシがどんどん減っていって、ドライな所に生えるカナムグラやクズなどが侵入しております。これも河川環境が大きく変わっているということです。
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植物だけではなく、昔いたスジシマドジョウやイタセンパラといった淡水魚が浅瀬がなくなったものですからいなくなって、深いところが好きなブルーギルやブラックバスといったものが広がっている状況があります。魚にも影響があります。
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なぜこうなったかと言うと、川の中で洪水を処理する、出来るだけ川のなかで、ドーンと流そうとしてきたわけです。それは川を排水路化するということであり、それが横軸の分断を招いたということです。
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堤防の中だけではありません。昔は川と廻りの湿地帯(田んぼ)が繋がっていたわけです。したがってアユモドキみたいなものが、田んぼで産卵して行きつ戻りつやっていたわけです。
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それが全部繋がりがなくなったものですから、アユモドキも絶滅かというふうに、この前の京都新聞にも出ています。
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川と地域を分断して洪水を押し込めることによって、治水をやろうとした発想は、河川環境とは相い反します。今まで治水をやったら、河川環境は悪くなる、治水と河川環境は相容れないということをずっと言ってきました。その発想はこういう治水だから相い反するわけです。 穏やかに洪水エネルギーを分散して、地域で、流域で、治水を受け持とうということになれば、河川環境とも整合するわけです。人にとって安心できる治水は、河川環境や生き物にとっても良い。ですから従来、人の命か魚の命かと言ってきた議論は、私は根本的に違うと思います。人の命も魚の命も、こういう発想で行けばお互いにハッピーなんです。
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