奇跡の星の植物館とまちづくり
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奇跡の星の植物館

 

 では、私が計画・設計、プロデュースしています。植物館についてお話します。


構想時に想定された役割

 淡路島には公園島構想がありました。夢舞台は、大阪湾岸埋立地の土取り跡地を人間の力で森を再生し、「花と緑の公園島淡路」の拠点として国営公園・植物館・国際会議場・ホテル等を持つ淡路夢舞台国際公園都市として整備計画されました。また、花と緑の情報発信交流拠点として後継者育成機関として周辺に淡路景観園芸学校も計画されました。

 淡路島には高齢者対応の健康施設等が早くから整備されていたのに加え、対岸の神戸側にはWHO神戸が計画されており、埋立地への医薬・健康関連施設の集積が予測できました。このような状況から、「花と緑の公園島」構想を、植物が持つ7つの効用「花と緑の7恵」をいかした「環境の健康、体、心の健康」の「健康島」という広義でとらえ、植物館を計画しました。

 夢舞台は自然の再生実験の場であり、植物館は植物のすばらしさ、美しさを五感に訴え、感動と癒しを与える空間であり、先人が自然とともに創り上げてきた文化や暮らしを紹介するとともに、様々な分野とのコラボレーションで21世紀の共生のライフスタイルを提案場としました。「花と緑の公園島」「健康島」の情報発信交流拠点としてのコンベンション機能は国際会議場、ホテルで補完するという形で考えました。

 奇跡の星の植物館は住民参加の花と緑のまちづくり、共生の空間の研究開発、地域性や伝統性を継承する花のまちづくり等、共生のまちのプロトタイプを実験展示し、来られた人たちが「こういうまちづくりをすればいいんだ」ということを学んでいただくことで、住民の参加の花のまちづくりの教育の場にもなると考えました。


植物館のコンセプト

 森と海に包まれた青い星、地球。たくさんの生物がすむ地球は宇宙の奇跡から生まれた、まさに奇跡の星なのです。自然を見つめ、植物の美しさ、巧妙さを知り、地球に生きることすばらしさ、この奇跡を守るための大切さに気づいていただくためのミュージアムです。地球が育んでくれた自然が与えてくれた花と緑の感動を五感に訴え、その感動からの新たな発見がライフスタイルの転換、生活空間の創造、花と人、人と人の交流を生み出すことを期待してつくりました。

五感軸と共生軸
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 地震後、奇跡の星の植物館は2つの直方体のガラスがクロスがした形の温室美設計されました。その2つの直方体を「五感軸」「共生軸」とゾーン分けしました。

 「五感軸」。

 自然と人間の共生のライフスタイルを構築する前に、自然から離れた暮らしをしている私たちは、まず、自然を感じ取れる五感を磨く必要があります。植物の形や色や香りに焦点を合わせたユニークな展示手法で、自然の美しさ、巧妙さを五感に訴えます。

 「共生軸」。

 「共生軸」は「花や植物のある暮らし」を具体的に見せるゾーンです。この共生軸では「大阪ベイエリアにおける都市緑化の提案」と「地域性、伝統性を継承する花と緑のある暮らし」を提案しています。

 都市緑化の提案としては、耐暑性、耐陰性の植物材料・環境調節、建築緑化術の提案を行います。

 「地域性、伝統性を継承する花と緑のある暮らし」としては淡路島の瓦や土壁をデザインに取り込んだガーデンを提案したり、日本の伝統園芸や自然と共に生きる日本の暮らしのあり方や暮らしのしつらえを紹介しています。

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空調制御について
 コラボレーションとは程遠い設計が行われたため、植物にとってとても耐えられない環境が生まれました。しかし、ここではそのような環境に育つ植物を提案することの方が現実的と考えました。

 植物館は高低差は17mがあります。それを活かして、温度が高い方がよい熱帯物は暖かい空気が集まる上の方に置き、逆に温度が低い方がよいものは下に置きました。また、2展示室ごとに休息スペースをつくり、そこで部分冷房を行なって、お客様が休めるスポットを設けました。雲南省の植物のように18度前後の温度を保たねばならない植物はガラス室を冷やすには非常にコストが上がるので、大きな開口部を持つ部屋に人工光下で空調を効かせ栽培することにしました。

 2つの直方体をクロスさせることで生まれた、光が届かない暗い部屋には耐陰性の植物を収集しています。

プランツギャラリー
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 「形を見てください」。

 自然の形にヒントを得て多くの発見・発明は生れました。機械、建築設計などの発見にかかわってきた植物の形。その形に注目していただくため、アートギャラリーのように植物を展示し、水と光と音楽で演出しました。

トロピカルガーデン
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大阪ベイエリアの植栽に対応する耐暑性を持った植物
 
 色に注目していただく部屋です。鮮やかな熱帯のカラーリーフプランツや花木を集めています。

 暑くても鮮やかな観葉植物や耐暑性の花はヒートアイランド化した都市の育つ植物です。

癒しの庭
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トロピカル・ヒーリング・ガーデン
 
 普通はハーブの香りなどを用いることが多いですが、癒しの庭では木の香りや光などをテーマにしながら五感で感じる庭作りを行っています。

フラワーショースペース
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 植物と人間が築き上げてきた文化や世界の国々の花文化をテーマに年7回のフラワーショーを開催します。テーマに合わせたオリジナルオペラやミュージカルを上演します。このミュージカルグループは植物館で淡路花博の際結成され、現在、メンバーはすべて淡路島の子供です。


花と緑のあるくらし―地域性、伝統を継承する花のまちづくり

 ここは、伝統的町並み景観作りにアイデイアを与える展示室です。地域性、伝統性をガーデニングで継承する「ガーデンルネサンス」をテーマに展示しています。淡路島の瓦や土壁を使った庭や日本の伝統園芸が楽しめます。

丹波に関する展示
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 丹波に関する展示を行ったものです。篠山をイメージした格子の町並みをつくりました。ハンギングの器は丹波織りの糸巻きを使っています。

瓦―地場産業への提案
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瓦が庭にやってきた 瓦のパンフレット
 
地域の伝統工芸、伝統技術をガーデニングで継承するガーデンルネサンスとして最初に取り上げたのは瓦です。地元の特産品である瓦を加工する形ではなく、現在販売している形で少し工夫して庭に使ってみました。瓦の新分野開発です。

瓦の壁面緑化―伝統空間における緑化術
 イングリシュスタイルのガーデニングや立体緑化は、時には伝統的空間を壊します。伝統空間における緑化術、和の空間に合う壁面緑化として瓦の壁面緑化を考案しました。土の中にポリマーを入れることで、根が中に入っていく仕組みになっています
瓦のパンフレットー伝統産業とのコラボレーション
 植物館で様々な瓦利用の試みを行っていましたら、淡路瓦工業組合から瓦のパンフ制作の協力依頼がきました。植物館で提案した瓦のガーデンをデザインタイプ別に整理した「瓦が庭にやってきた」というパンフを編集しました。また経産省の補助金をもらえたので、ラスベガスで淡路瓦の素材を生かした庭の展示を行いました。

土の庭〜淡路のアルチザンとのコラボレーション
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土壁緑化―伝統的新緑化術
 淡路には、久住さんという有名な左官親方います。久住さんが「土の中に花を咲かせたい」言ったことがきっかけで2003年くらいから土壁の立体緑化を実験し始めました。最初は土壁にポケットを作ったりしていましたが、瓦の壁面緑化と同じ方法を用いることにより、土壁に直接植栽することが可能になりました。そして、古典模様の土壁面緑化をデザインしました。


伝統園芸ルネサンス

 海外では日本ブームが起っています。日本の伝統園芸が好きな外国人も増えてきています。それにも関わらず、日本ではそれを継承する人は少なくなってきています。

 江戸時代に日本に来たヨーロッパの人は庶民から将軍までに広がる日本の園芸に感動し、日本の花文化に学び、また日本の花を持ち帰り、現在、日本人が憧れているオリエンタルリリー等を品種改良で生み出しました。一方日本人はイングリシュガーデンに夢中で、自国の文化の継承にはあまり興味がありません。

 イギリスは日本に対し、イングリシュガーデンというライフスタイルつまり文化を売りにしています。日本は文化を売りにできていないようです。

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 盆栽を洋式化した現代生活の中で楽しもうとすると様々な工夫が必要です。漆器の壁のように見えているこの壁は漆喰磨きの壁です。土壁ですが、輝きがあり、光、水にも強いです。植物館のようなアトリウム空間で盆栽を楽しもうと思うと背景づくりには、太陽光に耐える素材が必要になります。洋式化した空間で盆栽を楽しむには目線の位置まで盆栽を上げる必要があります。丹波立杭焼で創ってもらった大きな壷で目線の位置に持ってきています。

 日本の文化に憧れている海外の方々に対し、日本人は例えば盆栽なら盆栽単体を展示して見せています。しかし、日本の文化はそのしつらえです。現代生活に合い、かつ伝統的コンセプトは継承する形野しつらえをパッケージにして売っていくことが必要です。


シダルームー都市緑化への提案―低照度に育つ植物の提案

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耐陰性の植物/照度調査(低照度で生育可能かつ美しい葉色やテクスチャーを持つ植物を探る)
 
 ここは耐陰性の植物のゾーンです。植物を育てるには光が必要です。しかし、地下街や室内など都市生活空間においては花を咲かせるのに十分な光が確保できるとは限りません。シダやフィロデンドロンは低照度に耐える植物です。これらの植物の多くは暗い緑色の物が一般的ですが、これらの中にも美しい葉色・模様の植物があります。そこで、それらの植物がその程度の照度で生育可能かを実験研究しています。元々、兵庫県は比較的低照度に耐えるレックスベゴニアやイワタバコ科の植物をコレクションしていました。今は少なくなってしまっています。これから暗い空間でのおしゃれな植物として流行ると思ったのに残念なことです。そこで植物館で独自に育てています。

 今後はLEDの補光実験していきたいと思います。これには企業とのコラボレーションが必要です。


アトリウム&バルコニー 都市のアトリウム空間に適した植物の提案

 アトリウム空間の中でも四季の変化を感じられる環境づくり、植栽を研究しています。ハナミズキ、イロハモミジ等は12,13度でも低温感応してくれますので、アトリウム内で花も紅葉も楽しめる植物です。

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 ラン生産者が売り出したいランを植物館は飾る展示です。生産者は花の形や色に関心が集中していて、買い手のニーズが読み取れなかったりします。いかに飾るか、ランを身近なものにするか、ニーズを読み取るよりモードをつくり、生産者と買い手へ提案します。

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 これはミニチュアガーデンです。お人形は全てボランティアさんがつくっています。

 ミニチュアガーデンは、1/8から1/10の世界で、空間構成を考えたり、スケールを考えながら使える植物を考えたり、結構頭を使います。狭い空間ですが、園芸療法、花育、花のまちづくりのデザイン等色々なことを学ぶことができます。昔の箱庭療法のようにミニチュアガーデンを流行らしていきたいと思っています。


市民ガーデン

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 市民ガーデンは住民参加で創る庭です。市民向けの野菜づくり教室を行なっています。


イベント

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 また、温室を舞台にした季節ごとの様々なイベントも行なわれています。

伝統野菜シンポジウム
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 平成14年11月2日に開かれた伝統野菜シンポジウムの様子です。

 伝統野菜・伝統園芸を再現しようとするなら、その育った環境を再生する必要があります。その環境づくりの大切さに注目してもらうためのシンポジウムでした。

ブルックリン・ボタニカル・ガーデン
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 この写真はアメリカのブルックリン植物園の方々が、奇跡の星の植物館を視察しに来た時のようすです。前にもお話しましたが、ブルックリン植物園はアメリカで一番ボランティアがしっかりしている植物園です。サポーターたちはマンパワー、お金で植物園を支えてくれます。毎年サクラ祭りやクリスマスにはチャリティーを行い、お金を集めるそうです。私たちのもクリスマスショーの1日目にパーティーでお金を集めるべきとブルックリンのサポーターたちが教えてくれました。

 私も奇跡の星の植物館は、将来こういうしっかりしたサポーターさん達に支えてもらいたいと思ってますので、これをきっかけに彼らとは仲良くして交流を深めたいと思い、2005年私達も向こうの植物園へ行きました。

みかん展
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 淡路という地域柄、淡路で栽培可能な柑橘類を集めて展示しました。


花のまちづくり教室

亀岡のオープンガーデンin奇跡の星の植物館
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 これは奇跡の星の植物館で亀岡の人々がオープンガーデンを行った時の作品です。亀岡の町へ授業に行き、亀岡の人たちに自分たちの町の地域性を読み、どのような空間を創るか学習してもらいました。

 各自が、亀岡の人々が昔使っていた道具等を持ち寄り、花修景を考えました。奇跡の星の植物館で展示できると言うことは彼女たちにとって「名誉」なことらしく、指導料もいただけました。

 亀岡の方は、イベントに合わせて観光案内をしてみたり、オープンガーデンでは地域の特産物でおもてなしをしたりしました。同時期にシンポジウムも開催したので、亀岡市もこの機会をうまく使って自分の町のPRが出来たのではないでしょうか。

子どものための教室
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 これは子供たちの自然科学教室です。アフリカをテーマにフラワーショ−を開催していましので、「アフリカの家をつくろう」というテーマに教室でした。まず植物の形と建築デザインという講義をおこない、その後、アフリカの家を創りました。右は、その時講師の方々、大学生、子供たちが一緒に作った家です。


サポーター

 植物館には大勢のボランティアに来てもらっています。地元の淡路だけでなく、京阪神からのボランティアがサポーターとして様々な活動に参加しています。

子どものための企画 ミラクルメイト
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 特に淡路の子供たちには、小さいときから自然の大切さを知ってもらうために、いろんなイベントを企画しています。写真は子供たちは植物館で結成されたミュージカルグループです。

 私は篠山の時から子供ミュージカルグループをつくっています。例えば、奇跡の星がなぜ奇跡なのか、分からなくても、小さいときから呪文のように繰り返し言っていると、きっと大きくなってから気づいてくれるだろうと思っています。

外での勉強会
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 これはボランティアさん達と丹波で勉強会をしたときの様子です。

結婚式
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 植物園ではこんな風に結婚式を行い、イベント費を作っています。

光と花のページェント
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 クリスマスの時です。

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