山本さんは委員会の中で、地域社会をよくしたいという思いで建築をしているのだが、実際は建築家と住民との間にギャップがあるので、それを埋められるような何かがあるといいとおっしゃいました。
イギリスではCABEが年間300から400件のデザイン審査を行っています。日本で考えると、主要なプロジェクトの大半は審査がおこなわれていることになります。そこからは、日本にはない参考になることが多くあるだろうということで、シモンズ氏さんをお招きしました。大変すばらしいプレゼンテーションとディスカッションができました。その縁もあって、住宅局の若手が半年間CABEに勉強に行くことになりました。
京都の場合は、今回の景観施策の中では、景観審議会という景観を審査する組織があるようですが、その役割は通常基準では許可できないものに特例として許可する場合に審議会がお墨付きを出すというものだと聞いています。エキスパート・ジャッジという意味では近いのかもしれませんが、体制や予算、位置付けは全く異なるものだと思います。景観審議会が上手く機能するために、CABEは研究するに十分値するでしょう。
CABEに関する資料は下記からダウンロードできます。
CABE-HP(http://www.cabe.org.uk/default.aspx?contentitemid=1)。
日本でもCABEに関する研究が徐々に発表されるようになってきました。例えば、ビルディングレター連載:『英国建築都市環境委員会(CABE)から学ぶ、多軸的な都市デザイン政策』08.11〜09.05予定(財)日本建築センター発行。資料は下記からダウンロードできます。
ビルディングレター連載第1回(http://www.spacesyntax-japan.com/Publications/014_BL_CABE_ST_0811.pdf)。
検討委員会のメンバーと活動概要
●座長は山本理顕氏
ここから検討委員会そのものについて説明します。座長は建築家の山本理顕さんにお願いしました。山本理顕さんは都市機構が行った工場跡地を住宅団地に再生する東雲のプロジェクトや横須賀の美術館を設計されていて、中国やオランダなどでも活躍されています。また、原広司さんの研究室におられた頃には、海外の集落の調査をされていたと思います。一般には作品的な建築を作る方と思われているようですが、社会の仕組みや制度を常に意識した建築活動をされていると私は思います。
●住民紛争との関わり
紛争話もいくつかあるようで、群馬県の邑楽町では役場の基本設計をされたのですが、町長が交代した時に設計者も交代することになったということがあって、町を訴えて係争しておられると聞きました。このようなこともあってでしょうか、建築と地域社会との関わりについてご見識をお持ちで、自分なりにも解決したいということから、この委員会に入っていただきました。
●他のメンバー構成
それから他のメンバーを紹介します。私なりの理解ですが、木下庸子さん、工藤和美さんはいずれも大活躍されている女性建築家、岡部明子さんや北澤猛さんは都市再生やアーバンデザインに詳しい研究者であり教育者です。布野修司さんや宗田好史さんは関西を中心に活躍され海外事情にも精通した学究肌の方々、あとは神奈川県の蔀さん、川越市の荒牧さんの公共団体の方2人に入っていただきました。全部で委員は9名です。話し合いの方法は、各委員の方々からプレゼンテーションをしていただいて、それに対してフリーディスカッションをしてまとめるという形をとっていました。そのためどっちの方向にいくのか分かりづらく難しかったのですが、6回の会議を通して山本座長に何とかまとめていただきました。
●イギリスよりCABEを招聘
また、その間に一度イギリスからCABE(The Commission for Architecture and the Built Environment)のキーパーソン、チーフ・エグゼクティブのリチャード・シモンズ氏(Dr Simmons)をお招きしました。CABEは国に一つしかない組織で、年間25億円の国費を使ってデザインの質を高めるための活動をされています。そして、主な役割は建築に関する教育の質を高め、理解度を高めるということと、実際に建設される建築のデザインを評価して設計の質を高めるということです。
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