良好な景観形成のための建築づくりの枠組み
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提言の紹介3〜具体的行動の提案

 

 15ページ以降は、それに基づいて具体的に何をやったらいいのかという内容を提案しています。

 その骨子は下記の(1)〜(6)であり、(7)はその支援組織の提案です。発展段階説ではないですが、この順番は重要です。

     
     (1)地域資産の把握・共有
     (2)良好な建築景観に関する共通言語の検討
     (3)専門家によるデザイン調整の推進
     (4)公共建築におけるモデル的取り組みの推進
     (5)地域の技術継承・創出のための専門家の育成
     (6)良好な建築景観についての普及啓発・調査研究
     (7)専門家が良好な景観形成に向けた活動を行う場づくり
 

●地域資産の把握・共有

 何をやるにしても最初は基礎が重要です。はじめは調査が必要です。景観計画を作る時にも、すぐ景観計画ができてしまうところも多くありますが、それは地域資産の把握と共有が十分になされている場合に限られると思います。

 しかし多くの自治体では、そうした資産の把握・共有が継続的にできていないように思います。まず何をやるにしても、こうした調査が必要です。ここがしっかり出来ていれば成功につながると思います。最初に時間をかけてじっくり調査して、誰もが理解できる基礎をしっかりかため、それにあった戦略を練れば、自ずと流れはできてくるということです。


●共通言語の検討

 次に、共通言語の検討です。地域の景観計画をつくるときに地域の共通言語を調べていくという作業があると思いますが、16ページでは国民全体の共通言語を作りたいということが書かれています。CABEでは、言葉を大切にしていて、またこれは教育に繋がる部分でもあります。共通言語を使って、個々の建築のデザインを評価し、調整する「(3)専門家によるデザイン調整の推進(デザインレビュー)」が行われるので、国民誰もが理解し参加できるのだと思います。


●専門家によるデザイン調整の推進

 17〜18ページは、デザイン調整システムのことです。


●公共建築におけるモデル的取り組みの推進

 19ページからは公共建築に関する内容です。公共団体の専門性を考えてみると、建築に関しては失われつつあるというのが実態だと思います。これから地域格差が広がると、公共団体の中では、行政能力もままならないところが出てくると思いますが、そういったところでも景観を守っていくための仕組みが必要だと思われます。公共団体を支える人たちが必要です。公共の建築を作るときに、必ずしも公共団体の職員だけで作る必要もない時代ですので、公共建築で色々なモデル的取り組みを行っていく必要があると思います。


●地域の技術継承・創出のための専門家の育成

 20ページは人材育成の話です。技術や技能を継承したり、新たな人材を育成したりすることです。地域の産業として成立できてはじめて、後継者も生まれます。例えば若い建築家が地方に行って、そこに居ついて、景観に関わる仕事を続けることを応援するような仕組みがあったらいいという提案がありました。人に投資する。お金はそんなにかからず、意外に大きな効果が生まれると思います。


●良好な建築景観についての普及啓発・調査研究

 21ページは、一般の方への普及啓発ということです。


●専門家が良好な景観形成に向けた活動を行う場づくり

 最終的に「普及啓発」レベルまで行くというのが一番の目標でありますが、そのための活動の場作りを、提言の最も大きな目玉として書いています。

 (1)から(6)の活動をしている、地方レベルの団体はたくさんあります。JUDI関西もその一つなのかと思います。良好な建築景観をつくるための支援組織として、各地方レベルで、ここにいらしゃるような人たちが参加して、何かあれば相互に連携を取れる組織が必要です。

 そこでは、今お話した(1)から(6)に書かれている内容を行っていくわけですが、全てやらなくてもいいと思います。例えば地域資源の調査などをやるだけのレベルもあれば、もう一歩進んでデザインレビューまで行っているところもあってもよいのです。ただし地域の個々の組織が個別に活動しても決して上手くいきません。現れる事象はそれぞれ異なるでしょうが、原因や対策は共通しているでしょう。それは国レベルで一緒に取り組むことが必要です。

 大きな幹の部分である、共通言語のようなものや、デザインレビューのやり方などを個々の地域で悪戦苦闘してもなかなか答えが出ないように思います。もちろん個々の事例がなければ、レビューのモデルなどは作ることができないのが実態だと思いますが、理論的な方法論は国などの大きな組織でやらざるを得ないと思います。特に教育や人材育成の問題や、初動期の専門家の派遣などは重要だと思います。

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