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住宅リノベーション

 

 代表的な写真を持ってきました。いわゆる中古マンションを買って、改装して暮らしたいというものです。

 80年代頃からリビングを、南側のバルコニー側にもってくるようになったのですが、その前の70年代には南側は和室2間とか和室と洋間の2間というのが多くて、部屋の真ん中あたりにリビングがありました。そういうものを今買って、改装したいという人が、このように南側をリビングにされるわけです。見ていただいたらわかるように、部屋が元々分かれていたものですから、スリーブが二つあったりします。壁や押入れを取り払って、かつ天井の懐が20cmあったのを取り払って、天井を高くしたりしました。配管は見せたままです。

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 フローリングは、通常は新建材が多いのですが(70年代後半くらいから施工性能がいいとか、メンテがしやすいとか、たぶんユーザーよりも、アフターのクレームが少ないからと供給する側が使いたがって、普及したものだと思っているんですが)、うちはムクのフローリングを使いたいと考え、それが特徴になっています。また壁についても、ビニールクロスは今やマンションでは当たり前になっているのですが、あれも供給者側の論理でできているのではないかと思っています。貼った瞬間が最高によくて、だんだん剥がれたり汚れたりして、状態が悪くなっていくわけです。

 そうではなくて、ここではペイントにしています。塗っている壁です。最初は塗るのが難しいですからプロに塗ってもらうのですが、あとは自分でも塗れるわけです。二年ほどしてお客さんが「ちょっと汚してしまったのでペンキを追加で下さい」と言ってこられます。当然ペイントばかりではないのですが、こういう内装をされる方が多いです。

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 もう一つ多いのが、職住一致の話で、これも時代を反映しているのかもしれません。大正から昭和にかけて、サラリーマンがどんどん増えていったのですが、90年代くらいから勤務形態が随分と変わってきました。会社の名刺は持っているけれども、実は会社には勤めていないという人たち、そんな人たちは遠くに住んでいて、一時間から一時間半かけて通っているけれども、机がないものですから、打ち合わせが朝と夜で飛んだりすると居場所がなくなって、ネットカフェに行ったりする。そういう人たちが街中にマンションを買って、自分の事務所と家と兼用みたいなパターンが増えてきたと僕は認識します。

 写真は仕事場と家が一致しているものを、マンションでやってくれという事例です。買うのは住宅ローンです。

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 これは趣味と住居が一致している事例です。この人はデザイナーで、キックボクシングが趣味なんですが、趣味が高じて実はプロです。プロの資格を持って、ファイトマネーをもらったりしているんですが、マンションと一緒になってしまった。うちの会社では、こういう事例も多いです。

 考えてみれば、マンションというのは、分譲で買う時、基本は建売であり、キックボクシング選手用の家など供給できないわけです。となると、そういう人たちにとってみれば使い勝手が悪い。だから改造したい。でも新築を買って改装するなんていうのは、もったいない。でも日本の場合は、建築確認制度の関係で竣工してからでないと売れません。台湾や中国では、分譲マンションでスケルトン売りみたいなものが多かったので(最近は変わってきているらしいですが)、それを買って、あとは内装業者を呼んできて、つくっていたようです。日本でそれをやろうとすればコーポラティブでしかできません。

 コーポラティブは震災復興で僕もコーディネイトしたことはあるのですが、二年くらいかかって大変です。それを思うと中古マンションを使ってやるというのは、そういう人たちにとっては便利であり安くあがる。そのうえ日本の場合は、中古不動産が諸外国に比べて非常に安い。例えば大阪市内の中心部で20〜25年経ったマンションならば、広さだけで言うと新築の半値で買えると思います。そういう国はなかなかありませんから、僕は日本はリノベーション向きではないかと思っているんです。

 今までは改装費でローンがつかなかったのですが、3〜4年前からローンがつくようになってきたので、より話が進むようになった。今後ますます増えるだろうと思っています。

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 これはオーナーが困っておられた長屋です。居住者の平均年齢が80歳を越えていて、その人たちが死んでいくと、あとは誰も入らないという長屋でした。10区画くらいあったものを、空いたところから改装していきました。若い世代に住んでほしいと言われたので、こういった形になりました。

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 こういう古い家に住んだことのないような人が結構来て、使い方も和室にソファを置いたり、シャンデリアを入れたりというところもあります。

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