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リノベーションの背景

 

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各国の住宅投資とリノベーションの比率
 
 古いデータで恐縮ですが、あまり変わっていないと思います。全体が住宅投資額なのですが、白い部分が新築に対する投資で、黒っぽい部分が改修に対する投資額になります。日本の場合は改修系の投資は10数%、アメリカは40%くらいです。イギリスや、ここには出ていませんがイタリアは7〜8割くらいが改修系の投資です。ヨーロッパに行くと、新築などやったことのないけれど建築家ですという人がいるのです。日本では僕がこういうことをやっていると、「ああ、リフォームですね」と、同業者からもちょっと下に見られるような感じが未だにあります。新築をやっているのが建築家で、改修をやっているのは建築家ではないような風潮は、今でもあるなと。でも安藤忠雄さんなどは海外に行って改修をたくさんやっておられますし、その辺の意識はちょっと変わってほしいと思っています。


●リノベーションが増える理由

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 ユーザーは別に「中古ストックを使っていかねばならない」とか、「ストックあまりの時代をどうするんだ」などとは、誰も思っていないわけです。勝手に都合がいいからやっているだけの話なんですが、自分なりにリノベーションが増える理由を分析してみました。

 まず「ライフスタイルの多様化」です。使い古された言葉ですが、やはりそれなのかなと思います。都心居住者というのは、住まざるを得ない人が多いと思うんです。先ほどの、いわゆる9〜5時のサラリーマンではない人の比率が高いということです。しかし、そういう人向けの住宅が、なかなか開発されない。ハウスメーカーの戸建てでもそうですし、マンションでも郊外のものをそのまま持ってきたような感じで、間取りにしても思うようなものがない。だからリノベーションをやっているのかなと思います。

 あとは、「新築マンションのモデルルームを見に行ったんですが、なんかピンと来なかったんですよね」と、うちの会社に来られる方が多い。集合住宅は、同じ列で同じ間取りが並んでいるものですが、何か違うなと感じていらっしゃるのではないか。これだけ食べ物や服など最先端に行っている日本なのに、住宅については画一的でつまらない。特に賃貸などはひどいわけです。ただ最近は賃貸にデザイナーズマンションなどが出てきて面白いかもしれない。逆に分譲の方がつまらないかもしれないですね。

 あとは「新品への執着がなくなった」ということ。家具屋さんでも新品と中古を同じ店舗内で売っています。僕らが学生の頃は、ユーズドと新品では店が違ったんですが、今は同じ店の中で、服でも家具でもまぜて売っていますし、気に入ったものであったら、古いか新しいかを気にしてない世代になってきたなと思います。


●リノベーションの長所

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 長所として、まず「早い、安い」ということです。時代の状況が変わってきて、不動産業界でも昨年来のサブプライム問題で、大変な時代になっています。しかし、そういう時ほど、こういうリノベーションはついていけるし、リノベーションをやっている会社の方が潰れにくいと思っています。

 それから、普段僕は全く意識していませんが、やはり「環境にやさしい」ということ。測ったことはありませんが、やさしいのは間違いないと思っています。役割が終わったからと言っても物理的には全然終わりではありません。特に鉄筋コンクリート造の建物は壊れません。100年くらい壊れないし、朽ち果てないし、それをやはり使っていくしかないのだろうと思っています。

 それからよく設計者などに、「リフォームやっていて面白い?制約が多すぎるんじゃないの?」と言われることがあります。僕は、新築もやっているのですが、むしろ新築の方が制約が多くて、リノベーションの方が、結構自由にできると感じています。リノベーションの方が、自分が設計者として持っている能力以上のものが出せて、偶然ですけれども、より面白いものがつくれることを経験することがあります。それを利用者の方も感じてくれているのかなと思います。

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