リノベーションの背景
まず「ライフスタイルの多様化」です。使い古された言葉ですが、やはりそれなのかなと思います。都心居住者というのは、住まざるを得ない人が多いと思うんです。先ほどの、いわゆる9〜5時のサラリーマンではない人の比率が高いということです。しかし、そういう人向けの住宅が、なかなか開発されない。ハウスメーカーの戸建てでもそうですし、マンションでも郊外のものをそのまま持ってきたような感じで、間取りにしても思うようなものがない。だからリノベーションをやっているのかなと思います。
あとは、「新築マンションのモデルルームを見に行ったんですが、なんかピンと来なかったんですよね」と、うちの会社に来られる方が多い。集合住宅は、同じ列で同じ間取りが並んでいるものですが、何か違うなと感じていらっしゃるのではないか。これだけ食べ物や服など最先端に行っている日本なのに、住宅については画一的でつまらない。特に賃貸などはひどいわけです。ただ最近は賃貸にデザイナーズマンションなどが出てきて面白いかもしれない。逆に分譲の方がつまらないかもしれないですね。
あとは「新品への執着がなくなった」ということ。家具屋さんでも新品と中古を同じ店舗内で売っています。僕らが学生の頃は、ユーズドと新品では店が違ったんですが、今は同じ店の中で、服でも家具でもまぜて売っていますし、気に入ったものであったら、古いか新しいかを気にしてない世代になってきたなと思います。
それから、普段僕は全く意識していませんが、やはり「環境にやさしい」ということ。測ったことはありませんが、やさしいのは間違いないと思っています。役割が終わったからと言っても物理的には全然終わりではありません。特に鉄筋コンクリート造の建物は壊れません。100年くらい壊れないし、朽ち果てないし、それをやはり使っていくしかないのだろうと思っています。
それからよく設計者などに、「リフォームやっていて面白い?制約が多すぎるんじゃないの?」と言われることがあります。僕は、新築もやっているのですが、むしろ新築の方が制約が多くて、リノベーションの方が、結構自由にできると感じています。リノベーションの方が、自分が設計者として持っている能力以上のものが出せて、偶然ですけれども、より面白いものがつくれることを経験することがあります。それを利用者の方も感じてくれているのかなと思います。