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乗り物をコンバージョン

 

●キャンピングカーを住宅に

 今度は乗り物の転用です。「住いのミュージアム」には、戦後復興で大阪市がやっていた復興住宅である城北バス住宅の模型が残っています。

 僕は神戸の震災復興で行っていて、そのときに考えたことが一つあります。この前も新潟などで使われた仮設住宅ですが、500万円くらいかかります。ところがそれに住んだら住んだで、「住みにくい」とか、皆やはりブツブツ言うんです。それだったらバス住宅でよかったんじゃないかといつも思うんです。各都道府県などでキャンピングカーを持っていて、普段は市民にレンタルしておいて、災害があったら各都道府県から車を集めて住んでもらうとか、そういうふうにしたら結構使えるのではないか。

 乗り物に住むというのは、大阪であれば『泥の川』という小説にも出てきますが川の上に仮設住宅的に住んでいたそうです。東京などでも昭和の初期に4000隻くらいの舟に住んでいる人たちがいたらしいです。僕よりちょっと上の世代からは、「同級生が住んでたで」と聞きましたし、昭和20年代くらいなら大阪にもそういう人たちがまだたくさんいたらしいんです。それは貧しさの象徴だったと思うんですが、最近はそれが世界的に変わってきています。

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 これはこの間、売ってしまいましたが、僕が持っていたキャンピングカーです。中古で買ったものです。キャンピングカーですので、シャワーもあるし、キッチンもあるし、これに住もうと思ったらすぐに住める状態にあります。そのキャンピングカーを普段でも使えないかと思って、オフィスの駐車場に停めていました。より住宅っぽく改装しようと思って、リノベーションしました。

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 キャンピングカーで気に入らないところは、お父さんが子どもを連れて行くぞ、もしかしたらおじいちゃんおばあちゃんも連れて、三世代で行くぞとばかりに、「6〜7人寝られます」というスペックを売りにしているものが多いんです。

 でも「6人も寝られない」といつも思っていて、それを2人くらいしか寝られないようにしてしまって、その分本棚を作るとか、バーカウンターをつくったりして、改装しました。

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 このようにフロアスタンドをつけたりもしました。これは走ったときに、転げないように両面テープで固定しています。趣味のものを入れる本棚も作っていますし、コップはエッジをつけて、走ったときに動かないようにしています。そうすると普通に暮らせるんです。

 キッチンもあって、コンロなど四つ口コンロだから、住宅より多いです。冷蔵庫もあるし、電子レンジもある。住んでいて、いろいろ実験をしました。僕は川沿いに住んでいるので、南海大地震でも来たら、家はおそらく水浸しになると思うんです。電気もつかなくなったら、これは自分で発電するし、結構使えるなと思ったし、街乗りでも使っていたし、かなり面白いなと思っていました。

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 これがトイレです。カセットになっていて、溜まれば捨てられる。便器の上の部分を倒せば、洗面台になりますし、左側の写真はシャワーです。意外に暮らせます。毎日ここで暮らしていたわけではありませんが、会社の仕事が遅い時には寝泊りしていました。

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 そんなことをやって、新聞にコラムを書いていると、それを見たキャンピングカーをつくっている会社の社長から電話をいただいて、「うちの商品をつくってくれ」と言われて本当につくったのが、この写真です。

 これは今でも売っています。キャンピングカー屋さんが、都市でも使えるというコンセプトで、内装もキャンプというよりも、街に似合いそうな、カフェのようなテイストのキャンピングカーで、620万円台です。是非見てみてください。


●ハウスボート

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 オランダのハウスボートです。売っています。行ってきたのが6年ほど前ですが、その時で2000万円弱ということでした。同じ広さのアパートとほぼ同額で、それからユーロが上りましたから、今は3000万くらいしているのではないかと思います。こういう舟を住居に変えているのが、アムステルダムだけで、2千何百隻あります。

 それを市がそれ以上増やさないというようにしてしまったので逆に希少性が出てしまって、今はアーティストとか芸能人とか、実はオランダの皇太子も持っているらしいです。ロンドンへ行けば、もっと幅の狭いナローボートという週末旅行へ行くようなものもありますし、パリへ行けばイザベル=アジャーニのような女優などもこういうものに住んでいました。世界的にはこういうものは、いわゆるクールな感じになってきているのかなと思います。

 だから僕は大阪が水の都だというのであれば、こういうものをやっていったらいいんじゃないかと思っています。東横堀川も水門で閉められているわけですから、流される心配もないし、高速の下で、こういうので暮らしてもいいよと。市は逆にその占有料をとれるわけです。

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 この写真は、たくさん撮ってきたなかで一番気に入っているものです。50代くらいで、なんとか早くリタイアして、こういうものに住めたらなと思っていたイメージにピッタリの写真です。こんなふうにグリーンなどを置いて住んでいます。

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 郵便受けもあって、ちゃんと住所もとって、トップライトもつけていますし、水道も市が供給しています。電気も来ています。正式に認められて住んでいるわけですから。

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 僕もネットで探して、住んでみました。

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 48m2ですから15坪くらいです。桟橋から渡って、入ってリビングがあって、キッチンがあって、ベッドルームがあって、クローゼットがある。間口が2間幅で、ちょうど大阪の街中の中央区あたりにあった長屋の平屋建てくらいのイメージです。


●バックウォーター

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 これは南インドのケララ州なんですが、2年ほど前に行ってきました。これは米などを運搬する船でした。西アジアや東南アジアには、この形の船は今でも多いのですが、米の運搬では食えなくなったらしいです。詳しくは聞かなかったのですが、そういう仕事がなくなって、船だけが残って、どうしようかということで、これに観光客を乗せて走ろうとなりました。それが高じて泊めようとなったようです。

 このあたりは水郷地帯で、ずっとこういう景色が続く所です。そこにこういう船が何百と並んでいて、自分で選んで、キャプテンと機関士と料理長とサービスが4人くらい乗ってくれます。田舎ですので、人件費が安く四人がついて一日1万5千〜6千円くらいで借りられます。24時間ついて、途中でえびや蟹を買っては料理をしてくれるわけです。

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 これはだいたいインドの金持ちが新婚旅行に使っているようで、僕が1人で行くと非常に不審がられて(笑)、それも1人なのに一番いい船を探して、ちょっと高いものを借りたものですから、こんなに豪華です。これは一生の思い出に残る良い旅ができました。

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 これなども非常に良い転用だと思いました。地域で本来の役割がくなったものを遺産としてうまく転用し、地域の経済をなんとか回していく。つまらないホテルに泊まるより、よっぽどよかったです。

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