着地型観光とまちづくり
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2 まちづくりに着地型観光手法は役立つか

 

●観光が求めるものと、まちづくりが求めるもの

 実際、観光まちづくりがまちづくりに役に立つのかです。これは事務局から是非答えてほしいと言われました。

 まちづくりのニーズと観光的手法が合っているかどうかについては、私はおおいに役割があると思います。なぜかというと、観光客が観光地に行って満足する大きな要素として、そのまちの生活や産業、活動に地域の魅力を感じることがあげられるからです。これはまちづくりや町おこしの過程で味わう感動と全く同じ構造だからです。

 私たちが普通考えるのは、観光は非日常の世界だからこそ感動を感じるということでしたが、これは近代観光の考え方です。1978年ごろから変わってきているのですが、今はとても奇麗なものを見たいとか、とてもおいしいものを食べたいという非日常的な体験ではなく、日常生活の中に感動を見つけたい時代なんです。日常生活の中から価値を見つけて、それを自分の地域に持って帰って自分の生活を変えたいんです。当然、物の見方も従来の観光スタイルとは違って、自分の所と比べてどうかという比較の対象として観光地を見るようになっています。逆の言い方をすると、観光地のいいところには貢献したいし、悪いところは改善したい、場合によってはそこで汗を流して働きたいという要求も生まれてきます。

 例を挙げると、例えば農村では少子高齢化のせいで働き手が少ない、都会の人の力を借りたいと思っているわけですが、観光的に見ると違うんです。農村がお金をもらって都会の人を体験させてあげるという風に考えるんです。農家は3千円もらって、都会の人には5千円ぐらいの知的満足を与える。それで、都会の人はよかったと。食料作り、お酒造りなどの農村の生活文化を学んで、それを都会へ持って帰って自ら愉しみ、時には商品化したり、新しい産業開発に使ったりするというわけです。今は、観光がそういうレベルまで上がってきているのです。


●外部との交流が観光の鍵

 観光スタイルがそういう風に変化しているわけですから、観光が地域の町おこし、地域振興に役立つところまで、レベルが上がってきているわけです。観光客はただ1回来るだけでなく、リピーターになっていきますから、お互いに交流が生まれて、今度は地域の人が観光客が住んでいる町を訪れるという現象も起きています。

 この着地型観光は、交流、創造、体験などの価値を作っていきながら、新しい観光スタイルを生み出しているのです。つまり、文化を生み出しているというわけです。そしてそこから雇用とか産業といった経済価値を生み出していくのが最終の目標ですが、文化と経済というのは今は学問的にも全く未知の分野ですが、今後に期待したいところです。

 このように、まちづくりと同じような考え方ですが、ちがうのは外部と地域が交流し合うところから始まるのが着地型観光です。

 それと空間・施設など過去のストックの活用も、やはり新しく作るよりは環境にやさしく人間的な手法ですから、これもまちづくりと親和する観光的な手法です。都市にはこうしたストックを含め、あらゆる文化がそろっています。それが点在している場合もあります。だから、ネットワークできる多様性があるということで、どんな観光形態にも対応できるという点では、着地型観光と相性のよい資源のあり方ではないかと思っております。

 このように、まちづくりにも観光という手法が使えると私は思っています。物の価値を創造して交流していくということは、当然それが産業になり、雇用に通じるということです。ですから、こうした手法はより大きなまちづくりや環境整備の分野でも貢献できるのではないかと考えています。

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