だから、たぶん今考えられる成功の条件は、地域の人と観光のプロの両者が協力し合ってやっていくことだろうと考えています。例えば、観光客が地域に入るまでは観光旅行社がお世話をし、地域に入ってからは地元のメンバーが観光客をもてなしていくという形です。
今はインターネットで発信できるんだから中間業者をはずして直接地元と観光客が交渉すればいいじゃないかという意見も聞きますが、実際はそんなにスムーズにいくものじゃないんです。やはり持続させようと思ったら、プロのやり方、商売のやり方、市場の見方・分析、そして商品のなかで感動をもたらすような技法、というのが必要になってくるのです。地元が業者なしでやれるようになるまでは、おそらく何十年もかかると思います。
ですが、日本の担当者はアメリカの生活様式をそのまま取り入れたやり方では成功しないだろうと考えたのです。投資も何千億ですから失敗はできません。試行錯誤して、日本人の生活様式に合うようなやり方を見つけるまでに十数年かかったのです。
今、連日にぎわっているのはご存知の通りです。ランドとシーの間に何が変わったかと言うと、楽しませる技術が発達しました。「見て楽しい」から「参加して楽しい」の時代に変わっていったのです。人間的な幸せの在り方が変わったのです。
例えば、ホテルなども3〜40年間は営業しないと採算に合わないと言われています。昔は50人もバス1台にのってホテルにやってきてくれましたが、今は10人しかバスに乗らないんです。昔だったら運転手やガイドさんの部屋も取れたけど、今はあわないんです。お客さん10人に運転手さんとガイドさんの2部屋ですから。だから外の安い宿に部屋を取るようになりました。そうしないと採算が合わないんです。ホテルの回りに安いビジネスホテルが多くなったのはそういう理由です。
このようにお客さんの変化が激しいのに、ホテルは施設型観光ですから時代変化に合わせられないんです。
それを考えると、着地型観光も、大きな投資をしてガバッと回収するのではなく、小さな投資で需要を見ながらボチボチ儲けていくしかないと思います。コンパクトシティやスローフード運動がよく紹介されますように、今は大量生産・大量消費の時代は終わりました。まちづくりも観光も、その時代の変化と連動してやっていく時代だと思います。今はまだ未知数ですが、いつかは成功するという段階までは来ているのだと思っています。
4 着地型観光の成功の条件は何か
●プロとの連携が必要
実を言うと、着地型観光を成功させるのは難しいんです。このタイプの観光は別に田舎でなくても都会でも温泉地でも展開できるものですが、地域の方だけで手がけた場合、ほとんど成功していません。やはり観光マーケットに関する専門的な知識が必要になってくるんです。それは市場のニーズに合っているか、感動を与えられているのか、といったことです。それを着地が全部やるというのはほとんど出来そうにありません。
●東京ディズニーの我慢に学ぶ
プロの手法で成功した例として、ディズニーランドの例をあげておきます。東京ディズニーランドの開園が1983年、ディズニーシーの開園は2000年でした。最初はシーのオープンはランドの5年後の1988年と考えられていたそうですが、実際は17年もかかったわけです。なぜか。アメリカの本社からはもっと早くオープンしろとせっつかれていたそうです。なにしろ毎年50億円ものロイヤリティがランドだけでもアメリカに入るのですから。
●小さな投資でボチボチ稼げ!
着地型観光に話を戻すと、成功の条件があるとすれば、やはり外部からプロが参加して協力するということがあげられるでしょう。ですから、今成功したいとするならば、今ある力、地元の人と観光業者が協力し合って、5〜10年のうちに着実に成果を積み重ねていくことが肝要だと思われます。
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