魅力ある都市観光とデザイン
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大阪の魅力はやはり人にある

京都市立芸術大学 藤本英子

 

 大阪についてみなさんよく知ってしゃべっているようですが、意外とこういう風にまちづくりの話をする機会は少ないのではないかと思っていました。ましてや、今日のように分野の違う人たちが一同に集って話をする機会は滅多にありませんから、今日は大変幸運で、素晴らしい機会が持てたと思います。

 さて、私が大阪の魅力について他の地域の人たちと語るとき、いつも引き合いに出すのが大阪朝日放送が制作している『探偵ナイトスクープ』という番組です。当初は関西のみの放映だったのが、「この面白さは全国に通じる」と最近全国放映になったそうです。何が面白いかと言うと、突然街の中に現れたテレビクルーの前で臆することなく番組のおふざけにつき合ってくれる大阪の商店街の人たちの乗りの良さです。例えば、「ばんっ」とピストルを撃つまねをすると、普通のおじちゃん、おばちゃんたちが「うっ、やられた…」と倒れるマネをしてくれる。これは他の地域の人にはないことらしくて、大阪は街を歩く人がみんな役者になるようだと結論づけていましたが、こういう事例ひとつとっても大阪はやはり人が最大の魅力なんだろうと思います。ですから、道頓堀に遊歩道が整備されても、そこに人が歩いていなかったら大阪の魅力は生まれないでしょう。

 野杁さんのお話にありましたように、道頓堀は戦前は芸人の街であり、面白い商売をされる方が街のそこここにいっぱいいらっしゃったという歴史があります。五座があったことからも、ここは役者さん、芸人さんを育てる街だったのだろうなと思います。最近、繁昌亭が出来て、大阪の街で落語を志す方が二百人ほどいると聞きました。女性も5%いるらしいです。そうした面白い人びとを輩出する所が大阪の魅力だと思います。

 ただそうした施設の中で楽しむのもいいのですが、外、つまり町なかでも人びとが楽しめる場所づくり(舞台作りと言ってもいいですね)が大事で、そんな場所をこれからどれだけ作っていけるかが勝負所だろうと思っています。野杁さんから「虚を実にする」というご提案をいただきましたが、そういうものも外に出て、街の中で人が起こす面白さをどんどん作っていけば良いのではないかと思っているところです。

 「太郎君去る」については、私も残念でなりません。食い倒れ太郎君のいたところは、大阪の写真を撮る上で絶好のスポットだったと思います。あれも、店の中でなく外に出していたところがミソだっただろうと思いますし、そうした大阪を感じられる場所が街のあちこちに増えてきたら、大阪の雰囲気もだいぶ変わってくるんじゃないでしょうか。太郎君にしろ、カーネルおじさんにしろ、あそこまで大阪になじむと人形とは言え心が入っていたと思うんですよ。

 私たちの仕事も、場を作り、そこにどれだけ心が入れられるかがテーマで、それを心がけながらデザインしています。今日は、どういう場所作りをすればにぎわいの空間が作れるかを、みなさんとディスカッションできればと思っています。

 私個人の感想を言えば、仕事で道頓堀に関わらせて頂いて、やはりつながりが難しいところだなあと思っています。いろんな商店街のあり方がありますが、もっとフランクにつながっていけたら、もっと素晴らしいことが出来るのではないかと思っています。そういう所から変わっていくのもひとつの方法ではないかとも考えます。

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