景観まちづくりの今
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バッテリーパークの例

 

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(c)Battery Park City Authoryty 1985
 
 空間の形を決めることで、どういうことが可能かを探ってみました。図はバッテリーパークのレジデンシャルエリアですが、一体的開発で、最初に空間の形を決定して、それに合わせて基準を作っていく。それを敷地単位に読み直していくというプロセスでできています。

 ところが、今ある市街地の空間を読んでそこから変化していく市街地の空間を計画するのはとても難しいのです。

 方法論として、今ある空間を読み直して、敷地の基準に置き直す場合、どんなことを決めていけばいいのかをイメージいただければいいと思います。

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(c)Battery Park City Authoryty 1985
 
 図の左側は部分ごとの高さを決めています。ストリートラインのところは同じ高さでずっときて、高層部分はこういう位置は配置してくださいと決めています。右は壁面の位置を示しています。

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(c)Battery Park City Authoryty 1985
 
 図には、敷地ごとの空間のかたちを決める基準が示されています。

 面白かったのは、このガイドラインを策定した事務所に行ったとき、彼らの事務所の設計した物件はガイドラインに合っていないと他の事業者から指摘された。しかし彼等は「空間の形を決めることは、デザインを制限することではない、いろんな工夫ができるはずだ」と主張していて、ガイドラインを決めることによる事業者のメリットとして開発許可に関わる時間コストが削減できるので、その分をデザインに回せばいいんだと言っていました。

 こういった一体的な開発など、アーバンデザインができるような場所であればいいのですが、一般的な市街地では空間の形が安定しないという問題があります。敷地単位で土地利用、建物が更新していきますし、敷地の条件次第で建築物の形態が大きく変化します。つまり、我われは隣の建物がどうなるのかわからないという中で生きているわけです。

 もし、敷地がコントロールできればある程度空間のかたちは多少安定すると思うのですが、今の日本はほとんどコントロールできない状態です。まず、敷地という概念は政令の中にはありますが、法令の中にはありません。建築物によって敷地が定義されます。だから、敷地がコントロールできないことが、空間が安定しないことのひとつの要因ではないかと思います。

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 仮に、船場の間口が狭くて奥に深い敷地を維持するようにコントロールできれば、建物の形態もある程度安定してくると思います。しかしながら、現状は知らないうちに敷地が大きくなったり小さくなったりするわけです。それが空間が安定しない大きな要因だと思います。京都の場合も同じですが、敷地の設定が京都では形態だけでなく、コミュニティまで崩壊させているケースがあります。敷地を放っておくと、図のようにいろんなものが突然建って、町の風景を激変させてしまうのです。

 景観デザインは変化を調整する仕組みと思っています。

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