「水都大阪」の再生  川の駅 はちけんや 誕生
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補足)デザインが決まるまで楽しく苦悩した

 

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基本構想時の模型の例
 
 最後に、完成するまでの仕事の流れをざっと見て頂きたいと思います。実は、模型をひとつ作るにも案外時間がかかるものなのですが、どんなファサードがええねんと話し合いながら着せ替え人形のようにたくさんのパターンを作っていきました。

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屋根形状検討の例
 
 特に公共建築の場合は、形にして検証していくというプロセスが大事なんじゃないかなと思ってます。最初から完璧なデザインでいくよりは、いろんな要素を積み重ねて出来ていく建築というのが自分が目指すべき建築だと思っています。

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川側ファサード検討の例
 
 デザインの途中で、地元の方々にも見てもらいながら検証を重ねていきました。地元の方々も本気で取り組んでくれ、良い悪いをはっきり言って頂くことで、助けていただいたと思っています。

 なお、余談になりますが、なぜRCにしたのかを説明すると、当時は法改正の影響で確認申請の手続きに時間がかかった時だったのですが、RCにするといわゆる適判という事務処理を省略でき、工期が4ヶ月ぐらい短縮できるというメリットがありました。

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案内所R天井下地
 
 温かな空間を構成要素として、この施設ではR形状を多用していたので、職人さんにも非常に頑張ってもらいました。うちのスタッフもつきっきりで「こうしてほしい」と現場監督並みに注文を出していました。

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天井見切り納まり検討
 
 天井は斜めの切妻なんで、取合いなんかも非常にややこしい工事でした。

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カウンタータイル
 
 これは「ヤハズ貼り」と言って、タイルを斜めに組み合わせて貼って行く工法です。そしてこのグリーンのタイルをR状に張っていくことで、水が流れる様子をイメージ表現しました。

 屋外テラスの床のパターンも、土っぽい色のタイルの中に人の足跡がつくようなパターンとか考えていました。実はそんなことを考えている時間というのは楽しいんですが、それを事業主さんに納得してもらうためのコスト調整やプレゼン資料などを作らないといけないので、けっこう時間的には苦しいものがありました。

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川開き
 
 工事途中には、イベントも行われました。今後も続いてゆくイベントとのことで、こんな風にずっと使ってもらえる施設であればいいと思います。

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テラス展望台
 
 写真の手前に見えるテラス展望台のことを私たちは「お立ち台」と勝手に呼んでいるのですが、ここに立つと中之島公園の剣先が一望でき、先端からは噴水が上がる予定になっています。すこし、目線を変えるだけで水辺の表情も変わり、ここが記念撮影のベストスポットになると思います。

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お祓い筋より
 
 これは、お祓い筋から施設の方を見たところです。真ん中に見える交通標識が邪魔ですが、ここからも川面が見えるんです。建築としては川の存在を邪魔しないように気をつけました。大阪の街のあちこちから川面が見える場所がたくさんあった方が良いと思います。はちけんやの施設も、道の正面から外れ、そこから少し顔をのぞかせ位置に建物は建っています。

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日本国際ドラゴンボート選手権大会
 
 2009年7月19日に開かれたドラゴンボート選手権大会の様子です。はちけんやの前を通過しました。一番後ろで漕いでいるのが私ですが、この時、初め川の水に触れるたのですが、なかなか気持ちいいものでした。

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観光案内所と1階からB1階への階段
 
 ここは観光案内所の所で、床は那智石を使っています。日本の那智産の石は非常に高価で、実はこれは台湾産なんですが、これを洗い出しの仕上げにして、熊野古道を意識した仕上げにしています。

 壁はコンクリートのペンキ仕上げなんですが、色合いは大阪土と呼ばれる大阪で採れる土の色合いを出そうと試みました。

 奥に見える階段は、木(アガチス)の蹴上げを使っています。床の部分はタイルです。

 照明の配置もあえて岸岐への軸線に沿って斜めに持ってきています。また、照明を木に反射させることで、温かい色合いになっていると思います。

 左に少し見えるベンチも、今回こだわったもので、わざわざ私たちでデザイン、特注させてもらいました。檜の木のベンチをあえて丸くすることで、知らない人と隣り合わせても話しやすくなるのではと期待しています。

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情報発信施設
 
 ここが今日、私の後でお話し頂く中野さんが所属するNPOが活躍される情報発信施設の場所です。実は、さきの観光案内所の場所とつながっている場所です。

 床はコンパネと呼ばれるベニヤを自然塗料で塗りました。

 天井に光っているのはトップライトからの明かりで、屋上となるテラスから自然光が入ってくるようにしています。テラスから覗くと、下の様子が見えるんですね。地下の施設なんだけど、地上とのつながりを持っていきたいと思って工夫したところです。本当はもっとたくさん設けて自然光を入れたかったのですが、テラスの使い方やコストの問題もあり、またトップライトから子どもが落ちてしまうという事故がマスコミで取り沙汰されたこともあって、1箇所しかできなかったといういきさつがあります。

 細かい工夫かもしれませんが、こういうこともちょっとずつ積み重ねていくのもデザインかなあと思っています。

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エントランス
 
 天井の中央に見えるのがトップライトで、出来るだけ透明にすることでつながりを表現しようと思いました。

 エントランスの向こう側のガラスの所は、いま水のカーテンが流れています。当初は店舗のデザインの人はカーテンを吊すとか壁にするとか言っておられたのですが、僕としては外との繋がりが大事だと思っていたのでそれだけはご勘弁くださいと言って水のカーテンになったところです。いま見える、ガラスの外の灯りは、北向こう側のまちの灯りです。店舗側としては、あまりストレートに店内が見通せてしまうのも困るということで、調整が必要だったのですが、結果として空間に動きが出て良かったと思います。

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リバースイート大阪
 
 ここが1階のレストラン「リバースイート大阪」の店内です。フレンチレストランですが、結婚式の披露宴にも使われると聞いております。

 余談ですが、ウェディングの業界というのは不況である時でも単価が上がるものらしいです。不況になると、結婚式を上げる人は少なくなりますが、式を上げる人はきっちりお金をかけるとのことで、いい業界だなと思いました。ともあれ、元気のいい企業さんがテナントに入ってもらったので、この施設もより活性化して行くと期待しています。

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照明確認
 
 これは、照明デザイナーの面出さんと照明確認をしたときの写真です。LEDを使った外部照明は施工直後で僕も初めて確認したのですが、ちょっと色合いやライトアップがイメージと違っていたので、現在手直しを行っています。

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噴水のライトアップ
 
 剣先公園の噴水実験のライトアップの様子です。

 言い訳にはしたくないのですが、僕は公共建築は建築デザインとして完璧に仕上がるものだとは思っていません。色々な方のご意見を取り入れながら創って行くものだと思っています。今回とても有り難かったのは、事業主さんや地元のみなさんとゴールを共有しながらデザインをすることができたことです。実を言うと、共有できないゴールに向かって仕事をすることがあるのもデザイナーの仕事なんです。今回は、その点、色々な立場の人たちと共に思いや目的を共有できて恵まれていたなと思います。今後の勉強にもなりましたし、これからもこの施設を自分も一緒に成長させて行きたいなと思いを新たにしたところです。

 これで、私の報告を終わります。続いては、この施設を使って頂くNPOの中野さんにお話しいただきます。

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