今日の内容は、この春に建築学会の都市景観小委員会から出した『生活景』という本の内容をベースとしております。この本は学会から出した本であり、鳴海先生に査読をしていただきました。鳴海先生、ありがとうございました。
ここ数年、私は生活景というキーワードで建築学会の都市景観小委員会で活動しています。その成果をこの本で著したのですが、今日はその中からいくつかの話題提供をしてみたいと思います。大阪の生活景については大阪市立大の嘉名光市先生が担当され、私は主に地方都市、それも地元である三重県の生活景を取り上げました。
地方都市の生活風景も今は急変しています。それに対していろんな紛争が起きていて、住民の方が生活景を守るための運動、あるいは新しくつくり替えるという運動が少しずつ出てくるようになりました。今日はそういう話を中心にしていく予定ですが、主に取り上げるのは三重県伊勢市、松阪市、伊賀市の近年の動きです。
序〜生活景とは何か
■『生活景』出版のこと
浅野:
■生活景とはなにか
最初に「生活景とは何か」ということをはっきりさせておかないといけないのですが、短い言葉で語るのはなかなか難しいのです。しかし、都市景観小委員会で主査をされていた後藤春彦先生が委員会を代表してまとめられましたので、ここで引用致します。
人間をとりまく生活環境のながめ。単なるながめではなく、生活環境に対する人間の評価と本質的な関わりがある」(中村良夫による「景観」の定義を参照)。
「生活の営みが色濃く滲みでた景観。特筆されるような権力者、専門家、知識人ではなく、無名の生活者、職人や工匠たちの社会的な営為によって醸成された自主的な生活環境のながめ」。
生活景という短い言葉を正確に定義するのは難しいと思いますので、いろいろなキーワードを並べて後藤先生に解説して頂いたという次第です。したがって、ここでは伝建地区などではない、普通に生活している町並みを取り上げています。
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