司会(鳴海邦碩):
今回は「ランドスケープの現在」というテーマで、お二人の講師にお越しいただきました。まずは近代ランドスケープデザインから日本的なるものを検証するというタイトルで小林政彦さんにお話しいただきます。
小林和子さんには、ランドスケープデザイナーの実践という観点から住民参加による公園づくりについてご報告いただきます。
お二人のプレゼンテーションの後、みなさまと意見交換をしたいと考えています。よろしくお願いします。
小林:
私は約20年間ほどランドスケープデザインの仕事をやってまいりました。それまでは別の会社で開発計画や開発設計、リゾート開発のプランニングをしていたのですが、平成元年に今の会社に入り、ランドスケープのプランニング、主にはデザインを中心に仕事をしてきました。
今日はどんなテーマにしようかと考えていたのですが、テーマである「近代ランドスケープデザイン〜日本的なるものの検証」は、まとめると大変なことになりそうです。ご紹介するスライドも整理していると170枚になりました。これを短時間で理路整然と話すのはなかなか難しいと思いまして、今日は写真を楽しんでいただくという形でお話しさせて頂きたいと思います。
モダンデザインの世界をずっと走ってきたのですが、どうしても日本という切り口が現れてくることについて、ちゃんと整理しておきたいと最近ずっと考えています。そうした思いから今回のテーマを考えました。
「A。自然がもたらすもの」「B。風景の造景作法」「C。精神性から見た特質」の三つです。
Bは「空間の造景作法」という言葉でよく使われていますが、つなぐ、透ける、隔てる、道行き、生けどる、見立てる、くずす・ずらす、間を置くといった空間的な作法のことです。
Cは、一つには日本的な特質という点から、わび、さび。二つ目には繊細さ。3つ目には粋(いき)という江戸の町民文化から生まれた美意識です。この3つを精神性から見た特質としてあげました。
はじめに
■近代ランドスケープデザインの3つのポイント
今日のテーマに即して考えると、大きく3つのポイントがあろうかと思います。(1)場所性
今まで20年間仕事をしてきましたが、アメリカ、ヨーロッパのデザインも含めて、もっぱらモダニズムデザインをパブリックスペースや住宅の中庭などに施してきたと思います。しかし、なぜかいつも気になるのは、日本的な空間や空間における作法みたいなものでした。そうしたものを知らず知らずのうちに設計の中に描いていることがありました。やはり、我われが日本のある場所でデザインしようとすれば、その場所の持っている特性が自然に形に出てこざるを得ないのではないかと考えるようになりました。逆に言うと、日本的なるものから逃げられないということです。(2)小川治兵衛以降
江戸時代までは日本庭園の文化が花開いていたのですが、京都で南禅寺界隈のお庭を多数作られた小川治兵衛以降、モダニズムデザインが入ってくる中で、伝統的な日本庭園の作法がどのように発展していったかの系譜が、どうも見えてこないのです。日本庭園に関するいろんな本を読んでみても、その系譜についてのまとまった本はないようです。戦後からも半世紀以上も経っているのですが、そろそろそうした整理をしていかないといけない時期じゃないかと私は思っています。(3)海外のプロジェクトを通じて
最近、中国、韓国、シンガポール、インドなどアジア圏の仕事をしていく中で、日本での設計デザインの仕事が客観的に見えてくるようになりました。例えば中国なら中国なりの文化、設計作法があります。同じアジアと言っても、日本とは全然違うものなのです。ところが我われが中国で仕事をすると、どうしても日本的な要素が出てくるのです。それは一体なんだろうということを最近、特に感じています。
■「日本的なるもの」の風景構成要素
今回は、3つのテーマで風景の構成要素を考えてみました。
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