ランドスケープ・デザインの現在
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事例(3) 大阪市北大江の公園づくり

 

■公園づくりに取り組むまでの経緯

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北大江のまちづくり構想
 
 三つ目の事例は、大阪市北大江のまちづくりと連携した街区公園のワークショップです。北大江まちづくり実行委員会を組織母体にして、ここと連携しながら活動を進めていきました。

 この北大江地区は、大阪城があり、北に大川、八軒屋浜もあって歴史的な地区であるはずなんですが、いろいろと問題を抱えている地区でもありました。まちづくり活動は10年前からされているとのことですが、当時は歴史的な雰囲気が感じられない町だったそうです。町なかは違法駐車や違法駐輪があふれ、ゴミの問題にも地域が悩まされていました。

 住んでいる人は3千人ぐらいですが、ここに仕事で来られる方は8千人ぐらいいます。府庁にお勤めの方は、朝天満橋駅を降りて府庁に直行、終わればまた駅に直行という行動パターンで、町と全然関わりのない人がほとんどです。そういう環境でした。

 ここで、約10年前から、大阪市のまちづくり支援制度を受けて、まちづくりアドバイザーが入り、住民の方の活動が始まりました。

 その中で公園の位置づけは、まちづくり活動の中心です。「北大江の良いところ」「何とかしたいところ」を明らかにしていこうという活動が始まって、市長との座談会で「みんなのわくわく公園づくり」をやってくれと直接頼んだのだそうです。

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みんなのわくわく公園づくり
 
 この「みんなのわくわく公園づくり」事業は大阪市が平成10年からスタートさせた事業で、平成20年現在で41公園が実施されていて、それなりに面白いものが出来ています。全ての区で実施されています。私たちでもそのうちの7公園をお手伝いさせていただきました。

 街区公園を地域のみなさんとワークショップ方式で進めていくのが、この事業のポイントです。


■みんなのわくわく公園づくり

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公園はまちづくりの拠点
 
 北大江の敷地はL型の敷地で、改修前は各エリアに細かく分かれていました。全体的に雑然としていることと、町とのつながりがないことが、改善しないといけないポイントでした。

 本当は、魅力のある要素が2つありました。一つは東西に延びる「島町通り」です。ここには見事な街路樹があって、その先に大阪城があります。ところがこの道と公園がまったくつながってなくて、低いコンクリートブロックで仕切られていて、そこに犬のおしっこをかけたりゴミが散乱したりと、最悪の道でした。

 もう一つは、南北軸にある石階段です。この石階段は八軒屋浜につながる石階段で、歴史的な謂れもあり、大勢の人が利用しています。しかしながら、ここもペンキで落書きされるなど雰囲気の悪い場所になっていました。

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計画するワークショップ
 
 この公園では、2つの側面から参加のプログラムを進めていきました。一つは「計画するワークショップ」をこの事業でやっていくことです。

 計画のポイントは、しままち通り、大阪城に通じる道をどうするかということです。今は街路樹が大きく育って、秋には紅葉の素晴らしい風景を見せてくれる反面、歩道が狭くなって歩きにくい道になっているのです。ですから、公園を仕切っているブロック塀を取っ払って公園と一体化した道を作るという目標がまずありました。

 それと、八軒屋浜につながる中央動線をもっと魅力的な空間にするという目標もありました。

 最後に、大きく構造を変えなければいけない箇所が、公園の半分を占める芝生広場です。改修前はかなり雑然とした空間だったのを、のびやかな芝生広場にするという計画です。半分のエリアはあまり手を入れないで、半分をのびやかな空間にしていこうと立案いたしました。

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体験するワークショップ
 
 一方で、この地域の特性として就業者人口が非常に多いエリアだということがあります。ここに住んでいる人はワークショップにもしっかり参加してもらっているのですが、大多数を占める通勤している人や学生さんは、この公園の活動に参加する時間がないのですね。それで、彼らがお昼休みにでも気軽に参加できるようなワークショップを番外編という形でやらせていただきました。

 まずは、「この木何の木、気になる木」と題して樹木の人気投票を行って、残したい木、剪定しないといけない木を選び出しました。やはり桜が人気で、それぞれがいろんな思い出をお持ちだということが分かりました。

 また、樹木の観察会を催しました。これは、お昼休みにお弁当を食べる合間に参加してもらおうと企画しました。この企画が意外と人気で、樹木のことを知りたいと思っている人は多いのです。講師は大阪市のグリーンコーディネーターにお願いしました。大阪市は毎年24人のグリーンコーディネーターを養成しているのですが、養成後にどうやって彼らにコンタクトできるのか、どんな活動をしているのかが不明快で、それが地域でも話題になっていました。そこで、その方に連絡を取ってワークショップの講師になっていただいたという経緯です。

 三つ目は、ちょうどワークショップをやっている時期に、近くの大きな邸宅がマンション化されることが分かって、そのお宅の庭に咲いているしだれ梅を公園に移植することにしました。道路からも塀越しにその見事な枝と花が見えて、地域の花としても有名だったのです。マンションにしてお庭もつぶしてしまうのなら、そうした立派な樹木をもらおうということで、持ち主の方もそう望んでおられるということで、公園への移植会を催しました。


■公園ができてから

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その後の北大江
 
 公園が出来、それがまちづくりにどのようにつながっていったかという事なんですが、まちづくり委員会では公園をまちづくりの拠点として捉えていらっしゃいますので、いろんなイベントが公園の中で展開されていきました。

 一つは、大阪国際女子マラソンの時期に行われる「あったか北大江まち祭り」です。公園のすぐ北側がマラソンコースになっていますので、そこで応援しながら公園でも楽しもうという内容です。公園カフェを出したり、大阪市のマスコットキャラクターが来てくれたりしました。この公園カフェは公園始まって以来の人出で賑わったそうです。

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その後の北大江
 
 その他、北大江講談「ご近所物語」をしてもらったり、ルコウ草を公園で育てようと種を蒔いたり、「都心再生ワークショップ」など、まちづくり系のワークショップの拠点にも使われています。

 また、3年前から「北大江たそがれコンサート」が開かれています。これがきっかけになって、近隣のお店でもコンサートが開かれるようになって、コンサートウイークと称されるようにもなっています。公園を中心に、音楽のつながり、そしてまちづくりへと活動が広がっているところです。

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