良好な住環境の設計ガイドライン |
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まちなみ景観評価を作りましたので、それとCASBEE−すまい(戸建て)の評価項目を分析して、その中でガイドラインを作りました。 このガイドラインの項目は、(1)環境に配慮した美しいまちなみ、(2)まちなみに配慮した住宅、(3)まちなみに配慮した外構、(4)まちなみに配慮した緑、(5)防犯・安全性への配慮、(6)住まいや外構の育生管理という6項目でまとめています。 また、プレハブ住宅では実現が難しい要素でも、まちなみ景観を考える上では重要な項目を「コラム」という形でまとめています。「自然環境への配慮」という項目は、まちなみ景観には特に影響はないけれども、自然環境を考える上では重要な項目としてまとめました。
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これらのものを年1回開催される「プレハブ住宅コーディネーター更新講習会」(毎年800人ぐらいが更新されます)で、お話しさせていただいております。そういう啓発活動をおこなっております。
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「屋根形状や壁面の位置など、建物に一定のルールを定めた家並み、周囲との連続性や統一感のある外構・植栽、手入れの行き届いた緑地や生垣・地域特有の歴史や文化が残されているまちなみなど」。 ここでは、その代表的な写真を紹介します。
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「周辺の山や海への眺望など周辺の自然環境をまちなみに取り込む、現況の地形や立地特性に配慮し、切り土・盛り土・擁壁を少なくする等、既存の地形に配慮した造成計画を行う」。 右の写真は、ミサワホームが手がけた有名なオーナーズヒルズ百合ヶ丘(川崎市)です。切り土を少なくして曲線状に道路を取り付けた例です。 左は、積水ハウスの分譲地(グリーンランド柄山・各務原市)ですが、道路の突き当たりのアイストップとして山があるという形で造成を行なっています。
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「地域に根付いている住文化を継承する取り組みをする、地域で産出される資源を積極的に活用する」。 写真はパナホームが手がけた鎌倉市の住宅です。ここでは地域で産出される鎌倉石を使った地域の景観を考えた事例です。
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「街路樹やオープンスペースの維持管理、時と共に風合いが増す自然素材を使用」。 事例では阪南市の阪南スカイタウン、京都市の桂坂の道路の景観を上げています。
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「車のスピードを制御し、歩行者の安全を確保することが重要。そのための手法として、歩道付きの幹線道路、準幹線道路、街区道路と段階的に計画する。ループ道路・クルドサック等の街路パターンの導入、ボンエルフ・フォルト・イメージハンプなどの導入」。 ♂事例ではつくばみらい市・みらい平陽光台と三田市・ウッディタウンをあげています。
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「魅力的な公園・緑道・フットパス・コモンスペースの設置。まちの入口のゲート空間の設え。コモンスペースや緑道にベンチを設置することにより、コミュニティと休息の場を提供」。 事例としてあげたのは、積水ハウスの交野市・コモンシティ星田にある「せせらぎのある緑道」と三田市・アルカディア21の中央にある住民共有の公園です。
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「前面道路と宅地の間の高低差や歩道と車道の段差をなくす。通路の勾配をできるだけ緩やかにする。点字ブロックを設置する」。
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「豊かな街路景観を演出するための石材、レンガ、タイル、インターブロッキング等の活用」。 道路面をアスファルトだけで作るのではなく、こういう工夫をしていくことも街路景観の演出のためには重要と思います。
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「電線やケーブル類の地中化や宅地の背割り部分に建柱」。 この工夫が景観のためには一番重要だと思うのですが、費用対効果の問題でなかなか実現できないこともると思います。事例は、大和ハウス狛江市・EDDI+STOWNです。
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「既存の自然資源を保全し、継承するなどの配慮」。 事例はミサワホームの宮崎台(川崎市)での既存樹木を残した取り組みを上げました。
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言うまでもなくまちなみは、1軒1軒の住宅が集まって出来るものですから、住宅のガイドラインも提案しています。
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「住宅の配置は、周辺のまちなみや景観の調和のために道路から後退。広がりのある魅力的な道路空間をつくる」。
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「建物の屋根形状の工夫、適切な隣棟間隔の確保による隣地への日照や通風の配慮。隣地へのプライバシー確保のため、隣家との窓の位置を調整」。
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「サービスヤード・屋外設置機器は街路からの見え方に配慮が必要」。 写真は伝建地区の例なのですが、このようにクーラーの室外機を格子で隠すなどの配慮も必要だと思います。
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「角地やアイストップとなる場所の住宅は、まちなみを特徴的に演出する。周囲の景観と調和させるだけでなく、効果的にデザインする」。 景観上、重要なのが角地やアイストップにある住宅ですから、そこはしっかり設計する必要があります。
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「隣り合う建物の形態や色彩、素材に連続性や統一感を持たせる。外壁デザインは、総2階の単調なファサードとならないよう豊かな表情を作る。屋根については、軒高や勾配、仕上げ材を揃える。色彩は、まちなみに不調和となりがちな彩度の高い色彩の使用を避ける」。 左上は屋根形状を入母屋で統一した例で、上から見るときれいな景観になっています。右上は、道路に対して妻面を見せる手法です。また、左下は色調を合わせた事例で、白い色と太格子でバリエーションを付けたまちなみです。右下は、外壁の色彩を統一した例です。色がまったく同じというわけではなく、トーンを一緒に揃えた事例です。
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「開口部の形状・大きさ・種類及びその配置をよく検討し、整然としたデザインとする。道路から見える勝手口ドア、水回りの窓などについてもまちなみへの配慮が必要」。 あまり重要視されない勝手口なども、右の写真のようにちょっとした目隠しをすることでまちなみへの配慮が感じられます。
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「緑視率を高め、緑豊かなまちなみをつくると共に、建物の熱負荷を抑える。壁面緑化には、日射の調節、風の調節、空気質の調節などの効果。緑のカーテンなどにより、楽しみながら日射を遮る工夫によりCO2を削減」。 事例では、屋上緑化とグリーンウォールを上げています。
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こういうことは、実はプレハブ住宅ではなかなか実現が難しいことなのですが、地域の資源の活用は今後取り組んでいくべき重要な要素だと思います。 事例としてあげているのは、右が当社施工のものですが、京都の景観条例に対応した住宅です。ただ、他のプレハブメーカーでは対応が難しいようで、市場としてはとても厳しい状況のようです。
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「地域で産出される木材を積極的に導入することにより、地域の山林環境を再生。プレハブ住宅では実現が難しいが、地域の資源の活用としては重要な要素」。 左の写真は、兵庫県の住宅ですので兵庫県産の木材を使用しています。右の写真は富山の物件で、地域の木材、地域のデザインを継承した住宅です。
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住宅もそうですが、目に入る景観として外構という要素も重要です。ここでは、建物と外構を調和させるガイドラインを提案してみました。
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「門廻りやアプローチなどは、建物やまちなみとの調和を図る。アクセントをつけて通りに表情を与えるようにデザインする」。 事例の写真は、建物のアクセント壁と同じ色彩の外構をつくる事で、全体として調和したデザインとなります。
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「まちなみに配慮した美しいデザインの門廻りは、連続するまちなみのアクセント。自然素材の門柱や素材感のある門扉などを採用」。 門廻りのデザインもまちなみを考える上で重要な要素です。
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「まち(パブリック)と住宅(プライベート)をつなぐアプローチは「公」から「私」へ意識を転換するための重要な空間である。季節の草花で飾ることにより、「家」の格を印象づける大切な空間として演出」。
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「出入口の設計に配慮し、歩行者や交通車輌の安全を考えて設計。地域性を考慮した必要な駐車台数を確保」。 駐車スペースはけっこう敷地面積を取るもので、地方に行けば2〜3台必要になってくることもあります。そういう時もちゃんと駐車台数を満たさないと、多くの車が路上駐車になってしまいます。
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「アプローチや駐車スペースの床仕上げの工夫により、まちなみ景観は向上。保水性や透水性の高い床仕上げにより、雨水を地下に通すと共に、日中の地表面の温度上昇を抑制」。
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「門廻りや土留めには、自然石やレンガ・タイル等の自然素材を活用することによって、年月の経過と共に味わいの増すまちなみを創る。地域で古くから親しまれている材料を活用することにより、地域の景観に調和させる」。 左の写真は、地域の石材を土留めとして採用した桜ヶ丘の住宅です。右側は、地域の名産である備前焼を門柱のデザインとして採用した例です。
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「道路面の高低差の大きい無機質なRCの擁壁や土留めは、まちなみに圧迫感を与えてしまう。擁壁面を道路境界から後退させて、その足元を緑化」。
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「門灯やアプローチは、夜のまちなみを美しく演出する。門灯の光源は、夜のまちなみの演出として暖かい光の白熱灯色蛍光灯や消費電力の少ないLED照明が有効」。
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「外構資材には、リサイクル材や再生可能な材料を使用することにより省資源に貢献。保水性や透水性の材料の採用により、雨水を地下に通すとともに日中の地表面の温度上昇を抑制」。 直接景観には関係してきませんが、エコロジーの観点からリサイクル部材の利用も進んできています。各建材メーカーさんが出しているコンクリート製品もほとんどリサイクル製品ですから、そういうものを活用しています。写真の砂利のようにリサイクル製品を扱っていくこともこれから重要な要素になってくると思います。
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「CASBEE−すまい(戸建て)では、Q3.4地域の資源の活用と住文化の継承において、積極的な取り組みが推奨されている。地域固有の生垣のつくりや石積の工法、門構え等のデザインを取り入れる。既存の庭園や樹木の保全・活用によって、まちの歴史の一部を継承するとともに地域景観に馴染んだまちなみとする」。 左側の写真は、大和ハウスが手がけた越ヶ谷のレイクタウン越ヶ谷ですが、ここは風がきつい地域なので軒高ぐらいまで樫の木を植えて高垣を作っています。これは地域のデザインを継承するために作られたものです。(後の管理が…→無) 右は、地域を象徴する庭園の保全という観点から作られたものです。
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ここでは、まちなみを豊かな景観にしていくためには緑化が有効という視点からそのガイドラインを提案しています。
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「通りに面する空間は、パブリックな領域と捉えて、まちなみとの関係に配慮。生垣や塀の足元に植栽を植えるなどの工夫により緑豊かな街路空間をつくる」。
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「連続したシンボルツリーは、まちなみに街路樹のような景観をつくる。通りごとにテーマを設けた樹種の選定や季節ごとの花のコーディネートは、まちなみに個性的な魅力を創造」。 宅地に植栽する場合も、できるだけ道路際に木を植えると景観上効果的です。
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「積極的に緑化することにより、駐車車両がないときは、まちのグリーンスポットになる」。 緑化ブロックの舗装や、カーポート屋根の植栽などを事例としてあげました。緑化ブロックも見た目は綺麗なのですが、下地の施工をうまくしないと不陸(ふりく)を起こすリスクもあるので、そういうこともきちんと説明して取り入れる必要があります。
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「敷地と道路に高低差のある場合には、擁壁や土留めを道路境界より後退させて低木を施す(2段植栽)。法面として低木や地被類緑化する法面緑化等で、緑を主体としたまちなみを創る」。 法面の緑化を行うことによって、擁壁の圧迫感を抑制できればいいと思います。法面活用は敷地がけっこう広くないとできない手法ですが、景観上有効な手法なのであげています。
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「道路に立った人の視界に入るまちなみや敷地の緑の面積割合を緑視率にする。前面道路の緑視率はまちなみの印象を大きく左右する要素。生垣や高さのある樹木を組み合わせて、積極的な緑化を図る」。
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「敷地面積から建物部分を差し引いた外構面積に対する緑化面積の割合を「緑化面積率」と呼ぶ。敷地内を積極的に緑化をすることにより、地表面温度の上昇を抑える」。 「樹齢を重ね地域に親しまれている樹木や植栽を積極的に保存。地域の気候・風土に適した郷土種や自生種を取り入れ、地域環境の保全を図る」。 景観上は「緑視率」を採用していますが、全体のCO2削減を考えるとまちなみ全体の緑被率(緑化面積)を考えることが重要だと思います。また、見た目は同じ緑でも、地域に親しまれている郷土の緑を取り入れ、地域環境の保全を考える事が重要です。
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「緑の連続によりさまざまな生物が移動。多種多様な植栽は、花の蜜や実などを餌とする様々な生き物の生息を促す。緑、緑道の緑などがつながる緑のネットワークづくりが必要」。 「様々な植栽を組み合わせることによって、生物の餌場や住処・隠れ場を確保。小さな水場は生き物の生息環境にとって重要な役割」。 「隠れ場となる多孔質空間の確保する」「生物の移動経路を確保した高木と生垣による連続した緑を作る」ことで生物が移動できる空間を作った事例です。
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ここでは、安全・安心のためのガイドラインを提案しています。
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「道路からの見通しで、人の隠れる場所を作らない。バルコニーに登りあがるための足がかりとなる位置に、高木や物置を配置しない等、住居へ侵入されにくい設計に配慮」。 これは、設計段階での工夫です。
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「玄関や窓など形状や仕様に、CP部品を使用するなど、侵入されにくい工夫が必要。道路面に居室の開口部があると人の気配が感じられ防犯の効果」。 道路に対して窓がたくさんあれば、どうしても人の気配がしますから、これも防犯に役立てることができます。
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「植栽によるプライバシーの調整は、他の住戸からの視線や道路からの視線をコントロールするのに有効。中高木の適切な配置により、人の気配や視認性を確保することも防犯面で重要」。 ブロック塀のようなあまり固く家を閉じる方法ではなく、植栽によってある程度外構をオープンにすることによって道路からの視線をコントロールしようとする手法です。
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「夜間の安全のために防犯の役割を兼ねる門灯を配置。門灯の光源は、消費電力の少ないLED照明が有効。勝手口など視覚の陰になる部分での人感センサー付きの照明や防犯カメラの設置」。
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「住宅の周囲の砂利敷きは、その上を歩けば音がするので防犯対策に有効。降雨時には建物基礎への泥は根による汚れを防ぐ効果」。
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「敷地と道路に高低差がある場合は、スロープや階段手すりの設置。階段の段差が確認できるよう足元に照明器具を設置する事も安全面で有効」。
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今まで述べた中で、この項目が一番重要だと思われます。
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「地区計画、建築協定、緑地協定などの制度の活用。住民の申し合わせによる自主的なまちづくりルールによりまちなみを保全」。 事例としてあげているのは、共有して持っている緑地を共同で管理しているものです。
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「魅力あるまちなみを育てるには、それぞれの敷地だけではなく、地域の人が利用するコモンスペースやフットパス等を共同で清掃や植栽の管理を行う取り組みが必要」。
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「道路に面する植込やアプローチまわりを季節の草花で飾り、居住者だけではなく歩行者にとっても心地よい設えを工夫」。 写真であげたように、きれいなまちなみは心地よいだけでなく、侵入者が入りにくいという防犯にも役に立ちます。
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「外壁・屋根の塗り替えなどのメンテナンスは、まちなみ景観にとって重要な要素。外壁の塗り替えでは周囲のまちなみと調和させた色を選択」。 この写真は建てられてから二十数年たっている宅地ですが、塗り替えの際も色調も廻りと合わせるようにされています。
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「植栽の定期的なメンテナンスは、まちなみ景観を保ち、育てる。生垣の剪定や清掃などは、まちぐるみで実施することにより、緑豊かなまちなみを継続して一体的に維持することが可能」。 この「まちぐるみで実施」というのは実際の実現は難しいのですが、費用的には安くなることもあり、まちなみ全体が一体的にきれいになることもあって推進していきたいところです。
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これらのガイドラインをこのように一覧表に載せております。
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