ハウスメーカーのつくる住まいの風景
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プレハブ住宅のイメージ

 

 今、山中さんがお話しされたように、私もプレハブ住宅景観ステップアップ事業に参加して1年間研究会に行っていました。

 テーマにあげた「ハウスメーカーがつくる風景」の中には、ひとつにはハウスメーカーが供給される住宅でどのようなまちをつくるのかという問題と、それが他の工務店などにどういう影響を及ぼし、家を作る場で何を生み出しているのかという問題があると思います。これは鳴海先生が震災復興の調査の時の印象を先ほど語られたように、私自身も一緒に調査しながら感じたところです。

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住まいがまちをつくる ストックに占める共同住宅の割合が上昇している
 
 多くのまちなみの中で建築ストックの8割が住宅ですから、住まいが日本のまちなみ風景の大部分を作っているわけです(左の図)。その中で戸数が増えてきているのが、マンションなどの共同建てで、戸建ての割合は相対的に減ってきています(右の図)。

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新築住宅の購入による取得の割合が増加。新築、新築購入、建て替えが同程度になってきた 新設住宅着工戸数、戸建て住宅におけるプレハブ住宅の割合は15%以下
 
 新築住宅の「購入」による取得の割合は増加し、新築、新築購入・建て替えが同程度になってきています(左の図)。

 つまり、昔は新築の住宅を買うということは少なかったのですが、段々「建っているものを買う」という取得の仕方が増えてきたのです。住宅に対して、「どう家を作るか」ではなく「家を買う」という感覚になってきているのです。

 そうした人々の感覚の変化の中でプレハブ住宅の割合は、実は増えているようであんまり増えていないのです(右の図)。

 阪神淡路大震災後にプレハブが増えたような気がしたのですが、それでも割合で見るとずっと15%前後を推移しています。しかし、世の中全体の感覚としては「今までとは違う家が建ってきている」というのがありました。

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着工数に占める割合は小さいが、プレハブ風の町並みを生み出す影響力がある
 
 この印象については、鳴海先生もご指摘されていましたが、使われる建材が変化してきたことが大きいと思います。こうした工場生産による材料が普及していく中で、一般には「工場製品=ハウスメーカー」というイメージがあって、プレハブ的な家が増えたという印象につながったのでしょう。

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震災後に建った住宅(芦屋):プレハブ、在来工法、ツーバイフォーが混在している
 
 この写真は、震災後に芦屋の風景がどう変わったかを調べたときのものです。これらの家は「プレハブ風」と呼んでいます。というのも、学生が調査したとき、これらの家がハウスメーカーが建てたのか工務店が建てたのかが分からないのですね。しかも、震災後は敷地いっぱいに家を建てることが多くなり、こうした箱形のデザインの家が増えたのです。

 こうした「プレハブ風」を特徴づけている住宅の特徴が、壁面の材料と形(箱形で寄せ棟)だったのです。箱形+寄せ棟はどこの敷地にでも入るそうで(ハウスメーカーさんに教えていただきました)、震災バージョンとでも言うべき家が増えることになりました。あの時点で住戸数を確保するには、ハウスメーカーの役割は大きく、工業製品の建材による家づくりは必要だったと思います。家が建つまで、随分多くの人がブルーシートを張って家の材料が揃うのを待っていた時期です。壁面がサイディングボードであること、屋根の軒の出が浅いこと、窓のサッシがぺたっと貼り付けたように見えること、この三つがプレハブ風住宅の三大特徴だったように思います。

 実は、これらの写真の家はプレハブだけでなく、在来工法もあればツーバイフォーもあります。いろいろあるのに、ほとんどその区別がつかないという風景が普通のまちなみの中に広がりました。その中では、プレハブの影響力が大きいと感じました。

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豊中の住宅地
 
 これは豊中に建つ住宅地です。ここもいろんな工法で建てられています。しかし見た目は、今紹介した震災後の芦屋の家とほとんど変わらない光景が広がっています。色彩ひとつをとっても、どこもみな同じになっているのがプレハブの影響ではないかと思っています。

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ミニ開発
 
 これは、プレハブ住宅とは全然関係ないミニ開発です。しかし、多くの人にとってはこれもプレハブ住宅と一緒の文脈の中で見てしまいます。写真は、京都・大阪・神戸の例なんですが、どれがどこだか分からないでしょう?
 プレハブ住宅をつくるとどこも一緒の街、どこでも同じ風景になってしまうというのが、みんなが気になっているところではないでしょうか。

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