ハウスメーカーのつくる住まいの風景
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ハウスメーカーの商品における地域性

 

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積水ハウスの京都版「GORAKU」
 
 この分野については私も得意ではありませんが、いろいろお話を聞いていると、地域固有の商品開発では、寒冷地仕様のようにはっきりと地域性がある場合や、京都仕様(写真)のように特定の条件がある土地では、いえるということです。京都仕様を作っているメーカーさんはいくつかあるのですが、これはおそらく条例で決められている軒の出への対応がひとつの要因ではないかと思います。

 また、外構による修景で地域性を出すこともあります。これは開発団地での外構デザインの例が山中さんのお話の中にも出てきていました。

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地域性を作る外構デザイン
 
 写真の開発団地も山中さんと一緒に歩いてみました。左上は最近の新しい開発で、右下は古い開発例です。私は右下の団地を歩いてみて、古い石積の連続や緑に隠れる住宅をけっこういいと思ったんですが、不思議なことに当の作られたメーカーさんの評価はそんなに高くなかったりするんです。それは街の評価ではなく建物のことだったのかもしれないのですが、私は外構のデザインで連続性を作っていくことで町並みが作られていると思います。

 しかしこうした開発団地ではなく、既成市街地で一軒ずつを建て替えていく場合は町並みとの調整が難しくなりますよね。正直言うと、現状はできているとは言い難い状況です。だからと言って、これはハウスメーカーの住宅だけができないと言っているわけではありません。日本中で出来てないと言っていいと思うんです。マンションもそうですし、戸建てもそうですし、既成市街地で新しい住宅がそれまでの町並みとおり合いづらいのはどこでも一緒だと思います。それは、ハウスメーカの住宅が持っている問題もあるし、共同住宅が持っている問題もあるし、戸建ての建て替え時に起きることとか、それぞれ問題は違っています。そうした中で考えていかなくてはならない問題だと思います。

 ただ、ひとつ言えるのは、建材と技術がデザインをどう変えていくかと考えた時、これまでは地域の材料と地域の技術でやっていたから継承できていたものが、変わらざるを得ないということもあろうかと思います。しかし、いかに地域らしさをつくってきた知恵や意味を継承していくかというところから考えていくこともできると思うんです。それを一生懸命やっていこうとしたのがHOPE事業だったと思います。これは地域の大工さんがどんどん減っていく中で、地域の家づくりを支えていこうとする事業でしたし、そうしたことがハウスメーカーの生産システムで可能かが問われたことでもあったと思います。

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新しい材料・建て方による地域性の継承
 
 これは間垣です。風の強い能登の海岸地域では、集落全体を囲うというデザインがあります。能登の地震の後、仮設住宅には木製の間垣がつくられていました。それを見たときには、神戸の地震の時とは随分違うなと思いました。暮らしの中で見なれていた風景、ここで言うと風の強い中での家の構え方というものが引き継がれていくことが大事なのだという例です。

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HOPE事業 地域性を活かす住宅開発
 
 上の写真は新しい公営住宅です。下は、集落のあちこちで見られる住宅です。昔からのデザインを新しい住宅にも反映させていくことをHOPE事業でやっています。もちろん内部のデザインは昔の住宅どおりではなく、若年層の定住のために近代的なものになっています。しかし、外観デザインは昔からの形を継承して地域のまちなみに合わせるという工夫をされているのです。

 確かに今までは、地形や風土によって地域ごとの住まいのかたちがありました。土の色によって瓦や壁の色が違ってきましたし、その土地でとれる石もそれぞれあって玄武岩の黒、御影石のピンクなどがありました。また、使われる木の種類も杉や檜があったり、葺き材も草、板、茅、瓦と様ざまでしたし、塗装の色もべんがらの色、柿渋の色などがありました。植生や大工さんの技術もその土地土地で様ざまでしたし、そうした地域ごとの特色で地域の住まいの形が特徴づけられてきました。

 しかし、それをそのまま引き継いでいくことは、今の世の中ではできなくなりつつあります。長い目で見ると、住まいは歴史の中でどんどん洗練されてきていますし、新しい技術や新しい材料を使って新しい暮らし方を生み出してきたわけですから、これからも新しい住まい方を提案していくことが重要になってくると思います。では工業化や新しい技術の中でどうやったら、これまでの地域らしさを継承しつつ、新しい地域性を生み出していけるのか。これが、ハウスメーカーとして考えなければならないことだと思います。

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