ハウスメーカーのつくる住まいの風景
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ハウスメーカーによる景観づくり

 

 景観づくりは大きく分けて三つの型があると思います。すなわち、開発団地型、既成市街地建て替え型、すまい提案型の三つです。開発団地型は全体を計画して良い環境全体をデザインするタイプ、既成市街地建て替え型は既成市街地の中でおり合いながら建て替えをしていくタイプ、住まい提案型はこれからの新しい住まいを提案する中で商品開発をしていくタイプです。これらがまち、あるいは地域とどう関わっていくのかということが、今年の研究会のテーマではないかと思っています。

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(1)開発団地型 郊外の良好な住宅地景観の形成
 
 これはメーカーさんの「いいものを作りたい」という熱意から、緑豊かな住環境を目ざした開発例だと思います。緑が生み出す住宅地の質や価値を十分に分かって計画されていると思います。特に建て売りの場合は、建物・外構も含めて全体をコーディネートされるので、良好な景観が形成されるようです。

 写真は南芦屋浜で、引き継ぐべきまちなみの文脈がない所ですら全体をつくっていくときには、それなりの風景が出来上がっていくと思われます。

 ただ、その隣の分譲地ではかなりバラバラになってきているようで、できるだけ外構を揃えて欲しいと言っているのですが、すでに屋根のかけ方や建物の色、壁面の状態がバラバラになっているようです。

 つまり、似たような住宅地が隣り合わせているのに、実際の風景は随分違っているという現実があります。

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(2)既成市街地建て替え型 既成市街地や地域のコンテクストのなかで
 
 一方、まちなみの文脈を持っている既成市街地の中での建て替えの場合は、立地環境とどのようにつき合っていくのかという課題を突きつけられます。これまで、メーカーのみなさんはどういう敷地の読み方をしてきたのか、廻りの環境の読み方について議論してみたいと思うところです。

 今の日本の確認申請では敷地を見るだけで、誰も周辺を描く図面を要求しません。たぶん景観協議でもけっこう厳しい協議をしていても、設計者の認識として廻りとの関係を描いた設計図やパースを出してこられる人はありません。だから、既成市街地の中の建て替えで風景を作っていくことは、必ずしもハウスメーカーだけの問題ではないのですが、少なくとも隣と合わせた図面や見える範囲での家の風景を描くぐらいの認識をつくり手が持たないと町なみづくりは難しいと思うのです。

 ただ、そうした日本の設計者が持つ共通の課題の他に、ハウスメーカーとしての課題もあります。それはやはり、生産システム上の問題です。建材が工場生産されていること(どこでも同じであることが良い品質)、どこでも同じカタログ(商品から選ぶ、限定的)、外構の未整備(外構整備が契約に入らない・敷地全体の計画は誰がするのか)などは、ハウスメーカー固有の課題ではないかと考えます。

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(2)既成市街地建て替え型 既成市街地や地域のコンテクストのなかで
 
 建材の問題で言うと、サイディングは質的に均質で、何年経っても質がよくならない(経年美化がない)。サイディングの長所と言われるメンテナンスフリーはもう言わない方が良いと思っております。というのもメンテナンスフリーが住宅の価値になっているかぎりは、住まいを育てていくという発想にならないので、そろそろやめていただきたい価値観です。また、開口部とサッシがなかなかの難問でして、大部良くなったという話も聞きますが、閉鎖性の高いシャッター付きの開口部や壁面に貼りつけたようになるサッシはどうしても気になるところです(写真)。

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(2)既成市街地建て替え型 既成市街地や地域のコンテクストのなかで
 
 そして、上の写真のように、田園地帯の集落に建つ場合、敷地が広いがために外構をつくらなくても建物だけをポンと置くように建ててしまえるところが問題です。こうした田園風景の中に家をつくる場合、どういうことを考えないといけないかを、作り手だけでなく住まう人自身にも考えてもらうことが大事で、そのためにつくり手が語っていくことが重要ではないかと思うのです。

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(2)既成市街地建て替え型 既成市街地や地域のコンテクストのなかで
 
 上の左の写真は反対に、町なかに登場した新しい建物です。田園地帯だけでなく、町なかでも風景を壊すような突出した建物ばかりが増えています。これはハウスメーカーだけの問題ではないのですが、家を作るということはどういうことか、風景をつなぐということをもうちょっと考えていくべきでしょう。道や緑、外構でつなぐという方法もありますし、建物のボリュームや配置でバランスをとる方法もあるし、地形に沿っていく、地域資源を使うなどいろんな手がかりはあるはずです。しかし、そういうやり方がハウスメーカーの生産システムの中で可能かどうかが問われてくると思います。

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