生物多様性をめざすまちづくり
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6 他にもさまざまな取り組みが

 

 コミュニティガーデン以外にも以下のような様々な取り組みがあります。

     
     ・生物多様性を育む戦略。
     ・公園緑地のマネジメントプラン。
     ・生物多様性を育む戦略。
     ・国立公園や市立公園のマネジメント。
     ・自然と歴史を守るガイドライン。
     ・環境裁判所とは。
     ・環境立国の基盤。
 

■公園マネジメントプランは法律で決められている

 特にご紹介したいのは、公園緑地のマネジメントプランです。ニュージーランドでは国立公園、州立公園、市立公園、郡立公園と4つの種類の公園がありますが、全て公有地です。日本のように、都市公園等の造営物公園や国立公園等の地域性公園等に分類されていません。

 しかも国立公園は14箇所ですが、オークランドの市立公園は600箇所もあります。そして全ての公園にマネジメントプランを作るべしと法律で決められているのです。そのマネジメントプランを作るプロセスも細かく規定されていて、例えば国立公園でしたら2年がかりで地元でワークショップをしたり、地域社会とやりとりを経てマネジメントプランを作らないといけません。しかも、それは10年ごとに作り直すのです。ですから、2年かけて作って、しばらくしたらまた新たに作り始めるという仕組みなのです。

 オークランドではまだ百しか出来てないそうです。ですから都市計画系のコンサルタント、造園系のコンサルタントはみんなとても忙しい。しかも、彼らも机上で計画を作るだけでは絶対ダメで、地域社会で合意形成しながらプランを作り上げていかないといけないのです。そう法律で定められています。国立公園の管理所長と話をしていても、やはり公園管理をしていく中で、地域との協議を重要視されているのが分かります。毎週いろんなコミュニティに行って話をするのも仕事だと話してくださいました。


■法律が守る市民環境まちづくり

 ニュージーランドには「環境裁判所」という環境問題に特化した裁判所があります。もちろん、日本でも環境をめぐる裁判は行われていますが、ここでは地域社会での議論、資源の管理に優先順位を高くしています。

 これについては本のほうに詳しいので、ご覧ください。


■風力発電、海岸沿いの住宅開発

 環境裁判所で大きな注目を集めたのが、この風力発電と海岸沿いの住宅開発の問題です。ニュージーランドの造園家協会は、風力発電に対してかなり否定的な立場をとっています。風力発電が果たして本当に環境に優しいものなのか、むしろ景観を損ねているのではないかということが議論の対象になっています。あるいは、エネルギー供給に関しても費用対効果があるのかということも環境裁判所ではずいぶん議論になっています。


■ニュージーランドの環境行政とは

 ニュージーランドはけっしてお金持ちの国というわけではなく、お金をかけているなと思える人や生活に出会うことはあまりありません。しかし、生活の中で豊かさを追い求める姿勢が強く、自分たちと環境や自然との関係を見つめながら暮らすことで培われていく何かがあるということを信じているようです。

 先日も朝日新聞の方と話をしていて、記者の方は「どこへ行っても何を見ても暗い話題ばかりだ」と言うのですが、その人の持つ価値観によって同じ現象でも暗くなったり明るくなったりすることもあるという気がします。その価値観の根底にあるものこそがとても大事なように思います。ニュージーランドのように、自然や環境と共に生きるという発想に価値観を転換していくことが我われにもできるように思うのですが。そういうことをニュージーランドは教えてくれたような気がします。

 私はけっしてニュージーランドで住みたいと思っているわけではなく、ニュージーランドの仕組みをそのまま日本に持って帰りたいと思っているわけでもないのです。しかし、この報告をすることで、日本が何らかの発想の転換につながることがあれば嬉しいと思いますし、そういう気持ちから今回の本も上梓いたしました。

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