「都市の庭」の提案内容 |
先ほど我われにとって緑のオープンスペースとはどういう存在かと言いましたが、私たちはそこを(1)「交流空間」としての都市の庭、(2)「環境価値」を高める都市の庭として存在すると考えました。
図8 自然の中のカフェ |
図9 部分断面図 |
図10 各階建築床面積図 |
図11 地中庭園平面図 |
図12 地中庭園 |
図13 全体断面図 |
図14 緑に囲まれた賑わいの広場 |
図15 バス・タクシー乗降場 |
バス乗降場、タクシー乗降場は地下プラットフォームから上がった緑の丘の中に立体的に組み込まれています。こすれば、駅前広場がバスとタクシーの群れで混雑するみじめな都市景観を無くすことが出来るでしょう。
図16 アートプロムナード |
図17 都心で野外アートと出会える |
図18 1期側歩道から見た波打つ緑の丘 |
図19 波打つ緑の丘俯瞰図 |
図20 ビジネスができる駅前企業パビリオン |
図21 駅を出ると見える観光バス・タクシー発着ターミナル |
大阪駅前に企業パビリオンがあれば、海外とのビジネス交流ができる場所になります。
その上にアートの点在する庭があれば、仕事の合間に安らぎの時間を持つこともできます。また、図21のように、駅を出ると、京都や奈良観光のためのバス・タクシー発着ターミナルがあることで、ビジネス客が集まる国際観光客拠点にもなるでしょう。
図22 駅前地下の商業施設 |
図23 夜も安全な公園 |
図24 家族で楽しめる野外イベントの場 |
先ほど言いましたように、ここでは、行政に全ての維持管理を任せるのではなく、民間企業や市民が公共空間の維持管理に参画するエリア・マネージメント方式を提案したいのです。このエリア・マネージメントという考え方は、わが国でも全国各地で様々な成果が生み出されつつあります。
だけど、この場所の一番の問題点は「人が住まない場所」ということです。都心再生という言葉は確かによく言われます。しかし、そこでの問題は人が住まない街をどう再生し、管理するのかということが考えられていません。グリーンパークの企業ビルの延べ床面積を大きく広げるだけで、本当に都心の再生になるのか。決してならないでしょう。これまでの失敗がよく語っています。
その解決策として、地権者の民間企業が主体的に費用負担し、地表部の公共オープンスペースを維持管理する民有公共方式を提案します。
この方式では、この土地を所有した民間企業も、ここを利用している就業者も、地表部の緑のオープンスペースの維持管理に責任を持って参加することになります。その維持管理行為そのものが、企業のCI活動となり、営業利益にはね返ってくることがねらいです。そうした関係性を具体的に目に見えるものにできれば、グリーンパークがいくら広大でも、マネージメントは可能となる、というのが私たちの提案です。
最後に申し上げたいことがあります。3.11以降、私自身は大きな被害を受けた宮城県の南三陸町に行き、復興計画の提案活動をしているのですが、被災を受けた人々に対して街をどう再生していくかという話し合いをするとき、今回のプロジェクトと大きく違うのは、南三陸町は人が住んでいる場所だということです。ですから再生する際にも、まちづくり協議会のような組織が出来ていればちゃんとディスカッションが出来るんです。ところが、北ヤードは人が住んでいない。ディスカッションする対象がいないのです。誰と話し合えばいいのか。
そういうとき、例えば市長に任せるというより、やはり経済同友会などの民間企業を先導するグループが強いリーダーシップを取り、その具体化に向けてのビジョンを提案しないと、グリーンパークは、実現できないと私は思っています。
南三陸町や陸前高田などの被災地で、一番大きな問題はまちづくりのビジョンがあるかどうかということです。まちづくりビジョンがあるところは、みんな頑張って街の再生に向かって進んでいけるのですが、ビジョンがないところは、防潮堤だ、嵩上げ地盤だ、高台移転だと復興予算が出やすいインフラ整備の話ばっかりです。そういう話しか出ないところでは、毎月百人単位で住民が街から離れ、内陸部に移っていっています。なぜなら重装備のインフラ整備しかできない街は、将来への夢が描けないから住みたくなくなるのです。これを、放っておくとどうなるかは、目に見えています。ゴーストタウンです。
大阪市も本当に魅力のある街にするには何が必要か、住みたくなる街なのかどうか、そういうビジョンをしっかり持っていないと、ゴーストタウン化していくだろうと思います。
それを回避するためにも、2期という次のステップで、明確なビジョンを持つべきだと思います。以上です。