光のマスタープラン |
今回のツアーでは、マスタープランがあったわけではないですが明らかに都市デザインの操作に光の力を見ることが出来るので、その二つの事例を見て頂きたいと思います。
73,74 WILLIAMS BURG, NEW YORK |
75,76 WILLIAMS BURG, NEW YORK |
77,78 WILLIAMS BURG, NEW YORK |
79,80 WILLIAMS BURG, NEW YORK |
81,82 WILLIAMS BURG, NEW YORK |
大阪で言うと福島とか中崎町などの感じかなと私は本当にわくわくしまして、訪ねました。建物自身に質感がありますし、ライティングは当然ハロゲン系の電球色かネオン、つまり飲食店を中心にしたエリアらしい感じになっている町でした。おじちゃんとおばちゃんが来たらどこに入れるのか迷ってしまうような雰囲気が漂っているわけです。
この街では照明は明らかにサインとして働いていました。ここはバーであるとかレストランであるとか、そういう雰囲気を出していました。こうしたサインはリノベーションの建物で本当に効果を発揮するもので、それがあるだけで元々ガレージだった所が飲み屋さんになっているんだなと分かるようになっています。リノベーションの建物で効果を発揮するのもライティングの力だし、明らかにエリアの魅力というのもあります。
今、世界の都市は都市間競争になっていて、国同士の競争ではなく「どこの町が素敵か」という所の競争になっています。大阪にも「大阪都構想」が出ていて、大阪で勝負しようとしていますよね。そうした時には、その都市が魅力的なエリアをもっているかどうかが勝負の決め手になると思います。ニューヨークにはマンハッタンだけじゃなくて、ウイリアムズ・バーグにこんな素敵なエリアがあります。それが旅行の計画を立てる時に、もう一泊いたいと人に思わせるきっかけになっていると思うんですよ。
そういう意味でもエリアの顔を作っていくことは大事です。商業のエリアも、それにふさわしい顔作りをして大事にしていかないといけません。
83,84 Beacon HILL, Boston |
86,87 Beacon HILL, Boston |
私が感動しましたのは、もちろんガス灯そのものの素敵さもありますが、ガス灯に見合った個人個人のお家の明かりの様子なんです。この風景に似合うような明かりがひとつひとつ選ばれていて、窓から洩れる明かりもノイジーな感じはしない。住んでいる方々の教養や文化度の高さを感じて、非常に感動したのを覚えています。
この街について、服部先生に少し町の概要を補足説明して頂ければありがたいのですが…。
服部:
この街については東大の西村先生がよく調べられているのですが、いわゆるアメリカの歴史地区の修景事例のひとつとしてよく紹介されています。アメリカの歴史地区保全運動の中で、一つの嚆矢になった事例です。
照明も前からガス灯だったわけじゃなくて、ある時点でガス灯に置き換えられているはずです。
この地区にはチャールストリートというメインストリートの商店街があるのですが、そこの意匠の色の規制が厳しいことで知られています。ここのスターバックス、セブンイレブンなど店舗はカラーロゴが撤回させられました。マクドナルドもおなじみの赤と黄色のコーポレイトカラーを使わないで、ビーコン・ヒルに適した色の店舗にしなさいと指導されました。こんなところでしょうか。
確か、学芸出版社から出された本に、ここの地区の詳しい紹介が掲載されていたはずなので、興味のある方はそちらを参照して下さい。
長町:
服部先生、ありがとうございました。
このように、エリアの特徴を持って面的に都市の明かりが考えられていることに私は大変感激致しまして、そういうマスタープランが日本でも作られたらなと思った次第です。
89 Battery Park City & Financial District |
91,92 Battery Park City & Financial District昼間の光景 |
93,94 Battery Park City & Financial District夜の光景 |
また、ここにはアイルランド人の慰霊碑のような建築物があり、昼間はガラス張りの建物が夜にはどんな風に変わるのかを見たくて夜に戻ってきたかったわけです。そして、夜にもう一度行きましたら、やはり美しい照明が施され、光の帯ひとつひとつにメッセージが刻まれていて、私はやっぱり戻ってよかったとほくそ笑むわけでした。
103,104嵐 |
それはさておき、バッテリーパークのような大型のものも含め、まだ紹介したい事例がございますので、もう少しお付き合いください。
106 |
107商業エリア | 108住宅エリア |
110 |
111中之島エリアのマスターイメージ | 112堂島大橋コンペ時の提案書(抜粋) |
ですから、エリアごとのイメージはまだまだ出来てなくて、大阪は中之島の川沿いをやろうとしていますが、この後、南の方の商業地はどうするかなどいろんなことを考えていかなくてはいけません。今はマスタープランを作っていくことが、大阪の取り組みのひとつの流れです。
114 夜間景観実施計画 対象ゾーン | 115 旧居留地地区 |
116,118フラワーロード |
フラワーロードは実施設計をやっています。写真116は現状のフラワーロードですが、ここを本来あるべき姿に華やかさを持って展開していきたいと考えています。「フラワー」という名前が示すように、植物にフォーカスして樹木と花に注目していこうと思っています。色温度を下げてLED化し、省エネをしながら都市の魅力を高めていく、そんなプランを立てているところです。写真118の左と右が「光プランのない時」「ある時」を示したものです。夜に植物に対して光を入れていくと、これだけ都市の魅力が際だつのです。すでにある物の魅力を引き出そうというプランです。
そう考えると、照明は新しく作る都市から「再発見・魅力持続の都市デザイン」ということに本当に貢献できるものです。ニューヨークやボストンの事例を見ていても、すでにある物語の編集と魅力の強化に寄与できると感じました。
119フラワーロード |