バルセロナ旧市街の再生
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次は、計画住宅市街地、つまりグリッド市街地をどう再整備しているかを紹介致します。セルダによるグリッド市街地の建て詰まりの話を最初にしました。街区形成において、セルダが中庭を重要視していたという話もしました。
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19世紀の条例で街区の内側を中庭にすると決められていたのですが、例えば建て詰まってきて1階にスーパーが入ると奥まで空間が来るようになったり、倉庫として使われるようになったりしました。ですから、中の空間は密度としてはそんなに使われていないのですが、1階部分は使えないという状態でした。
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そのように建て詰まりが進行した街区内側をなるべく庭に戻していこうというのが、グリッド市街地の再整備の眼目のひとつです(図44)。オリンピックの開催が決定した1986年に、大々的な市街地の修復キャンペーンが始まります。「バルセロナさん、おめかししよう」というキャッチコピーでした。シンプルにファサードの修復が主でしたが、その一環として中庭の再整備も戦略として位置づけられました。
やり方としては、グリッド市街地全体をダウンゾーニングしまして、基本的にすべての不動産を既存不適格状態にしたのです。そして、所有者が建て替えるときは、自分が持っている敷地の街区裏側の土地、すなわち当初は街区の中庭として想定されていた土地ですが、ここを提供して下さいということにしました。逆セットバックみたいなやり方です。建て替えに併せて、建て詰まっている側を共有空間として提供していく仕組みにしました。
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では、パティオはどのような間隔で埋め込まれるべきかというと、新市街の住民は、どこの街区に住んでいようと、200m歩けばどこかに中庭があるようにするというのが基本的な戦略でした(図45)。新市街は街路が広いからそんなに空間が狭いとは感じませんが、街区自体は建て詰まった状態でしたから、地区全体で見れば住民が享受できる公園や緑地が決定的に少なかったのですね。
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そのやり方を進めるため専門の公社を作って地道に事業を進めていきました。今は、合計40ぐらい、街区の中が公園になっています。グリッド市街地はもともと路地裏のような感覚には乏しいですが、こうしてパティオが徐々に整備されたことで、住民がそれぞれにゆったりと静かに過ごせる半公共空間が生まれました。
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面白いのは、逆セットバックとは言っても、建て替えがどの所有者によっていつ発生するかはランダムですので、それぞれの中庭の形はいびつに出来上がるんです。病院のような大きな建物の敷地だと一気に建て替わるから比較的大きな中庭になりますが、個人所有だと様々な形で中庭が登場します。逆セットバックによる庭空間も面白いなと、実際に整備された辞令を見ていると思いますね。
例えば、地区の中に数少ない児童公園になっていたり(図47左上)、逆セットバックで出来た中庭空間に高齢者施設が整備され、夕方にはお迎えの家族が集まる空間ができたりします(図47右上)。街路側から見ると、街区内の公園へのアプローチは図47左下のようになっています。
もうひとつ面白い変化は、中庭側のファサードです。今まで中庭は顧みられなかったから、そこはけっこう汚れていました。これも中庭が回復するにつれ、修復が進んでいます(図47右下)。あと、街路側に面している建物はいかにもヨーロッパ的な作りになっているんですが、裏側は洗濯物がはためいていたり、われわれからするとアジア的な、親近感の持てる庶民的な空間が広がっています。
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