まちづくりの「まち医者」
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復興まちづくりのお手伝い

 

■阪神淡路大震災

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 入社してまもなく、阪神淡路大震災が起きました。これは私にとって非常にショッキングな出来事で、今まで勉強してきたことや培ってきたものが一気に崩れ落ちたような出来事でした。ハードはもろいということ、そして日頃の関係性がこういう事態ではとても大切になるということを、ここで痛感させられました。

 この職場でも震災復興のプロジェクトを手がけることになり、私も事務所の仕事としてそれに関わることになりました。

 震災復興の現場では、日頃の信頼関係があるところとないところでは復興のスピードが違うということがよく分かりました。目の前でそういう出来事が起きるんです。

 ですから、日頃は分からなくても、一旦何か起きた時にすぐ動ける体勢があるかどうかが、まちづくりにおいては一番重要なことではないかと考えました。

 つまり、「こういう建物を作ろう」とか「こういう場所を作ろう」がまちづくりのゴールではないのです。そこには、何か起きた時にすぐ動ける人材がいて、その人材同士に信頼関係があるということが大事で、そういう状況を作ることこそがその地域の力になるのではないかと考えたのです。震災復興の現場からはそういうことを学びました。


■倒壊マンションの再建

 芦屋市にある東芦屋ヴォーンというマンションの再建に関わりました。震災では、建物から火が出て1階部分が潰れ、何人かが亡くなられました。管理組合からマンションの再建の依頼があり始まりました。

 数十戸が暮らしていたマンションでしたが、震災後は住民があちこちに避難していたので、まずはその数十人を訪ねて今後の生活再建の意向を尋ねることから始まりました。「もとのマンションに戻る意思はあるか」「再建費用を負担できるか」など、みなさんの意見をいろいろヒアリングしていきました。その後、会合を重ねてどうしていくかを、ひとつひとつ検討していったのです。

 その話の中から、自力再建は難しいということが分かってきたので、このプロジェクトにディベロッパーに入ってもらい、みなさんの所有権を一旦移してもう一度再入居するという事業手法になりました。また、優良建築物には補助金が出る制度があったのでそれを活用したり、その後の全体の管理体制のしくみづくりにも関わりました。

 住友商事さんがディベロッパーとして入り、元の住民も再入居という形をとり、それ以外にも新しい人がマンションを買って入居し、新しく再生することができました。

 このマンションに戻れるかどうか分からない厳しい状況の方々がおられ、入っていただく住居を狭くしたり、金融面などいろいろ工夫し、住民みんなも頑張る中での再建だったので、「これで私の死に場所ができました」ととても大喜びして下さったんです。

 この再建事業は、そうした人々の喜びに関われた最初の体験でした。

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