延藤安弘さん型のコーポラティブとか、 ヘキサ型のコーポラティブとか、 公団なんかでやっているような中を自由に変えれるだけのコーポラティブとか、 そういったものを全部参考にするのは良いのですが、 ここの場合は少し違うのです。
そもそも彼らはマンションを再建することには興味があるけれども、 最初は生活のことまでは思っていないのです。
段々うまく動きだしてくると自分自身の希望がどんどん出てきて、 それを「共同のためにおさえなさい」と言ったんじゃ絶対にいいコミュニティにならないだろうということなんです。
また、 抵当権の問題だとか制度の問題だとか、 事業をするに当たっていろいろ困ったことがあるのですが、 彼らは役所なんかの手は借りたくないと言うわけです。
最初、 僕なんかは「公共に入ってもらったほうが公平で皆としても一番いいのではないですか」とか、 「最近は公共のほうが民間の話よりよっぽどいいですよ」みたいなことを言うのですれども、 感覚としてわかってない。
「それだったら、 あなたたちはどういう道があると思うのですか」と聞くと、 ゼネコンは全部安い値段で手数料も取らないということで、 やっぱりみんなそれに乗ってしまったりとか、 あるいは丸紅に頼んだら全部ワンパックでやってくれる。
設計、 施工分離はいいけど、 高くなるのでは、 などというそんなレベルの話がどんどん出てくるわけです。
そういう話に対して僕たちの意見だけでは絶対に説得できないのです。
ですから、 そういうのも一つずつ検証していこうということで、 デベロッパーを呼んでヒアリングするわけです。
そうするといろんな話が出てくる。
我々は施工会社です。
施工会社としては責任もってやるけれども、 それ以外のことは、 ちゃんとできるかどうか自信ないとか、 一軒一軒施主になってもらっても、 2人、 3人夜逃げされたら、 俺達どうしていいかわからないということで、 事業代行の話になるわけです。
一方、 再建マンションでも開発行為の対象になります。
でも公社が事業代行しますと計画通知ですむとか、 いろんなことがだんだん分ってきたわけです。
だけど、 最初の段階でたとえそれを知っている専門家だったとしても、 知らないことを一緒に考えながらやるのだといったスタンスとか、 その相手の文化、 感情等に沿ってやるとか、 結局そういったことが、 次の時代に行なわれる共同化のキーワードになるのではないかということなのです。
実は壊してみたら耐火の壁は上まで(スラブまで)いってなかったみたいなマンションですから、 当然元のデベロッパーは、 相談されてもろくな答えを出さないという状況でした。
困ってしまって住民はそれなりにつてをたどって専門家に診てもらったりしながら、 ほぼ5カ月くらい補修の道を探ったのです。
彼らは結局それを「経済的全壊」とこう名づけたのですけれども、 建て直すのと同じだけの値段がかかってしまうのですね。
しかも、 行政もはっきりとしたスタンスを出さなかった。
というよりも出せなかったと考えるべきなのかと思うのです。
最近国道2号線沿いのアーバンライフのマンションが、 大規模補修ではない、 訳の分らない補修で再建すると新聞に載っていましたけれども、 当時はそのようなことはありえないと我々は思っていました。
そのようなものは大規模補修になる。
役所に聞きに行ってもそうとしか答えません。
大規模補修だと当然既存不適格の問題がでてきますし、 それだけ大変なことをしても新耐震の建物になるわけではない。
これは大変だなと思っています。
なぜかというと住んでおられる方々の生活の問題。
つまり、 そこは年収で200万から300万円の方が住んでおられて、 建替えでは1000万から2000万近く掛かるわけです。
第8コーポラスや先ほどの本山のマンションもそうですけれども、 ようするに都市居住のマンションというのは、 そこに問題があります。
デベロッパーが売るときは、 こういうターゲットに売るからこういう仕上げで、 こういう装備でということがあるのでしょうが、 時間とともに資産の形とか評価も変わってくるし、 相続だとかいろいろな問題も出てくるし、 償却とかいった問題も出てきて、 ありとあらゆる階層の人が住むことになる。
それはそれでむしろまち的でおもしろいことなのです。
ある意味でいうと六甲アイランドなんかみたいに、 同じような人しか住んでいないのは気持ちが悪いと彼ら自身も考えているわけです。
しかしそのような状況の中で、 補修か建替えか、 あるいはどういう建替えを選ぶかというのは大変難しい問題です。
先ほど、 大規模地主と小規模地主というお話がありましたけれども、 小さくても大きくても持っている方々ですが、 マンションの場合には負債を持っている人たちです。
もちろん土地だって負債付きなのかも知れませんが、 そういう混在の中でどうしたらいいかです。
本山の場合は比較的何とかなりそうな人が多いから良かったのですが、 芦屋の場合は復興にお金をかけるどころか食べていくので精一杯の人が一杯いる。
そのことが実は一番問題だということをまた延々議論しだしたのです。
そのころたまたま行きつけのバーの主人に「悩んでいる人がいるので相談にのってあげてよ」と頼まれまして、 ついて行ってみると私の実家のあるところと同じ町内だったのです。
だから子ども同士が知り合いであったとかいうこともあって、 お手伝いするといった感じで始めたのです。
私自身は地震の直後、 資産という視点があまりなかったのですが、 ちょうどその頃都市住宅学会の定期借地権を考える研究会に行った時に、 公団の千葉さんにいろいろと質問を投げかけたところ、 いろいろな有り得るパターンをメモしてくださいまして、 帰り際に渡して頂きました。
そういう経験もしていましたので、 50軒のマンションの再建を定借でやるという話に興味を持ったわけです。
別に定借を押しつける気はないのですが、 定借といったものを考えてみたいし、 いろんなパターンの中でどういうことができるかというのを考えてみたい。
そういう手法のいろんなことも含めて考えるところから、 共同作業をしていこうとしているということを聞いて、 そうか定借だったら頼まれたらやろうかなといった色気も出ました。
彼らのところに行ったら、 仕組みの議論だとか、 お金の議論ばっかりしていました。
実際どういった絵を想定しているのかと言ったら「そんなのまったく考えてなかったわ」ということになっていたわけです。
「それだったら僕らもボランティアで支援すると、 ただしあなたたちも僕らに頼らないでねと、 でも最後まで観させてね」みたいな形で、 始まったわけです。
芦屋市が言っている震災復興でやったとしたらできるのかなと思いました。
公開空地を取って、 元々5階建しか建たないところに、 公開空地を取れと言われれば、 6階建以上にならざるえないわけです。
芦屋市は認めるとか認めないとか言っていたのですけれども、 絵を描いたらどのようなことになるのかとにかくやってみようということになりました。
先ほども言いましたけれども、 事業計画とセットでないとできないから、 もうこれはどちらかというと定借を前提にやるということになって、 絵を僕らはボランティアで描かしてもらいました。
本山と同じ事業計画のコンサルにお願いして、 本当にできるのかシミュレーションを行なってもらいました。
それから阪大の大学院の人たち3人がボランティアで参加してくれました。
当初は僕たちが作る模型とか、 絵を手伝ってもらおうと思っていたのですが、 やっていく中で住民同志の議論やお金の問題を整理するのが結構大変でして、 主としてそういうことを手伝ってもらいました。
ですからそれぞれの人の資産とか抵当権の問題のデータの整理から始まって、 むしろ事業計画のコンサルのほうでワーキングをしてもらいながら、 総会とか、 現場を見てまわって、 その時に彼らが考えたことを少しまとめてもらってます(資料1「A8Cプロジェクトボリューム検討のためのスケッチ」(10K gif))が元々のボリュームのチェックなのです。
実際はこのような形で真っ白な建物が建っていたのです。
ここでは敷地の関係上、 本山で行なったみたいに分棟化して小さくスケールを割ることはできないのです。
これをいったいどのようにしてスケールダウンしたら良いかということです。
住民説明会は迫っているわけです。 それに出れば簡単には変更できませんから、 我々はそういうことを考えて、 街並みになじむことなども考えているということで、 住民説明会に出した考えが資料2「A8Cプロジェクト南側立面図」(16K gif)と「A8Cプロジェクト東側立面図」(9K gif)です。 ここから、 全部、 分節したコラージュ的な建物にしていこうという話なのです。
ともかくコラージュで小さな建物、 小さな面に分割していくこと、 一戸建となじみやすいコラージュ的な集合住宅にしていこうということをデザインテーマに置きながら周辺の住民の人の理解も得ようというような形で進んでおります。