JUDI関西・96年都市環境デザインセミナー
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市場の再建、

店舗/マンションの再建事例

環境文化総合研究所 舞田力

はじめに

復興事業化センターの活動

 それでは報告させていただきます。

私の話には3つの切り口がありまして、 それについてお話しします。

   

 まず一つは『復興NOW』というミニコミ紙についてです。

一般にコンサルや設計事務所の経営規模は小さく、 零細であり、 また人員構成も絶えず大量導入でやっている訳ではありません。

したがって震災復興について単体のコンサルでは、 なかなか対処できないのが実情です。

そこで日頃再開発事業等で交流のある仲間が互いに協力しあって、 復興事業に対処していこうということで、 昨年の5月に5つの会社で1つの復興対策専門の組織をつくることになったのです(図1「復興事業化センターの構成メンバー」(36K gif)参照)。

   

 組織化の方法として、 責任の所在を明らかにするために、 株式会社にしました。

こうして株式会社復興事業化センターという会社を設立したわけです。

構成5社は都市計画分野、 建築分野、 事業コンサル、 不動産鑑定事務所からなり、 一緒に活動していくことになりました。

しかし、 復興事業には建築からの与条件だけでなく、 お金、 財産、 権利等の問題が発生するので、 先の5社の他に協力会社として、 会計士、 弁護士、 税理士、 商業コンサルにも協力いただいて、 ネットワークのなかで協力しながらやり始めました。

   

 大阪に本部事務所をおいて、 構成会社からの人員派遣により常駐体制で対処しています。

震災復興に関しては、 全部ここでやっています。

それから大阪に本社がありますが、 私の事務所が神戸にありますので、 神戸支社という形でも活動をしています。

その活動の一つとして、 さっきの『復興NOW』という冊子をつくり配布しています。

また、 復興事業の際に地元の人がとくに困る資金面の問題に関して、 『復興融資活用情報』という冊子をつくり、 震災復興に関しての銀行等の融資内容(金利、 返済期限など)をまとめて配布しています。

   

復興担当コンサルの『座談会』

 次に皆さんのお手元にお配りした『座談会』についてですが、 これは我々再開発を行なっている者たちの協会である、 再開発コーディネーター協会が出版している機関誌からの抜粋で、 先日復興事業の現場に携わっている人間が集まって、 「阪神淡路大震災の復興に向けて」というテーマで座談会を開いたときのものです(再開発コーディネーター協会『再開発コーディネーター』1996年第60号参照)。

この時には建設省の再開発の専門官で、 現在近畿地建の震災復興対策副本部長をされている座間さんを招きました。

この座談会の内容についてのポイントは、 震災復興にはいくつかのパターンがあるということです。

   

(1)再開発型、 区画整理型

 公的制度の中で復興事業を行なっている地域はどうなっているのか、 どんな問題が起こっているのか。

   

(2)マンション再建型

 今回阪神間で多くのマンションが全半壊したが、 その補修や建替えはどのように進められているのか。

またその過程での問題点はどんなものなのか。

   

(3)商業型

 商業がポイントとなる地域の再建はどうなっているのか。

またその過程での問題点はどんなものなのか。

   

 以上の3点について議論をしました。

また、 ちょうど国から座間さんがこられたので、 建設省を含めて国としてどう考えているのか、 どういう方向に誘導しようとしているのか、 ということをざっくばらんにお聞きしました。

そういうことを一つにまとめて記録にしたものです。

   

震災復興のタイプ別事業例とその問題点

 3つ目は復興事業のタイプ別の具体例とその問題点です。

前に言いました組織、 または個人による活動としても、 いろんな震災復興を手がけさせていただいていますが、 当初30ほどあった計画が、 実際なかなかむずかしくて、 事業化できているのは6、 7つです。

また、 進行中のものも同じくらいあり、 手分けしてがんばっています。

図2「震災復興のタイプ別事業例」(190K gif)に6つの事例をあげました。

左の3つはマンション型でして、 先般石関さんから報告があったので省略させていただきますが、 これは従来マンションであったものの再建計画です。

   

(1)磯上団地

 従来のものに余剰容積があったので、 等価交換事業として、 民間デベロッパーを間に入れて再建を進めています。

補助、 助成制度としては優良建築物等整備事業を活用しました。

   

(2)メゾンドール仁川

 これは従前のものに余剰容積がなく、 従前の入居戸数を維持して復元するという計画です。

若干名転出するかもしれませんが、 基本的には全員再入居できるように計画しています。

元々既存不適格建築物だったので、 駐車場を新しくつくるとかいろんな問題が生じましたが、 宝塚市との調整の結果、 計画がまとまりました。

制度としては、 優良建築物等整備事業を活用しています。

事業主として兵庫県住宅供給公社が入り、 いったん土地を全部譲渡する譲渡方式をとります。

従前の資産が土地の持ち分しか残ってないので、 公社に買い上げていただいて計画を進めています。

   

(3)本山中町マンション

 これは従前はバラバラの土地に戸建て、 アパートなどが建っていたのですが、 それぞれが小さな土地だったので、 別々に建てると資金の問題もあり、 非常に小さな個別の住宅しか建たないといった状況でした。

そこで、 共同で等価交換事業として、 民間デベロッパーを介してマンション型の再建を行ないました。

商店主は1階に商店をとり、 住宅の方は住宅部を取得することとしました。

   

 これも優良建築物等整備事業を活用して、 助成制度による補助金を受けることと、 等価交換事業により、 通常よりも相当割安に再建計画が進んでいます。

   

 そんなマンション型と並行して、 これから述べるような商業型の再建もやっております。

   

三角マーケット

三角マーケットの位置

 三宮駅があり、 そこから北側に飲み屋街がずっと並んでいるのですが、 その一角に三角マーケットがあります。

西側に生田神社がありまして、 その東側に南北にうねっている道がありますが、 これが東門筋で、 三宮でも有名な飲み屋街です。

その東側に少し太い道がありますが、 これが北野坂通りという新しい道路で、 区画整理でできたもので、 これを北に上がると異人館街があるというような場所です。

   

 三角マーケットは再開発法以前にあった防災建築街区造成事業によって整備された建物で、 かつては住宅や飲み屋街が密集していたのですが、 戦災復興の区画整理事業による換地で集約され、 同時に防災事業として共同化してできたビルです。

昔は三角マーケットという市場があり、 飲み屋街としての立地も良いので、 地下や2階を飲み屋として貸し、 テナントビルにしていました。

また住むところもいるので、 その上を店舗経営者の住居とした複合ビルでしたが、 今回の震災で全壊して、 現在は更地化しています。

   

再建計画の概要

 このようなところで再建計画を行なっているのですが、 そこでいろいろな観点から整理してみたものを先ほどの図2に示しています。

   

 事業手法としては優良建築物等整備事業による補助制度を用いて、 資金負担を軽減しようと考えています。

防災ビルの再建ということになるのですが、 従前の権利関係としては、 市場の協同組合と市場の人たちがつくった合名会社が地主を構成しており、 その上に借地して、 建物は区分所有という状態でした。

復元に際しては、 できるだけ地価を顕在化させないために、 従前の借地方式をとり、 地主を踏襲するという形をとりました。

現在デベロッパーは未定ですが、 高度利用済みで新たな余剰床の発生は見込めず、 むしろ床が減る傾向にあるので、 必要な範囲での復元をするという、 自力型に近い計画です。

その他、 具体的なことはお話しできないのですが、 基本的には自分たちが事業主体となった権利者中心による計画を考えています。

また、 建築計画についてですが、 地下2階、 地上13階、 住宅56戸を考えています。

   

事業の流れ

 事業経過の流れとしては、 平成7年1月に地震が起こって、 3月に計画地のすぐ近くにある協同組合と合名会社の所有する空き地で、 約10店舗が仮設営業を始め、 2階を事務所にして会合を行なったり、 個別ヒアリングをしたりしています。

そして9月に我々コンサルに依頼があり、 アンケートをとったり、 住戸プランの説明をしたり、 個別ヒアリングをしたり、 権利関係の整理をしたりして今日にいたっています。

   

 現在は個別ヒアリングが終わり、 計画プランについても5、 6回描き直しの末、 最終段階のものが決まり、 後は事業実施計画をつくり、 個人の資金負担の提示を行ない、 できるかぎり短期間で事業化していくことを予定しています。

   

問題点

(1)既存不適格建築物の再建であること

 つまり、 いかにして従前の機能を復元するための容積(キャパシティ)を確保していくのか、 ということです。

通常、 前面道路による斜線制限等で問題がむずかしくなるのですが、 この場合北側の道路は狭いのですが、 北野坂通りの幅員15mを街区指定による前面道路として適用することで、 斜線に関しての特例として計画ができるようになりました。

   

 そういう中で、 一般的な総合設計、 あるいは震災型総合設計など、 いろんなバリエーションの中で公開空地として、 後で説明するプランではかなり変わってしまったのですが、 一応敷地境界から1.5mくらいセットバックさせて、 計画しようということになっています。

またその中で、 できるだけ500%以上の容積率を確保することを考えています。

   

(2)複合機能の集約化

 とにかく市場のような物販型商業と、 飲み屋のような夜型の商売、 さらには駐車場や住宅という4つの機能を一つの建物の中に組みこまないといけないので、 動線問題、 用途の整理、 いろんな後々の管理の問題をコンパクトに整理しなくてはいけないことが課題であります。

   

(3)市場の存続性

 流通のシステム、 商売のスタイル、 消費者のライフスタイルが変わった中で、 市場という存在が非常にむずかしくなっています。

   

 そういう中で市場をやっていた商売人もだんだん歳をとって、 商売を続けるのがしんどくなってきて、 後継者もいないなどのいろんな悩みを抱え、 もう商売はやめようという方がかなり出てきている状況です。

ここの場合も従前32店あったのが、 ヒアリングするたびに減っていき、 現在13店舗ほどしか自分でやりますとは言っていません。

他に「親戚に商売をやらせるから床はとっておいてください」というところが2、 3軒あります。

つまり半分くらい減ってしまったことになります。

   

 ここの場合、 事業協同組合がありますから商店主は組合員で、 しかも事業協同組合は財産を持っているし、 土地も底地を持っているし、 従前の建物は壊れましたけれど借地権も残っている。

つまりそういった資産を持っていると、 組合をやめるときにいくらかの要求が出てくるのが当然で、 そういうのを整理してやらなければいけないというのがあります。

   

 それについてはある部分は凍結したり、 ある部分は処分したりして、 ある程度の清算をして、 自己資金的なものをつくって、 商売をやめる人にも転出する人にも残る人にも、 資金手当をしていこうと考えています。

また商売をやめる人には「権利としての含み資産的なものがあるのだから、 金銭的なものに置き換えて清算して欲しい」という人も一部おられます。

   

(4)個別資金負担と住宅・店舗の配置調整

 これはどこでもそうなんですが、 お金が必要であるということなんですけれども、 たまたまここはしっかりと商売されていて、 お金のほうはだいぶためておられました。

ヒアリングした結果、 一部の方を除いて基本的に1500から2000万円は自己負担資金として出せますという方が大半でした。

   

 問題は住宅および店舗を再配置する時のルールの整理をしていかなければならないということです。

13店舗の基本的な配置案を考えておりまして、 ぼつぼつ提案していこうということで、 一つの再配置のルールをつくり、 レイアウトについての提案をぶつけていこうと考えています。

当然あの場所はいやだとか、 あの隣りはいやだということは出てくるでしょうが、 これはどこでも出てくる話ですから、 そういう調整をしていかないといけない訳です。

   

(5)零細権利者対策

 当事者の平均年齢が65から70歳くらいです。

商売をやっておられる方はいいのですが、 商売をやめる方でお年寄りが一人おられます。

サラリーマンなら年金等いろいろとあるのでしょうが、 非常に孤独な方が三角マーケットにはいらっしゃって、 子どもさんも遠くにいってますという方になりますと、 住宅一戸取ることはできても、 その際に楽しみがないわけです。

そういう方について何らかの救済方法を考えていかないといけないということが問題になっています。

   

 ですから住戸プランについても平均的な住戸プランだけでなくて、 そういう方向づけの何か小型の工夫をしていこうという方針で進めているところです。

   

(6)事業主体について

 最後に事業主体についてですが、 さきほど自力型に近いと言いましたけれど、 実際にはたとえば建築工事の発注にしても、 請負側からは発注者が誰なのか、 それがしっかりした支払が可能なものなのかといったことがチェックされます。

やはり事業主体は非常に重要であり、 この辺のことをきちっとおさめないと、 話がまとまったとはいえ、 安心は出来ないわけです。

そのレベルになると、 いろいろと整理しておかなければなりません。

事業期間中のリスクをどうカバーするのかが問題になってきます。

   

プランについて

 プランについては図3「仮称三角マーケット他共同ビル建設計画/計画の考え方1」(44K gif)図4「計画の考え方2」(46K GIF)で少し整理してありますが、 一番新しいプランは資料にあるのとはだいぶ変わっています。

たとえば図4のプランにある公開空地の幅員をぐっと小さくしました。

これは一つには商業床のボリュームが不足するということがあります。

さきほど大島さんがおっしゃったような新甲南でのいわゆる個店とセルフ店舗ゾーンを共存させるということは、 スペースがあるからできるのです。

ここの場合はなかなかそういうスペースを生みだすことができませんし、 また残られる方々の業種を考えると、 セルフ化するのとは違う立地なのです。

   

 ここのお客さんは飲み屋のママさんたちです。

つまり三宮の飲み屋がここで仕入れてきて店で出すという商売なので、 通常の生活スタイル、 消費者とは異なるのです。

ちょっと特化型の商業なんですね。

そういうこともあってセルフ型はなじまないということで、 基本的にはもう一度特化した、 客層を絞った店づくりをしていこうと考えまして、 その結果一応ここにある公開空地等は狭める予定です。

このようにしてどんどん見直しを進めているところで、 今度の総会で一番新しい案を提示します。

   

 それから図5「三角マーケットヒアリング調査結果」(98K gif)には個別ヒアリングをした結果を説明しています。

これを見れば、 残る人はどうだとか、 だいたいのことは把握していただけると思います。

   

 以上が三角マーケットの再建事業の概要と現状です。

   

阪急市場(北街区)

地区の概要

 このプロジェクトの場所ですが、 阪神今津駅と阪急今津駅がジョイントしているところです。

阪急電車は高架工事がかなり進んでいまして、 平成10年に完成する予定になっていますが、 1階は高架下商店街を予定しているようです。

阪神電車のほうは未定ですが、 何か施設をつくるようです。

   

 そういう状況のなかで近くに阪急市場という、 事業協同組合が経営する市場がありました。

ここは真ん中に道路が通っていて、 北と南の2つのブロックに分かれた市場でしたが、 先の震災でほとんど全壊してしまいました。

立地条件はどちらかといえば最寄り商業で、 住宅が近くにあって日常の仕入れの場であったわけですが、 ここでも最近は消費者のニーズが変わり、 商売が成り立ちにくくなっていたようです。

   

 震災前でも市場の3分の1以上の店が閉店しており、 厳しい状態であったと聞いています。

用途地域は商業地域で500%の容積率が可能であることを前提として、 再建計画の組み立てを考えてみました。

   

 次にどんな手法でやるかということですが、 ここは容積率500%の地域ですから、 地元の人の資金負担等をできるだけ軽くする、 また有効利用するということから、 等価交換事業による再建を考えています。

それから優良建築物等整備事業による助成制度を活用するために、 西宮市当局と事前協議をして了解を得ています。

   

事業の特徴

 事業の特徴としましては、 市場型商業の再建と不足業態の補完を目指していることです。

従来は個店の集積だったんですが、 今日それだけでは消費者のニーズに合いません。

小さなマグネットになるように計画してお客を導入しようと考えています。

それから、 従前平面的な土地利用をされているので、 土地有効利用による分譲マンションをつくろうと考えています。

住宅をつくることで住人がふえ、 これがお客さんにも若干つながるのではないかと考えながら計画しています。

   

(1)デベロッパーについて

 次にデベロッパーについてですが、 私たちが通常やる場合は、 いろんなマンションメーカーや商社さん等十数社に対して、 最初にアンケートを実施しまして、 書面によるご回答を得ます。

そしてその中から関心の高い数社については直接お会いしてより詳細な話をして絞りこみをし、 地元の再建組合等に報告して、 その中から皆さんの意思で決定していただいて、 基本協定を結んでいただく流れで展開していくわけです。

ここに関しても、 今ヒアリング等による絞りこみの段階になっています。

たまたまここは103戸という大量の住宅ができるということで、 いわゆるデベロッパーニーズに対応できると考えています。

   

(2)事業の経過

 計画の中身についてですが、 昨年の6月に事業コンサルの依頼を受けまして、 それ以来会合やヒアリング、 プランの描き直しを何度もやっています。

その中で最終のプランを詰めている状況で、 また小さな核店舗についてはすでに内定しています。

ですから後は住宅のデベロッパーが決まると基本設計に移行しようという段階まで来ていて、 目標では秋くらいには着工したい考えています。

   

事業化にあたっての問題点

 ここの場合、 事業化に当たっての問題点は以下のようなことがあります。

   

(1)権利形態の整理

 現状は土地が細分化されていて、 共同所有ではなく区分所有であります(図6「第1回個別ヒアリング概要」(63K GIF)参照)。

したがってこういう土地の状態でもう1回何かするということは、 なかなかむずかしいところがあります。

   

 土地が区分所有であったのを今度共有化していこうとすると、 土地を共有化するのか、 あるいは底地を持ったままで借地方式にするのか等、 いろんな問題があります。

今回は等価交換事業で上を分譲マンションにするということですので、 そうすると基本的に土地を区分所有から共有化させないといけないので、 権利者の方々には財産に関する権利形態が変わることについて理解をしていただく必要が出てきたわけです。

   

(2)共同化メリットの理解を得る

 これはどこでもありますが、 土地が区分所有だから中には自分の土地で自分の店を建てたいという方がいらっしゃいます。

非常に小さい土地なので基本的には共同化しようということになっていますが、 その場合個別建替えしたときと、 等価交換したときと、 住宅なら何坪、 店舗なら何坪に相当するのかということで、 共同化のメリットを感じて、 理解していただく必要があるということです。

   

(3)協同組合の脱退組合員対策

 次に協同組合についてですが、 先ほどの図6「第1回個別ヒアリング概要」(64K gif)に示してありますように北東の角に組合の土地がありまして、 組合の資産があるわけです。

以前から商売をやめる人がいたぐらいですので、 今度もやめる人が出てきました。

つまりその人は組合を脱退するのですが、 その脱退者対策をどうするのかということが問題になってきます。

これもいろいろと知恵を絞りまして、 財産分けみたいなことを考えています。

脱退する方に対しては手当をしていかなければならないというのが現実問題です。

   

(4)事業採算性に対する地元権利者の譲歩

 この場所は昔から、 もう20年も30年も前から再開発の話がありまして、 ある意味で地元の方が再開発ずれしているようなところがあります。

つまり良いところも悪いところも知っているところがあります。

また、 いろんなゼネコンやデベロッパーが再開発をやらないかと声をかけているものですから、 少し「俺のところは引く手あまただ」という意識があるようで、 良くも悪くも欲があるようです。

   

 そういう欲をどこかで線を引いていただかないと、 際限なくおっしゃられると成り立たないわけです。

相手側の条件というがあるので、 そういう枠の中で我慢していただかないといけないのです。

そういうところで地元権利者の理解や譲歩が必要なことも課題です。

   

図7「開発方針(前提条件)」(77K GIF)

(5)南北両街区の同時着工の困難性

 これは大きなことなんですが、 ここの場合は北と南の2つのブロックに分かれています。

これを同時並行的にやろうとするといろんな問題があります。

   

 図8「開発方針(事業計画)」(HTML)「南・北断面イメージ」図にはそれらしきものが描かれていますが、 右の図のほうはギョッとするような概念図になっています。

   

 右側の北敷地の断面イメージ図は普通のパターンなんですが、 左側の南敷地の断面イメージ、 これはちょっと信じられないようなことを描いております。

なぜこんな絵になっているのかといいますと、 基本的には北も南も容積率は500%なんですが、 実際に事業化が進んでいる北ブロックに関しては、 斜線の問題、 日影の問題、 その他いろいろな問題から右側のイメージ図が成り立つわけです。

しかし南側の敷地に関しては、 同じ500%の容積率を持っていても、 日影の問題、 斜線の問題、 いろんな計画上の与条件によって500%の容積率を使いきることができない計画になるわけです。

   

 南側の敷地につきましては従前状況図(図6「第1回個別ヒアリング概要」(64K gif))に示してありますように、 さくら銀行の結構大きい土地がありまして、 最初はこのさくら銀行の建替えも含めて一緒にやろうという話で進めていました。

しかし銀行側が今のままでおいておいて欲しいという話しになりまして、 残りの組合側の土地だけで何らかの再建計画を立てようということになり、 非常に不整形な土地になってしまいました。

そのために建築計画上の与条件はとてもむずかしいわけです。

   

 そういう中で、 南側の人たちは駅にも近いということもあり、 結構自己主張が強かったため、 このギョットする図からスタートしたわけです。

現在はやはり何らかの高度化をしたいということで、 先日提案した案では高層住宅、 低層店舗としています。

約310%の容積率の再建計画案です。

これでいくかはまだ未定ですが、 そんな状況です。

   

まとめ

 同じ市場の中でも、 同じような用途地域等の与条件でも、 実際計画を立てようとするとアンバランスな部分が出てきます。

その辺から不公平感とか、 いろんなものが出てきます。

しかも北東角の組合の土地については南側にも組合員がいまして、 両方の組合員が権利を持っていることもあり、 その土地利用も含めて内部でいろんな議論があったり、 意見の対立があったりしましたが、 今はそれを乗り越えて互いに譲歩し、 こういうプランに落ち着いて進めつつあるという状況です。

   

三宮共同ビル

 最後は三宮の共同ビルの再建プロジェクトです。

これは市場のパターンとは違うのであえて入れたんですが、 場所は三宮のセンター街のど真ん中で、 一等地の中の一等地です。

戦災復興での土地区画整理事業の土地の上に防災建築街区で商業ビルが建っていました。

ところがこれが壊れて、 現在は仮設店舗でセンター街に面して営業しています。

   

所有形態と再建方針

 そういうところでの再建計画ですが、 ご存じのようにあそこは市の地区計画で網かけされているので、 その中でいろんなことをしていかないといけないわけです。

一人一人の土地を取ってみると小さくて、 そこで元々共同化をしていたのですが、 再び共同化する方向で再建することになりました。

   

 以前から高度利用はなされていて、 1、 2階は自分たちの区分所有店舗で、 地階と3階以上は大型店に賃貸していました。

今回震災で壊れましたが、 罹災都市臨時処理法で借家権は残っています。

大型店の借りる権利はそのまま保全された格好になっています。

   

 ところで、 さあ建て直そうということになったわけですが、 ご存じのように三宮はあちこちやられまして、 少し裏路地に入っていくとまだ無茶苦茶な状態です。

センター街でもなかなか復興してきません。

その中でやっていこうということになのですが、 大型店、 ダイエー等はほとんど全壊状態です。

たまたま計画地の大型店はダイエーなのですが、 ダイエーとしてはあの辺りを全体としてどうするかという再建方針のコンセプトを、 たぶんまだ決めていないと思うんです。

   

 たまたま別の土地でアジア屋台村という過渡的な利用をしていますが、 最終的にそれぞれのブロックでどういう店づくりをしていくのか、 再建していくのかという意志決定ができていません。

ということで、 上下を借りていたダイエーがどうするのか決めていないので、 やり直すにしてもダイエーとの交渉がなかなかはかどらないという悩みを持っている状況です。

   

地区全体の復興との関係

 しかし片方では、 いろんな復興計画が決まってきてまして、 早く三宮を復興しなければならないということで、 行政が「頑張ってください」と言ってくる現状でもあります。

また、 今年度はセンター街は道路を全面カラー舗装し、 来年度には4階部分にアーケードをつくり直そうということが決まっています。

それとうまく組み合わせながら、 自分たちのブロックの再建計画を進めていこうということで、 自分たちでいろいろとやってきたこられたわけです。

   

 それが、 あまりうまく進まないことにやっと気づかれて、 実は先日私共に相談がありまして、 神戸まちづくりセンターさんに依頼された形で、 再建計画の相談を具体化していくことになりました。

これから私たちが地元に入っていって、 いろんなことをやっていく段階になっています。

   

 これはちょっと特殊な例で、 都心型の中心商業地の再建ということで、 今後に課題は残っていますが、 一応これから進めていこうとしているところです。

   

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