女性が取り組む都市環境デザインの世界
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後輩へのアドバイス

宮前さん
   続きまして、 これからの仕事を進めていくうえで、 こういうふうにしていったらいいというアドバイスでも結構ですし、 こういうことだけはしてはいけないということでも結構ですので、 ご自身のご経験をふくめて、 また10分ぐらいずつおねがいします。

お茶くみやコピーばかりとらされる、 といったこと、 大きな会社と小さな会社の違いについても触れていただければといった要望が出ておりますので、 よろしくお願いします。


色々な見方の必要性

横山さんから

〈大きなメーカーと小さなメーカ−〉

   大きな会社と小さな会社の違いについて、 私が少し見聞きしている部分でお話しさせていただきます。

私の関わっている景観商品を扱っている様々な大手メーカーのデザイン部門の方は、 どうも頭の中で考え出すパーツの絵描きになりがちなところがあると思います。

それは、 そこにいらっしゃるデザイナーの不満でもあるのですが、 一緒に仕事をする人間という立場から考えますと、 デザインするということだけに集中してしまう結果、 エゴみたいな形でものができ上がってくる、 という感じも受けます。

大きくなりすぎた企業のデザインする部門、 特にメーカーに限ると、 そういう問題点はたくさんあると思います。

 

   大手のコンサルについても、 建コン協なんかで知り合いになった女の方々のお話を聞いていますと、 自分は都市計画をやりたかったとか、 自分はデザインをやりたくて、 こんなに大きなコンサルに入れて良かったと思ったんだけれども、 実は地震の調査だとか、 データを作るための部門に回されて、 自分のやりたかった仕事をさせてもらえない、 だからこのコンサルにいるのはいやだとか、 結構聞くお話です。

もし女子学生の方がそういうふうなことになった時には、 私のやりたいことはこんなことじゃない!なんてきめつけないでせっかくその仕事に出会ったんだから、 その仕事を知ってみるのもすてきだなと、 思われてみるのもいいんじゃないかと思っています。

1つのものの見方でずっと行くよりも、 色々なものの見方で行く方が、 短期的にすごい人になるよりも、 長期的にいい仕事ができる人間になる方がいいんじゃないかと思います。


〈別の見方の必要〉

   小さな会社は、 日々時間と雑用に追われるということもあるし、 やらなきゃいけないこともあまりにも多い。

仕事も、 こんな仕事したいなあ、 こんなプロジェクトに自分も参加したいと思う仕事に、 なかなかぶちあたらない。

日々ちっちゃい仕事ばかりで、 つまらないと思うこともたぶんでてくるとは思うのです。

 

   でも、 それもものの見方で、 こうやって一つ一つ自分の足もとを、 自分の意志で作れるということもすてきな事だと思って仕事に取り組めばいろいろな世界が広がって楽しいと思います。

 

   この環境に関わる仕事はとてもいい仕事じゃないかと私は思います。

いろんな悩みに出会います。

いろいろ考えなくてはいけない側面にも出会います。

自分がとても追いやられたり、 いい感じに開けたり、 といろんなシーンにぶちあたります。

仕事そのものを作る喜びだとか、 考える喜びはもちろんありますが、 それだけではなく、 自分の人生をとても豊かにしてくれるように思えます。

もしかしたら、 自分達が作った環境で、 自分の子ども達に影響を与えたり、 時代にも影響を与えるかも知れません。

例えば、 空間を作ることによって、 人の心を変えていって、 みんなが幸せになるということも実現できる仕事であると私は思っています。

 

   また別の角度でこの仕事をとらえますと、 コンピュータをはじめとする今、 時代が要求しているものにもふれて、 それを使いこなしていくことで、 時代そのものもたぶん実感できます。

つまり、 いろいろな事がある仕事なのです。

 

   これだけはしてはいけないということですが、 人に深く関わっている仕事で、 人と共同で作っていく仕事ですから、 人を切り捨てた中では、 考えられない仕事です。

全てを敵にまわしていくということは、 避けた方がいいかなと思います。


次の展開のために積極的に考えること

三谷さんから

〈働く側の意識として〉

   今、 横山さんから「まわりを全て敵にまわさないように」というお話がありましたが、 どうしても、 何々してくれない、 まわりがこうしてくれない、 ああしてくれない、 だから私はできない、 という被害者意識的なものが出がちです。

それがたぶんまわりを敵視することだったりします。

でも、 ほとんどの場合自分の行動によって解決されるはずです。

 

   そのときに、 自分を育てていくことを考える必要があります。

先ほど私が細かいところにこだわって枠組みを作らない方向になりがちであること、 もう少し全体の流れの中で自分は何をしなければならないのかという視点を持ちたい、 バランス感覚が大事だということをお話しました。

その上で、 働く側の基本的な意識として、 いくつか考えられます。


1)「できないといわないこと」 

   例えば、 私は、 まだ力不足なのでできませんとか、 データが足りないからこの分析はできませんだとか、 できないということは基本的に言わないことが、 まずは大事だと思います。

 

   私の同期は全部で5人いるのですが、 私は完璧を目指す余り、 こうだからできない、 ああだからできないとできないことの理由をいろいろ挙げます。

何だか被害者のようになってしまい、 自分で女であることを最も意識する場面かもしれません。

周囲にできない状況にあっても最大の成果を上げようと努力をする人たちを見ていると、 自分には何が足りないのかを考えさせられます。


2)「自分の可能性を信じて図々しくなる」

   そこで、 私に足りないものは、 自分にあまりに自信がないことだと思います。

 

   自分が女だからできないと考えるのではなくて、 自分はある程度やれば何とかなるんじゃないか、 自分に自信を持とう、 自分の可能性を信じようということです。

要は気持ちの持ちようだということ。

 

   その上でどうしてもできないことも、 誰かの助けを借りてでもやってしまおうという図々しい部分を持った方がいいのではないかということです。

例え誰かの助けを借りたものであっても、 それが成果となれば次の展開での自信につながるはずだと思うのです。


3)「自分の適性を見極める」

   また、 この仕事をチャンスをとして考えられるか、 これによって自分はこれだけ伸びられるんじゃないかと思うかは、 まさにその時の気持ちの持ちようだと思います。

与えられた仕事がおもしろくなかったとしても、 これによって自分の視野がこれだけ広がるとか、 次の肥やしとしてこれだけ使えるようになるとか、 次の展開のためにより積極的に考えることははるかにプラスになります。

 

   物事を肯定的に考えると同時に、 自分の適性はなんなのかということも常に考えておく必要があると思います。

絵を描くことが得意なら、 絵を描くことで主張する、 話すことが得意なら、 話すことで主張するとか、 自分の適性を見極めることが大事だと思います。

適性を見極めた中で、 チャンスをチャンスとして認識できる部分もあるからです。


4)「自分のネットワークを活用する」

   先ほど横山さんの話がありましたが、 情報に敏感になることはとても大事なことだと思っています。

日々の仕事の中ではどうしても自分の視野に閉じこもってしまいがちで、 新しい情報に鈍感になっていることがあります。

だからこそ、 敏感に反応するミーハーな部分を意識的にもっていたいと思います。

世の中の情報の一部は、 女子高生や女子大生など女性を中心にまわっている部分もあるわけですから、 女性のネットワークをうまく活用することで、 情報に敏感になれる環境を自分で作れるのではないかと思います。

それが仕事に反映できると、 仕事にも幅が出てくるのではないかと思います。

宮前さん
 最後に大矢さんには、 もちろん所長さんもいらっしゃいますが、 先ほどお話がありました経営者としての立場でのお話をお願いします。


経営者として

大矢さんから

   まあ、 しんどいの一言ですけどもねえ。

15年目にして、 任されるという形になったんですが、 実際、 組織運営の面でいうと、 経営面の部分、 人材面の部分まで、 多々あるんです 当社でも女性は、 事務の人をあわせますと8名ほどいるのですが、 女子の技術者がなかなか育たないということが現実にあります。

今一番長く勤めている方で、 6年目です。

技術者がやめていく理由は、 先ほど三谷さんがおっしゃっていたように非常にハードだということ、 プライベートな時間がなかなかとれないということがやはりあります。

そういう状況にあって、 だいたい3年目ぐらい、 年齢的にいうと25、 6歳が一つの山になるわけです。

やっぱり女性の部分で、 結婚の問題だとか色々な問題がでてくるということです。

本来、 自分が選んだ仕事であれば、 私からいえば、 結婚を理由にやめるなんてことを会社に申し出ることは失礼だと思っています。

だいたい5年目ぐらいにもう一つの山があって、 それがだいたい30手前ぐらい。

やっぱりそれも女性としてという部分です。

今まで私どものところでやめていった人は、 多くがそういう理由でした。

 

   当社はランドスケープデザイン事務所ですから、 技術者として自分が目指しているものと違うという人もいます。

デザインの部分じゃなくて、 たとえば計画なり調査なりをやりたいということで、 変わっていったという人です。

その方は、 現在結婚されて、 お子さんもいらっしゃいますが、 今も仕事をされています。

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