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しかし、 今回の研究では、 「下町環境」といった概念を少し広くとらえており、 いわゆる「下町」の他にも、 スプロール市街地、 農村や漁村の密居集落、 歴史的な市街地、 インドネシアのカンプン1)なども対象として考えました。
これらは、 安全性、 快適性、 住宅の不燃化、 プライバシー問題、 日照問題といった面から捉えると決して良好な住環境と評価されることはありません。 しかし、 一方で多くの人々が抱く「下町」のイメージにあるように、 コミュニティに育まれた生活の豊かさや人間性、 まちに対する領域感や愛着感など評価される点も多いと思われます。 そして、 これらの下町は「スラム」とは異なり、 どちらかというとごく普通の庶民的なまちと言うこともできると思います。 人間的であたたかなまちであると思います。 このように、 「下町環境」では、 ハード的な条件は脆弱であるうえに、 その評価される点は雰囲気などの感覚的であるために、 現在その再整備、 更新がなかなか進まないといえます。 すなわち、 感覚的に評価されるものは曖昧で、 具体的な形や物として理解されることが非常に困難で、 そのため新たに生み出す住宅地のイメージがなかなか明確にできないといえます。
その場所にふさわしいデザインのためにまちの文脈(コンテキスト)を解読する試みも多くあります。
下町環境のコンテクスト分析と
その環境デザインへの反映の可能性
abc研究設計
福田忠昭
はじめに
今回とりあげる下町の環境というのは、 非常に様々な定義のされ方があり、 また、 「下町」という響きに、 人それぞれ様々なイメージを持たれることと思います。
これらのまちの特徴は、 基本的に木造の高密度住宅地であることに加え、 住居以外の様々な用途が混在していたり、 インフラとしての街路が狭隘で不整形であることなどが挙げられます。
また、 これまでの画一的なクリアランス型の整備から、 現在、 更新型や修復型、 漸次型のまちづくりといった試みが多くあり、 そこでは当然のことながら、 その場所固有の解決方法を生み出しています。
このように、 下町環境が育んできた「人間らしい」まちのデザインを再構成し、 その「まちにふさわしい」デザインを考えていくために、 今回の研究では景観のコンテキスト分析から新たな都市像・空間像をデザインするための一つの可能性のようなものを示すことができればいいと考えています。
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