コンテキスト論と環境デザイン
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身近な情景の収集

改行マークこれから、 私がいろいろなところで集めてきた情景を紹介いたします。

その情景をどのように読んだのか、 つまり、 その場面のどこに心を動かされたのか、 ということを説明したいと思います。

 

改行マークまず、 情景というものですが、 その例を一つ挙げたいと思います。

画像fu01 〈写真1〉 これは福岡のエルガーラのパッサージュ広場です。

博多大丸の新館と旧館の間に、 このような屋根のかかったパッサージュがつくられました。

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〈写真2〉 この通りには3つの彫刻が置かれていまして、 そのひとつがこのカバの親子のものです。

福岡の中心地、 繁華街の真ん中で、 このカバにまたがっている子供をよく見かけます。

どこか公園の遊び場のようです。

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〈写真3〉 ある時、 このカバの口に、 このように小銭が置かれていたそうです。

このお金はどうしたものかと、 落とし物ではないし、 ということで、 結局、 動物愛護団体に寄付されたそうです。

改行マークさて、 このカバの彫刻の魅力といいますか、 この場所、 場面をこのカバの彫刻がどう変えているかを考えてみてください。

思わずお賽銭をあげてしまう日本人らしい気持ちを大切にしているようで、 ほっとするのではないでしょうか。

このような場面をここでは「情景」と定義しています。

 

改行マークこれからお見せする情景は、 大阪のインナーエリアの一部である生野と野田、 そして、 インドネシアのカンプンで撮影したものです。

画像fu04 〈写真4〉 ここは「生野八坂神社前」のバス停です。

バスを待つ人のために椅子や空き缶と板で作ったベンチが置かれているのが、 心暖まります。

また、 奥の家の前には、 時計が取り付けられ、 手書きの時刻表が張られています。

傘もありますが、 借りてもいいのでしょうか。

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〈写真5〉 とても小さな空間で、 駄菓子屋をやっています。

屋外にパラソルやメニュー、 「氷」の垂れ幕、 ごみ箱があります。

路地一帯が子供の空間のようです。

また、 「すもうの好きな方番付を持って行って下さい」とあります。

このように自分の趣味をまちの人みんなと共有できて、 とても楽しそうです。

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〈写真6〉 路地の奥に広がった空き地は、 舗装されておらず、 多様な生活空間となっています。

洗濯物を干したり、 子供が遊んだり、 ゴミを燃やしたり、 菜園をつくったり、 実に安心できる共同空間だと思います。

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〈写真7〉 路地の角に建つ家の前には、 辻に面して隅切りをし、 花壇が作られています。

政党の看板なんかもあります。

ちっぽけなスペースを利用して、 町の人とともに華やかな空間としているのがいいと思います。

また、 複雑な町の目印にもなっているかもしれません。

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〈写真8〉 大変お天気のいい日なので、 布団が干してあります。

二階の人は通路のところに、 一階の人は正面のブロック塀にという感じで、 のんびりした雰囲気が感じられます。

小さな子供が一人で遊んでいますが、 安心できる空間です。

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〈写真9〉 この黄色いポールは、 きっと車避けのためのものでしょう。

狭い路地を車が通るとたいへん危ないからです。

しかし、 布団を干すのにも丁度良いようで、 その意外な使い方に、 感心してしまいます。

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〈写真10〉 天気のいい日に、 よく日の当たる場所に布団を干したくなるのは皆同じでしょうが、 通りの自転車の上に干してある光景は少々滑稽にも思えます。

白線の内側は、 まるでこの人の庭のようで、 その生活感があふれています。

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〈写真11〉 家の前の飾り窓に、 相田みつを氏の詩が飾ってあります。

きっとお気に入りの詩を飾って、 みんなに見てもらえるのはたいへんうれしいに違いないでしょう。

道行く人も、 ショーウィンドウとは違った楽しみを感じることと思います。

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〈写真12〉 手作りの共同物干し場からは、 辺りのお母さんのコミュニティが感じられて楽しそうです。

黄色いポールで領域化されて、 みんなの自転車置き場となっているのも、 周辺の人々の豊かなコミュニティを感じさせます。

ゆったりとした安心感があると思います。

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〈写真13〉 非常に狭い路地に子供が遊んだチョークの跡が残っています。

周りには鉢植え、 自転車、 洗濯物があふれだし、 この空間は、 共有の庭のようになっています。

非常にプライベートな感じがして、 安心感があります。

また、 小さくて暖かなコミュニティが感じられます。

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〈写真14〉 銭湯の入口から半分顔を出す車は、 たいへん不思議であります。

どうしてこんな所に車を止めているのだろうかと興味をひかれます。

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〈写真15〉 ジュースの自動販売機の横に、 ビニール袋が用意されています。

手作りの簡単な装置で、 その気配りのよさに感心してしまいます。

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〈写真16〉 おしゃべりのために自動車を止めて、 道まで塞いでしまう光景は、 ここに住む人々とその空間との親密さを感じさせます。

そのリラックスした雰囲気はとても落ち着きます。

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〈写真17〉 お祭りの御輿が通るところには、 しめ縄のようなものが取り付けられています。

普段とは違った雰囲気をつくり出していて、 とても興味深いと思います。

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〈写真18〉 卯建を持つ古い様式の建物と小さな祠がよく合っています。

祠の下の小さな鉢植えの緑、 犬走りにおかれた鉢植えの緑と消化器箱の赤い色が鮮やかです。

思わず足を止めたくなる場所だと思います。

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〈写真19〉 この八百屋は、 簡単に店を開けたり、 閉じたりできるに違いないでしょう。

商品の青果は箱に入ったまま並べられて、 飾り気はありませんが、 実に効率的だと思います。

また、 店の前に椅子が二つ置かれているのを見ると、 店の主人とお客さんがたわいもないおしゃべりをしている光景が目に浮かぶようです。

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〈写真20〉 路地の入り口に鮮やかな赤い鳥居があります。

なぜこんなところにと思いますが、 奥に神社がありました。

表通りからはわからない小さな神社ですが、 密集した住宅の中で生き延びているようで、 住民の人々の愛着を感じます。

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〈写真21〉 店の前には、 日除けのためにカラフルなパラソルが開かれています。

遠くから見てもこの鮮やかなパラソルは、 楽しい雰囲気を生み出しています。

昼間は少々通行の邪魔でも、 パラソルは仮設的なものなので、 簡単に閉じたり開いたり、 日のあたり方や季節によって移動もできるでしょう。

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〈写真22〉 とても静かで細い路地は、 表の通りへの期待感を生み出して、 ゆっくりと前に進みたい感じがします。

きれいに並んだ石畳や古い板塀は、 そのしつらえの上品さがたいへん心地よいと思います。

また、 細い溝の段差や突き出た板塀、 袖壁のデザインなど変化に富んだ空間の表情が面白いと思います。

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〈写真23〉 石畳の落ち着いた雰囲気の路地には、 井戸の跡があり、 その前には椅子が置いてあります。

それは、 誰か暇をつぶすためのものでしょう。

プライベートな落ち着いた空間です。

改行マーク次は、 インドネシアのカンプンのものです。

画像fu24 〈写真24〉 井戸のまわりには、 鉢植えなどがあふれていて、 隣近所の人が集まっています。

おばあさんと子供が座って、 おしゃべりをしているのがのんびりしていい感じです。

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〈写真25〉 カキリマの周りに人々が集まっています。

大変小さな商空間ですが、 周辺の住民の人々が集まってくると、 とても活気に満ちた空間となります。

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〈写真26〉 深い庇の下にはたくさんの鳥が飼われています。

木のベンチや花が、 くつろぎの空間を演出していて、 気持ちのいい空間となっています。

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〈写真27〉 家の前の段は腰を掛けるのに丁度よいようです。

静かな空間で、 とてもプライベートな空間となっているようです。

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〈写真28〉 低層の建物の屋根の向こうには、 モスクが見えます。

地域のランドマークやシンボルとなっています。

荘厳な感じがします。

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〈写真29〉 住宅地への入り口には、 個性的なゲートがあります。

高く上げられた鳥かごが印象的です。

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〈写真30〉 夜警のための施設では、 昼間は子供たちが遊んでいます。

昼間はこのように休憩スペースとしても使えます。

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〈写真31〉 狭い路地は、 洗濯物であふれています。

生活感やその親密性を強く感じます。

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〈写真32〉 家の柵を利用してバドミントンをしています。

工夫して遊ぶ子供の様子がほほえましいと思います。

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〈写真33〉 バドミントンコートが洗濯物干し場となっています。

遊ぶのは日が傾いてからということで、 便利な空間だと思います。

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〈写真34〉 塀に挟まれた殺風景な路地でありますが、 椅子がひとつ置いてあります。

塀が高く、 日があまり射さないので、 休憩や暇つぶしに座るのはいいようです。

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〈写真35〉 人々が、 木の下に集まっています。

大きな樹木は、 涼しい木陰をつくり、 立ち話をするのには丁度いいようです。

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