密集市街地の居住空間
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1 統計調査等から見た単独世帯の現状


アメリカにみる単独世帯の増加

改行マークそれでは、 「一人暮らしの住まいの現状と課題」について報告させていただきます。

改行マーク私は主に、 単独世帯の増加という観点から説明したいと思いますが、 この単独世帯の増加は我が国だけではなく先進国に共通の現象として現れています。 アメリカを例にとった表1を見ると、 1950年には単独世帯が10.9%、 3人以上世帯が60.3%と6割以上を占めていたのが、 1980年には単独世帯が22.5%、 3人以上世帯が46.2%となっており、 単独世帯の割合がかなり伸びています。


日本の単独世帯の状況

改行マーク我が国ではどうなっているかということを『日本の世帯数の将来推計』(厚生省)から、 一般世帯に占める単独世帯の割合の推移として2010年までの推計値をグラフにしてみました(図1)。 これを見ると、 1970年には20%だった一人暮らしは、 1995年に25%、 2010年には30%まではいかないけれど28%ぐらいまでは増えるのではないかと推計されています。 つまり、 3世帯に1世帯あたりは一人暮らしになるのではないかと考えられているわけです。 単独世帯はあまり目を向けられることがありませんが、 街の状態やコミュニティの問題とか、 いろいろな問題がここから起きてくるのではないかと考えています。

改行マークこの推計は全国の推計ですが、 都会だけを取り上げた資料ではその傾向がはっきり出ています。 図2では、 兵庫県と神戸市を対象に世帯人員別の割合をあらわしていますが、 兵庫県全体の一人暮らしは平成2年で20.6%、 平成7年で22.4%ですが、 神戸市では平成2年で25.5%、 平成7年で26.9%と、 県全体より都会の方で一人暮らしが多い傾向があります。

改行マーク単独世帯の増加の要因はいろいろ言われていますが、 一番大きな要因は高齢化です。 その他の理由としては、 晩婚化、 少産化、 家族に対する意識の変化、 離婚の増加があります。 また、 統計上の問題ですが、 下宿に住んでいた人達がワンルームマンションに移っていくと、 下宿に住んでいた時は準世帯として区分されていたのですが、 ワンルームマンションではひとつの世帯としてカウントされるので単独世帯の割合が増えているということもあります。

改行マーク図3に年齢別一般世帯に占める単独世帯(世帯主が一人暮らしである)の割合を示していますが、 20〜40歳未満までが晩婚化の影響で単独世帯が若干増える傾向にあります。 そして60歳以上では高齢化のために単独世帯がゆるやかに増えており、 将来的には4割近くが単独世帯になると推計されています。

改行マーク次に、 図4に神戸市を例にした年齢別単独世帯数をあげていますが、 最も多いのが60歳以上の高齢者、 続いて20〜29歳までの若い世代、 その次が30〜59歳までの中間世代に分かれています。 これらがそれぞれの理由で増加しつつあるわけです。


単独世帯の住まいの状況

改行マークこれらの人びとがどんな住まいに住んでいるかを調べたのが、 図5「神戸市における単独世帯の住宅の所有関係」です。 平成2年、 平成7年の国勢調査から作りました。 特徴は平成2年から7年にかけて「公営・公団・公社の借家」が非常に増えていることと、 民営の借家が減っていることです。 これは震災があったので普通の状態ではなかったからだと思います。 持ち家はあまり変化はないのですが、 全体としては借家世帯が非常に増えており、 借家に依存した生活をしていることがこれで分かります。

改行マークこれを年齢別に見たのが、 図6「年齢別住宅の所有関係(神戸市)」です。 これは平成7年度の神戸市の統計資料をもとに作成しています。 はっきり分かるのは持ち家の世代は年齢が高くなるにつれて増えていることで、 60歳以上では40%が持ち家です。 ただし、 60歳以上で借家の人も6割おり、 そのうち公営借家が29.0%、 民営借家が26.0%となっています。 もちろん若年層は借家に住んでいる割合が高く、 年齢が上がるにつれて民営借家から公営借家に移っていく割合が高く、 公営借家に依存している高齢者もかなりいることがわかります。 この傾向は他の調査にも出ていまして、 所得の低い人が住む公営借家に単独の高齢者世帯がたくさんいて、 所得がこれから伸びる可能性が少ないことから「沈殿層」とも言われています。 この人達はこれから住み替えする余力がないため、 公営借家にずっと残る傾向があるそうです。

改行マーク民営借家の場合には、 高齢者だと家を貸してくれないという問題もあります。 以前、 民間家主たちにアンケートをとった時には「高齢者を嫌っているわけではないが、 住んでもらうと不安だから躊躇する」という声があり、 福祉的な立場からも高齢者の住居には配慮すべきだと思います。

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