まず、 「狭小住宅への居住経験の有無」(図7)についてです。 これは大阪市内の、 上町台地、 森ノ宮、 千里(公団・公営・戸建)、 庄内(密集地・ミニ開発)、 南港、 ベルパークシティという特性のはっきりした住宅の居住者に対して「今までどんな住宅に住んでいましたか」と質問した結果の一部です。
大阪市内に詳しい人なら地名を見れば分かると思うのですが、 上町台地は古くからの住宅地で比較的大きな一戸建てが建っている所で、 高級マンションもたくさん建っています。 森ノ宮と千里の公団・公営は公営・公団住宅がたくさん建っているところです。
千里戸建ては、 文字通り戸建てが建ち並らんでいるところです。 豊中市の庄内は密集市街地がたくさんあるところですが、 特に民間の木賃がたくさん建っているところで、 庄内ミニ開発はそうした木賃地域をミニ開発したところです。 南港は新しく開発された住宅地でほとんどが集合住宅です。 ベルパークシティは、 民間の大規模開発による集合住宅です。 これらの人びとに「1室住戸のような狭い住宅に住んだことがあるか」と尋ねてみました。
顕著に現れたのは、 所得の高い地域である上町台地や千里戸建て、 ベルパークシティに住んでいる人々の狭小住宅の経験は低くなっており、 公営・公団住宅や密集地に住んでいる人の多くは居住経験があることです。 居住歴によって単独世帯になったり狭小住宅に住んだりということが、 はっきり分かれているのではないかと考えています。
その狭小住宅へ転居した人はどういう理由で転居したかを見たのが、 図8「狭小住宅居住経験者の転機の契機」で、 大部分が進学や就職で親元の広い家から狭小住宅へ転居しています。 あと、 転勤、 結婚、 親からの独立が転居の理由となっています。
先ほど単独世帯で高齢者が多いと指摘しましたが、 もうひとつのボリュームゾーンである若年層の単独世帯構成の契機としては進学・就職がかなりのウエートを占めている傾向があります。 ですから、 単独世帯や狭小住宅に住む人が必ずしも特別な人達ではなく、 住み替えの過程のなかでそうした単独世帯形成や狭小住宅に住んだりして、 現在の居住形態に移っていると考えられます。
図9では「狭小住宅における居住年数」を調べていますが、 大部分は1〜2年の期間です。 しかし、 3年以上の人びともかなりあり、 こういう調査はあまりないのですが、 長期間1室に住んでいる人も存在するのではないかと考えられます。
次の図10は、 ワンルーム形式の住宅に住んだ経験のある人びとがどういう考えで住んでいるのかをグラフにしたものです。 全体的に都心居住への志向が高い傾向がありますし、 持ち家を持つことよりも生活を大事にするという意味で賃貸でいいんのではないかと考える人がかなりいることが分かります。
さて、 ワンルーム住宅は嫌われているわけですが、 その大きな要因として地域になじまないとか夜中まで騒ぐ、 生活スタイルが違うので迷惑だということがあります。 あちこちで建設反対運動もあるのですが、 実際どういう生活行動をしているのかを調べたのが図12です。 ただし、 この調査の回収率は非常に悪くて、 返してくれなかったり転居してしまったり、 たまにしか戻ってこないからアンケートに気づかなかった人もいて、 全員の傾向が現れているとは言えないかもしれません。
これによると、 迷惑行為である「夜12時以降の入浴や帰宅、 外出」は、 はっきり傾向としてあげられています。 しかし、 よく言われているゴミ出し時のルール無視や回覧板無視はしないという人の方が多いようです。
ですから都心では24時間都市と言われて、 それに沿った生活をする人もいるわけで、 そういう人たちをどう取り入れていくかについても今後考える必要があるのではないかと思います。
それから「単身者だけのマンションは殺伐とした感じがする」とする人が3分の1ほどいまして、 必ずしも今の居住形態がいいと考えている人ばかりではないという傾向を示しています。 それに呼応するように、 「単身者、 子供のいる夫婦などいろいろな人が混じって住む方が自然でいい」と考えている人が3割以上います。
今の単独世帯で比較的若い世代は、 ワンルームマンションに住むものだと思われて、 そういうものばかり建てられていますけれども、 それがいいと思う人ばかりでもないわけで、 もっと居住形態を多様化していくべきではないかと思います。
2 意識調査にみる単独世帯の居住状況
単独世帯と狭小住宅
今まで述べたことは統計資料からの調査でしたが、 次はいろいろな意識調査を行いましたのでいくつかのグラフを使って単独世帯の居住状況を報告したいと思います。
ワンルームマンション居住者と地域との関係
その次の図11は、 ワンルームマンション居住者が地域にどれくらい参加しているかを尋ねたものです。 設問を作ったときもそういうことをする人はほとんどいないのではないかと考えましたし、 結果としてもしていない人が多かったのですが、 「引越挨拶」や「ゴミ収集日を聞く」は10〜30代でもそこそこ行われている傾向があります。 全体的にコミュニティ活動は低調です。 今までの普通の家族世帯同士のつきあいを中心とするコミュニティが形成されているところに、 こういった単独世帯の人達が入っていけるシステムがないと考えられます。
居住形態への希望
次に居住形態に対する希望を図13にあげています。 質問はいろいろ設定しましたが、 主に自分と同じようなライフスタイルの人が周囲に住んで欲しいか、 また単独者ばかりが固まって住むことに対してどう思うのかについて尋ねています。 半数近くの人は「ワンルームマンションが単身居住者にとって良い住まいである」と考えていますが、 そうは思わない層も14.5%あります。 また、 「子供を持つ夫婦が近くに住むのはイヤだ」と考える人も3割以上いますけれども、 「そう思わない」「どちらでもない」と思う人の方がずっと多いという結果になっています。
このページへのご意見は前田裕資へ
(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai