|
写真01(稗田集落とその北方の戸建て住宅地)
|
大和郡山の稗田という集落ですが、 上の方に近代の手法で作られた住宅街区があります。環境構造、 あるいは構造化された環境といった点において、 稗田の集落と機械的に並べられたかのような住宅街区の間には相当大きな差があります。
我々は、 この先、 どちらの空間を目指すべきか、 単純に言えばどちらが気持ちいいのかを考えてゆかねばならないということです。
|
写真02(南面平行配置型団地の空間構成)
|
戦後につくられた南面平行配置の集合住宅団地では、 道路のある隣棟間隔の空間と、 道路ではない例えば緑地や広場といった隣棟間隔の空間について、 建物と建物以外の空間だけに着目した時、 その違いは解りません。つまり、 構造化された空間になっていないということです。
単に空間をならべたところを道路や公園、 緑地と振り分けたという印象です。
|
写真03(水戸六番池団地の空間構成)
|
六番池団地では、 もう少し構造的な空間をもった住環境をつくろうとしています。構造化された空間が、 楽しく気持ちの良い環境のベースになるのではないかということです。
|
写真04(会神原団地の空間構成の考え方)
|
これも公営住宅ですが、 単に集合住宅の敷地の中だけを考えるのではなく、 まち全体のネットワークに貢献できるように、 集合住宅の配置や、 空間構造を考えようとしています。
|
写真05(滝呂居住環境街区システム)
|
|
写真06(寺本居住環境街区システム)
|
グリッド状に連続する一般的な住宅街区の場合、 領域性がはっきりしないという問題があります。領域性をはっきりさせながら、 相互に連続することでまちを作るにはどういう方法が考えられるかというを考えてみたものです。
幅員6mの場合の道路率と同じ空間量ですが、 幅員を4.5mにして、 残りの1.5m分をまとめ、 中心部分に広場をとったり、 2mの路地をとったりして再配分すると、 空間の構成にメリハリがつき、 様々な生活シーンの舞台を作ることが可能になります。
実際、 6mの道路でも、 開渠の側溝の内側に電柱があったりして、 実際の車の通行スペースは4、 5m程度しかない場合が多いのです。
空間としての道路スペースがどう閉じているのか、 閉じつつ開いているのかといった、 道自身を空間のデザインとして解いていこういうものです。
我々は、 こういった街区の考え方を居住環境街区と名付けています。
|
写真07(ウッディタウンの街区構成)
|
|
写真08(すずかけ台の居住環境街区の構成)
|
|
写真09(アイストップのある道)
|
|
写真10(街区中央の広場)
|
居住環境街区の提案で最初に実現したのが、 三田市・ウッディータウンのまち開きゾーン、 すずかけ台です。先ほどのような基本的な街区構成も、 周辺の条件との対応で個性的な展開となります。
街区中央の広場もいろいろな形となって、 特色ある広場となるのです。
さらには、 ハードな道広場、 柔らかい緑地広場といったしつらえの差も個性的な場所づくりに効果を発揮します。
いづれにしても、 時間の経過や住民の手が加わることで熟成していく環境構造をデザインしているということです。
|
写真11(宅地内の植裁ゾーンにある電柱)
|
電柱を宅地内のプランターゾーンに入れることによって、 交通上も、 設備の配管機能上も支障のない道が、 実現できています。我々はまた、 まちなみを作っていく素材の開発も同時に行っています。
自然の素材を種石にした外構用のスプリットンブロックを開発しました。
それぞれの住宅のプランにあった形で使いながら、 まちとしての連続性も実現できるのです。
ブロックは誰でも使える材料ですから、 改修の時も、 周辺の人達も気楽に使ってくれるという良さがあります。
このすずかけ台は、 10年程前にできたプロジェクトですが、 このような手法が、 住民に対して良い結果をもたらしたかどうかが最終的な問題です。
幸いにして私の知る限りでは、 住民のわが町意識というものが高まり、 ゴミひとつ落ちていないといったことや、 道路に面して積極的に花を植えてくれたりと、 まち全体を自分たちのものとして大切に育てていこうという気運が見られるように思います。
|
写真12(アルカディア21住宅街区)
|
アルカディア21では、 擁壁と道路を同じ素材で連続的につなげています。実現のためには、 タテ割行政の関係各所との頻繁な調整が必要でしたが、 最終的に理解が得られて、 実現できました。
私が環境のデザインのなかで、 いつも重要だと思っていることのひとつが、 影です。
影を意識したデザインということです。
影は普通図面には表現しませんが、 我々は結構、 木洩れ日であったり、 影とひなたの移ろいの環境のなかに過ごしているのです。
影がどう映るか、 あるいはこの空間を人間が歩いた時に、 人間がどういう風に映えるだろうかということをいつも考えます。
デザインしているのは環境の構造であって、 あくまでも主役は人間なのだということも重要なことです。
|
写真13(影とひなたの織りなす道空間)
|
朝、 中学生達がこの街区内を通学路にして通ります。
歩行者専用道路を通らずに、 わざわざ住宅街区のなかを抜けていくのです。
|
写真14(アルカディア21街区中央の公園)
|
|
写真15(芝生でころげまわる子供達)
|
この街区は21戸の住宅で構成されていますが、 街区の中心に公園があります。この公園は公的な公園ではなく、 街区の住民が所有、 管理をしていますが、 一般の人に開放されています。
全面芝生の公園では、 子供たちがころげまわることもできるのです。
この空間がひろく市民に公開されていることから、 住民は、 固定資産税の減免というかたちで公共から支援されているのです。
環境のデザインでは、 単にハードなデザインをするだけではなく、 社会のシステムそのものを変えていくような試みも重要なことです。
|
写真16(すずかけ台の歩行者専用道路)
|
すずかけ台の歩行者専用道路は、 木洩れ日のなかがとても気持ちよい空間になりましたが、 さらに、 地区計画で道路沿いに喫茶店が出来るようにしました。おかげでこの喫茶店はまちのコミュニティセンターのように大勢の人に利用されています。
|
写真17(コケがはえてきたピンコロ擁壁)
|
アルカディア21のピンコロ石の擁壁には、 やがてコケがはえてきました。傾けた擁壁にしているからです。
時間と自然を見込んだデザインの視点が重要です。
|
写真18(けやき台のまちなみ外構)
|
ウッディタウンのけやき台では、 建物のコーディネートとまちなみ外構を同時に行い、 まちに開いた住宅地景観をつくっています。全てを自分たちで作りきるのではないデザインもあるのです。
|
写真19(けやき台のフットパス階段)
|
けやき台のフットパス階段では、 片やコンクリートに化粧目地の擁壁、 片や天然の茶色の壁というコントラストがとてもきつい空間の間に柔らかい自然石を挟み込んで連続性を持たせ、 踊り場に木を1本植えることでバランスをとって居心地の良い空間を作っています。すでにある環境にどう応答しながら連続させていくかというのも環境デザインの重要な視点です。
前に 目次へ 次へ
このページへのご意見は前田裕資へ
(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai