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写真52(木津南地区東中央線歩道整備)
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道路は重要な公共施設です。子供達が毎日通学したり、 遊んだり、 そこでの体験は幼児期の重要な原体験になるでしょうし、 すぐれたまちには必ずといって良いほど、 気持ちの良い道があるものです。
したがって、 舗装の材料もとても重要な要素なのです。
学研都市の木津南地区では、 地区内の歩道部分について、 舗装材料の開発もあわせて行いました。
すでに述べましたように、 いかに影をきれいに映すかとか、 まちが成熟したときに人間が主役ながら、 自然と人間が溶け合った環境となるようにというようなことを考えながらデザインをすすめたわけです。
このエリアは、 奈良時代には瓦の生産地であり、 瓦がまの跡が地区内に発掘されたという歴史と、 確かにいぶし瓦がよく似合う風土性のなかで新しいまちをつくっていくという場所性から、 いぶし瓦を打ち込んだコンクリート平板と、 それにつきあえる安価なショットブラスト平板を開発し、 気持ちの良いディテールで使いこなせるように敷きこんでいるのです。
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写真53(木津南地区・州見橋)
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写真54(朝陽に光り輝く高欄手すり)
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同じ地区では、 橋そのもののデザインも行いました。京都と奈良を結ぶ街道をまたぐ形で新しいまちが生まれます。
街道からは、 その下をくぐるという景観の橋になるのです。
そういうことから、 近づいていって、 くぐるという視点が重要だと考えました。
高欄のデザインを頼まれたのですが、 橋そのものの構造が重要だと思いました。
橋自体は一般的な、 梁でスラブを受けるような計画ですすんでいたのですが、 変更してもらって、 スラブだけを円柱で受けるような形にしたのです。
スラブはボイドスラブにしています。
高欄とよばれる手すりについても、 朝日を受けて非常にきれいに光ったり、 遠景で見たときには、 手すりが消えてしまうといった未来への架け橋の手すりとしての現代性を表現したいと思いました。
そこで、 アルミの鋳物で柔らかく有機的な形の手すり柱をつくり、 それをひたすら連続して並べたのです。
時を含む「はし渡し」のデザインの視点が重要だと思いました。
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写真55(西舞鶴駅前緑地広場の夜景)
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写真56(朝陽に美しい塔)
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西舞鶴は旧城下町で、 これからのまちづくりにそういった歴史性を上手く活かすことが望まれています。そういったまちづくりの基本構想の仕事に続いて、 具体のプロジェクトとして駅前の緑地広場のデザインをすることになりました。
駅前にはそういった歴史都市としての要素が全くなかったので、 いぶし瓦による広場を提案しました。
歴史上のいわれのある塔をモチーフに、 広場にもいぶし瓦の塔を建てました。
広場自体を1m浮かしたレベルに設け、 周囲は和紙を間に挟んだ柔らかいガラスブロックにして、 夜間は広場そのものが光る形にしたのです。
いわば現代の常夜灯といったところです。
塔自体も、 当初はガラスブロックの塔を考えていたのですが、 城下町倶楽部の人達の意見を採り入れて歴史的なデザインにしました。
朝日や夕日に浮かぶシルエットは確かに旧城下町の歴史を感じさせるものになっています。
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写真57(広場の幟)
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この緑地広場にJR舞鶴線の電化促進を訴える看板をつくりたいという相談を受け、 広場に3色の幟をたてることにしました。夜は、 この幟をライトアップしています。
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写真58(舞鶴市陶芸館)
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環境デザインの視点で考えていると面白い仕事のつながりがうまれます。駅前緑地広場のつぎに依頼されたのが、 スポーツ公園のなかに市民に役立つカルチャー教室の機能をあわせ持つ陶芸館をつくることでした。
建設位置の選定から、 施設規模、 建物と大地の形のデザインなどをトータルに考えるのです。
市の事情も大きな社会環境として捉える必要があります。
そんな過程を経て、 公園のなかの谷をゆるやかにつなぐように大地をデザインし、 そこに背後の山に抱かれるように弓形の形の木造の陶芸館をつくったのです。
退職された美術の先生を館長にまねき、 市の陶芸協会が運営をしています。
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写真59(西舞鶴駅施設計画)
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JR舞鶴線の電化の実現に伴い、 駅前緑地広場に面する細長い敷地に、 橋上駅に連続して自由通路と市民施設をつくることになりました。城下町としての歴史性を考えたデザインにして欲しいというのが市からの注文でした。
しかし、 お城をモチーフにしたようなディズニーランダイゼーションのデザインは、 電化によって新しい時代にはばたく西舞鶴の駅にはふさわしくないと思います。
歴史都市にふさわしい、 現代あるいは未来を感じさせるデザインは何かを模索しました。
そこで、 前面をガラスとして、 透けたガラスのなかに立体的なまちがあるという構成を考えました。
市民の人達には、 高い場所から緑地広場の塔や正面に展開する歴史の背景となった愛宕山を見ることで、 おのずと舞鶴の風土を感じてもらおうというのです。
ガラスの箱のなかに吹き抜けの気持ちよい立体的な空間を内蔵したのです。
ガラスも部分的に透明とハーフミラーのストライブとしています。
外部からは、 自然を映す鏡になったり、 透けた内部が見通せたり、 光の調子によって刻々と変化する透明感とシャープさのある風景ができればと思います。
夜は、 立体的な空間があかりとなってまちに語りかけるのです。
床はいぶし瓦の黒をモチーフにし、 まちとの連続性を表現したいと思っています。
このプロジェクトは、 現在設計中のものです。
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