私はまず、 井口先生に感謝の意を表したいと思います。 先生は日本のように遠い国から来られたのに、 メルカテルロの人となじみあい、 親しくなられている点に感心し、 また感謝いたしております。
そして、 チンチルラ先生、 スパーダ先生に感謝いたします。 チンチルラ先生は今日の会場となったメルカテルロの公会堂(パラッツオ・ガスパリーニ)の修復に、 スパーダさんはメルカテルロの都市計画にとても重要な役割を果たして下さった方です。
20年前まではメルカテルロの建物はひどく痛んでいました。 20年前から修復をはじめ、 今ようやくこのような姿になりました。
それは州や国のお金を使ってできたことですが、 同時に、 メルカテルロの人たちが自らお金を出し、 努力したことも強調したいと思います。
メルカテルロには、 まだたくさんやらねばならないことがあります。 しかし、 こんな小さな街なのに、 周りの環境を大切にした都市基本計画を持っている点で、 イタリアの小さな街の中でも特別な位置を持ち得ていることを申し上げたいと思います。
また最近、 山地にある小さな街の保存のための特別の条例ができましたので、 それによって私たちの仕事がもっと進むことを期待しています。
イタリアでも小さな街よりも大都市を大切にする傾向があります。 そのため保存・修復には困難もありますが、 人間的な関係があるこういう小さな街をもっと大切にしたいものですし、 メルカテルロの経験をベースにして、 私どもの街のいい面を日本にもって帰っていただきたいと思います。
また、 ここでいう風景とは自然だけではなく、 人間がつくったもの、 例えばメルカテルロの街も含んでいることを強調しておきたいと思います。 先ほど市長が言われたように、 20年前から始まった新たな修復は、 ここにおられる井口さんをはじめ、 人びとが街を愛し、 保存に力を注ぐことで風景を造っているということなのです。
ですから、 この建物(セミナー会場のパラッツォ・ガスパリーニ、 市が買い上げて修復中)を展覧会などのイベントの中心とし、 よそから来る人との交流の場としていくことは、 メルカテルロの街の活動にとってとても重要だと考えています。 この他、 メルカテルロには美術工芸品も多く残されており、 それをオープンにすることも街の活気を取り戻す手法のひとつでしょう。
今や世界はコンピュータによって国境のない世界になっています。 我々のようなイタリアの山地からも世界と直結できると思います。 メルカテルロにいて東京の仕事をすることもできるかもしれません。 日本からの皆様がここにいるということも交流が始まったということを証明することでもあり、 この街の将来にも希望があると言えます。 これからも、 人間性にあふれた小さな街だということをベースにして、 この街が発展することを願っています。 ありがとうございました。
講演記録
歓迎挨拶
(メルカテルロ市長)アルフィエロ・マルケッティ
まちづくりの展望
(メルカテルロ前市長)パオロ・チンチルラ
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