the Urban Enviornment Design Seminar, Melcatello
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メルカテルロとイタリアの都市計画

(株)竹中工務店

井口 勝文

1。 メルカテルロの概要

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写真1 メルカテルロのチェントロ全体像
改行マークメルカテルロ・スル・メタウロ(以下メルカテルロ)は面積68.59km2、 、 中心市街地の標高429m、 人口1,494人(1995年)、 マルケ州ベー・ザロ・ウルピーノ県に属するコムーネ(自治体)である。

改行マークそのチェントロ(centro 中心市街地)に人口の80%が集中しており、 そのうちの30%がチェントロ・ストリコ(centro storico歴史的都心)の内に住んでいる。

改行マーク就労人口約600人の内、 農業13%、 工業49%、 その他38%である。 小中学生130名、 高校生96名で、 14歳以下の人口に対する65歳以上人口の比率は81年109%であったものが91年には163%と高齢化している(いずれも1991年国勢調査)。 1995年の統計によれば90年代に入って人口の減少傾向は弱まってほぼ横ばい状態になっている。


2。 都市基本計画と地区詳細計画

改行マークイタリアの都市計画は、 チェントロとその周辺部に関する都市基本計画(Piano Regolatore Cenerale)と、 その中に定められた特定の地区を対象にする地区詳細計画(Piano Particolareggiato)によって規定される。 この2つはいずれもコムーネが策定するものである。

改行マーク都市基本計画の位置づけは日本の都市計画地域の指定に相当する。 しかし2つの点で大きく異なっている。 まず、 イタリアでは都市基本計画で定められた地域の範囲にのみ建築行為が許可(確認ではなく)されるということであり、 しかもその範囲は極めて限られている。

改行マークもう一つの相異点は、 都市基本計画によってチェントロ・ストリコの範囲を定めることである。 都市の歴史的な資産を守り、 活用しながら時代に即した都市の発展の方向をコントロールしようとする意図がそこに含まれている。


3。 メルカテルロの都市計画

改行マークメルカテルロではかつて市壁で囲まれていた5.5haの範囲をチェントロ・ストリコと定めている。 そしてその保全計画は地区詳細計画のひとつとして策定されている。

改行マーク人里離れた丘の上にある、 かつてメルカテルロのチェントロを護る要塞が設けられていた。 20戸程度の住戸と礼拝堂、 見張り塔のある集落だが、 すでに住む人もなく見捨てられて久しい。 しかし丘の上にそびえる集落の美しい姿は今も町の人たちにとっては大切なシンボルであるらしく、 この集落を保全する地区詳細計画も定められている。 わずかだが修復の事業も行われている。

改行マークチェントロ・ストリコを取り囲むようにして戦後の市街地が拡がっている。 殆どが庭付きの戸建て住宅や小さな共同住宅である。 小規模な工業団地も造成されている。 これは建具や家具、 食肉加工等の工場と住まいが一緒になった職人団地である。

改行マーク小中学校、 スポーツ公園、 緑地や墓地がある。 これ等が都市基本計画によって位置づけられている。 そしてこれ等の市街地の外には一面の農地と山林が広がっている。


4。 風景計画のめざすところ

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写真2 メルカテルロのチェントロと周囲の山並み
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写真3 丘の上の要塞集落
改行マーク1964年のジャンカルロ・デ・カルロによるウルビーノの都市基本計画はその後のイタリアの都市計画とチェントロ・ストリコの再生計画に大きな影響を与えた。 そのウルビーノはメルカテルロの東方34.5kmのところにある。 この地方に点在するチェントロの都市計画はいずれもウルビーノの影響を受けているように思われる。

改行マークジャンカルロ・デ・カルロは1994年、 パオロ・スパーダと協働して新しいウルビーノの都市計画を発表した。 そしてそれは、 1985年のガラッソ法に基づく風景計画に重点が置かれている。

改行マークパオロ・スパーダはウルビーノの新しい風景計画について「今までは富士山を美しくする計画にすぎなかったものが、 今度は富士山と富士山をとりまくすべての風景をひとつのものとして考えているようなものだ」と語った。 チェントロから眺める周りの風景、 遠く離れて眺めた時のチェントロや山や丘、 田園や木立ちの風景、 それ等の景観の質をどのようにつくっていくのか、 ウルビーノの風景計画はそのことに挑戦している。

改行マークメルカテルロはまだ、 この新しい風景計画を持っていない。 広大で豊かな山々と丘、 そして田園を持つメルカテルロにとって新しい風景計画の策定は重要な課題であると、 市長のアルフィエロは語る。

改行マークそして風景計画も、 チェントロ・ストリコや丘の上の集落の地区詳細計画も、 いずれもメルカテルロの環境を美しくすること、 そして美しくすることが自分たちの生活の質を豊かにすることになるという意図を持って策定される。 町を美しくすることで観光客を集めたい、 商業を活性化したいということが直接の目的ではない。 それは自分達の生活の質を高めるために欠かせない課題であると考えられている。

改行マークイタリアの都市計画に学ぶべきところは実はそこにあると今回は考えさせられた。

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